こんにちは!
今回は、『アーサー王伝説』のおおまかなあらすじを紹介します。
早速見ていきましょう!
目次
アーサー王伝説(アーサー王物語)
チャールズ・アーネスト・バトラー《アーサー王》1903年
実在の人物?
『アーサー王伝説』と言われるだけあって、物語自体は創作ですが、アーサー王らしき人物は実在したかもしれないそうで…(とはいえ、いないと断言できないというだけで、可能性はほぼゼロに近い)。
『アーサー王伝説』は、西暦5、6世紀頃に生きたイギリスのある国王の、歴史的記録だとされています。
当時イギリスはローマ帝国の支配がゆるみ、国がバラバラになってしまいそうでした。
それらの国を統合し、敵の侵入を阻止した国王がアーサー王でした。
この時代に平和と安定をもたらしたとされているアーサー王ですが、これらが事実なのかどうか、今となっては知る由もありません。
有名なストーリーは凶悪な犯罪者から生まれた
アーサー王についても記録は少なく、たとえ存在している場合でも、伝説や教訓話として書かれたものが多く、歴史的事実の記録とはとてもいえません。
そして、アーサー王の物語が後世に語り継がれていくにつれ、様々な物語がくっついていき、様々な物語のバージョンが生まれました。
その中でも、トマス・マロリーが書いた『アーサー王の死』が有名で、アーサー王伝説もの作品の多くが、このストーリーを元にしています。
意外にも作者のマロリーは、凶悪な犯罪者で、幾度も長期間にわたって投獄された経歴のある人物でした。
彼は、この傑作を最後の牢獄生活の中で執筆しました。
アーサー王の誕生秘話
アーサー王の父親ユーサー・ペンドラコン王は、人妻のイグレーヌ姫に恋をしました。
そこで彼は、世界一の魔法使いマーリンの力でイグレーヌの夫に変身し、彼女の床に潜り込みます。
マーリンはこの後も困ったときのドラえもん的活躍をたびたびみせます。
そして生まれたのがアーサーです。
アーサーは不義の子なのでは?と思うかもしれませんが、イグレーヌの元へ行く前に彼女の夫は死んでいる(殺している)ので、アーサーの誕生にやましいことは何もない、のだそう…。
実は父王ユーサーは、例の魔術と引き換えに、マーリンとある約束をしていました。
それは「生まれた子どもをマーリンに渡すこと」です。
生まれたばかりのアーサーをマーリンは引き取り、騎士エクター卿にアーサーを預けました。
アーサーは自分が王の息子だとは知らず、エクター卿の息子として育ちました。
石に刺さったカリバーン
アーサーとエクスカリバーの描画 1906年(エクスカリバーとカリバーンが混ざってしまっており、この絵のようにカリバーンのことをエクスカリバーとしている場合もある)
父王ユーサーが亡くなり、王座を狙う騎士たちによる後継者争いが始まり、国がメチャメチャになりました。
そこで大司教がマーリンのアドバイスに従い、騎士たちを教会に集めました。
突然、彼らの目の前に、剣の刺さった巨大な岩が現れました。
岩には、「このカリバーンの剣を抜いたものが次の王だ」と記されていました。
我こそは!と騎士たちは挑戦するも誰も引き抜くことができませんでした。
ところが、後日、偶然教会を訪れたアーサーがあっさりと剣を抜いてしまいます。
そして彼はアーサー王となりました。
と書くと、大勢の人に見守られた中で、剣を引き抜く劇的な場面を想像してしまいませんか?
しかし、実際は誰もいないときに引き抜いてしまい、誰にも信じてもらえず、何度も何度も剣を引き抜くところを見せ、それでも信じてもらえず、最終的にはサクラを置いて「彼こそが王だ〜!信じない者は殺してしまえ!」と叫ばせて周りを納得させました…。
そんなカリバーンですが、この後、ある騎士との戦いであっさり折れてしまいます…。
魔法の剣エクスカリバー
ウォルター・クレイン《『アーサー王の騎士団:少年少女のために語られた物語』の挿絵「アーサー王が湖の乙女にエクスカリバーの剣を懇願する」》1911年
剣がなくなってしまったアーサーは、マーリンに連れられて妖精の湖へ行きました。
すると湖の真ん中で、エクスカリバーの剣と鞘とベルトを握った腕が1本出ていました。
これら一式をアーサーは受け取りました。
エドワード・バーン=ジョーンズ《エクスカリバーとアーサー》
エクスカリバーは最強の魔法の剣で、この剣でアーサーは様々な困難に打ち勝っていきます。
さらにこの鞘は、持っているだけでどんなに怪我をしても血が流れない、つまり不死の力のある魔法のアイテムでした。
反対を押し切って結婚
ジョン・コリア《グィネヴィア王妃の五月祭の祝い》1897年頃
美人に弱いのは父親譲りか、アーサーはグィネヴィア姫に恋をしました。
マーリンは「不幸になるからやめたほうがいい」と大反対でしたが、アーサーは彼女と結婚してしまいます。
円卓の騎士の物語がメイン
Évrard d’Espinques《『ランスロ=聖杯サイクル』の挿絵にあるアーサー王の円卓と円卓の騎士たち》1470年
王になったアーサーは、優れた騎士を集めて「円卓の騎士」を結成しました。
なぜ「円卓の騎士」なのかというと、グィネヴィアが嫁入り道具として持ってきた「円卓」に、騎士たちを座らせたからです。
そして彼らにはそれぞれの冒険譚があります。
有名なのは、ランスロット、ガウェイン、トリスタン、ガラハッド 、パーシヴァルです。
「アーサー王伝説(物語)」と呼ばれていますが、実際にはこの円卓の騎士たちのストーリーで、アーサー王の物語はあまりありません…。
マーリン、ドロップアウト…
エドワード・バーン=ジョーンズ《欺かれるマーリン》1874年
マーリンは最強の魔術師で、アーサーが困ったときはいつも助けてくれる心強い味方でしたが、最期はとてもあっけないものでした。
マーリンは数多くの女性に言い寄る色男で、とにかく美人に弱く、湖の妖精ヴィヴィアンにベタ惚れし、全ての魔術を教えてしまいました。
そして彼女によって閉じ込められてしまい、二度と出てくることができませんでした。
聖杯探しの旅
Evrard d’Espinques 《アーサー王の騎士と聖杯のイラスト》1475年頃
ある日、アーサー王と円卓の騎士たちが円卓に座っていたとき、突如円卓の上に光り輝く聖杯が現れました。
と思ったら次の瞬間、パッと消えてしまいました。
「聖杯」は、キリストが最後の晩餐で使った杯であり、十字架上のキリストが流した血をそれで受けたといわれています。
エドウィン・オースティン・アビー《アビー・ルームの壁画「聖杯の探究」IIII.聖杯の探究に向かう円卓の騎士》1893-1895年
それを探し出せば、この世の人々に幸せがもたらされるということで、騎士たちはアーサー王に「聖杯を探してきます!!!」と言い、聖杯探しの旅に出ました。
エドウィン・オースティン・アビー《アビー・ルームの壁画「聖杯の探究」XV.黄金の木》1893-1902年
最終的には3人の騎士が聖杯を発見し、守っていましたが、その内の1人ガラハッドの命とともに天国へ消えてしまいました…。
エクスカリバーの魔法の鞘が盗まれる
フレデリック・サンズ《モルガン・ル・フェイ》1864 – 1864
アーサー王の異父姉で最強の魔女で悪女モルガン・ル・フェイが、アーサーが眠っている間に、エクスカリバーの鞘を盗みます。
この鞘が無くなり、アーサーは不死の力を失います。
これは完全にアーサーの黒歴史なのですが、昔、実の姉だと知らずに「どうか一緒に寝てほしい」と懇願し(ダサいな…)、モルドレッド(異説ではアーサーの甥)という子供まで生まれています。
愛する者たちの裏切り
ハーバート・ジェームズ・ドレイパー《ランスロットとヴィネヴィア》1890年代
アーサーは、妻グィネヴィアと円卓の騎士の1人であるランスロットを愛し、信頼していました。
しかしこの2人は、アーサーに隠れて長いこと不倫しており、ついに他の騎士の告げ口でアーサー王も2人の関係を知ることになります。
そして不義の罪でグィネヴィアを火あぶりの刑にしようとします。
そのピンチから彼女を救い出したランスロットは、戦いを挑む王に忠誠を示して王妃を返しました。
しかし、これで丸く収まることはなく、2人は戦い続けます。
アヴァロンへの旅立ち
エドワード・バーン=ジョーンズ《アヴァロンのアーサー王の眠り》1881-1898年
フランスへ逃げたランスロットをアーサーは追っていきました。
その隙を見計らって、騎士モルドレッド(アーサーの不義の子)が城を乗っ取ってしまいます。
アーサーが慌てて城に引き返し、モルドレッドと戦い勝ったものの、重症を負います。
死期を悟ったアーサーは、部下にエクスカリバーの剣を湖に返すよう指示し、その後傷を癒すため妖精の国アヴァロン(リンゴの園)へ向かいました。
最終的にどうなったのか
ジェームズ・アーチャー《アーサー王の死》1860年
アーサー王の最期については諸説ありますが、ここでは3つ紹介します。
一つ目は、アヴァロンで息絶えたというもの。
二つ目は、アヴァロンで眠っているというもの。
傷を癒した王は、いつの日か目覚めて帰ってくると言われています。
三つ目は、部下にエクスカリバーを湖に返すように命じ、息を引き取ったというものです。