パーシヴァルの聖杯探しの旅を超解説!謎の場所 謎の船 謎の美女

こんにちは!

今回は、聖杯探しの旅に出たパーシヴァルの物語についてです。

早速見ていきましょう!

聖杯探究 パーシヴァルの場合

フェルディナンド・リーケ《聖杯を探索するパーシヴァル》

急に20人に襲われる

聖杯探しの旅に出た騎士パーシヴァルは、ある日、20人の武装した男たちに襲われました。

1対20、パーシヴァルは盾で攻撃を防ぐのが精一杯でした。

そこへ偶然、仲間の騎士ガラハッドが通りかかり、あっという間に敵をやっつけてしまいました。

ガラハッドは助けた騎士が誰なのか確認することもなく、すぐ去って行きました。

パーシヴァルは彼だとわかっていたので、追おうとするも、先ほどの戦いで馬が殺され、全力で走るしかありませんでした。

その途中、馬に乗ったある召使に出会いました。

彼は黒い駿馬を引いていました。

パーシヴァルは「その馬を私に貸してくれないか」と聞いてみるも、断られ、諦めて歩き続けました。

すぐメソメソする

ジョージ・フレデリック・ワッツ《パーシヴァル卿》1840-1859年

しばらくすると、騎士が例の黒馬に乗ってパーシヴァルを追い抜いていきました。

その後を召使が追いかけ、「騎士が馬を強奪した、ご主人さまに見つかったら殺される」と叫んでいます。

パーシヴァルは、彼を助けるため、召使の馬に乗り、黒馬の騎士を追いました。

騎士の姿を見つけると、一騎討ちで決着をつけようと提案し、2人は槍をかまえて接近します。

しかし騎士が卑怯にもパーシヴァルの馬を槍で貫いて殺し、そのまま逃げていきました。

パーシヴァルは怒り狂い、甲と剣をひきちぎって放り投げ、座り込んで、両手に顔をうずめ、激しく泣き始めました。…幼稚園児みたい…。

起きたら違う場所

ロジェリオ・デ・エグスキザ《パーシヴァル》1910年

いつの間にか夜になり、朝になり目が覚めると、寝ていた場所とは違う、周囲が水に囲まれた草ぼうぼうの荒れ地にいました。

ここを去るに去れず、二日二晩、食物も飲物もない状態で過ごすことに…。

黒い船と謎の美女

誰か救ってくれる人が来ないかと待ち続け、3日目になって、黒絹の布に覆われた豪華な船が彼のもとに近づいてきました。

船の昇降口には、ゴージャスな美女が腰掛けていて、彼に「パーシヴァル、このような荒れ地で何をしているの?助けがなければ飢え死してしまいますわ」と話しかけました。

パーシヴァルはなぜ自分の名前を知っているのかと驚くと、女は「あなたのことはよく知っています。ずっと前からあなたの成長を見ていたもの。ところで、今日何かお食べになって?」と言いました。

彼はこの3日間何も食べていないと答えると、女は「あなたのような騎士が、餓死して野獣に食べられてしまうのは、とても残念です。よろしければ、お救いしたいのですが」と言いました。

彼は「あなたは誰なんですか?」と尋ねると、「わたくしは高貴な血筋の者で、かつては世で最も富める女でしたが、今は廃嫡の身なのです…」と悲しげに答えました。

パーシヴァルは、「誰があなたを見捨てたのです?」と聞きました。

女は、「わたしはかつてこの世で1番偉い人と暮らしていました。この人は、またとないほどの美貌を与えてくれました。そしてこの美貌がわたしを少しばかり高慢にしてしまいました。私のある一言が、あの人を怒らせ、もはや私をお側に置いてくれなくなりました。そして、私を捨てて縁を切ったのです。あの人は、私にも、私の取り巻きにも、私の宮廷にも、全く好意を寄せてくれません。だから、私はあの人の家来を大勢奪って、私の家来にしたのです」と語りました。

言われるがまま

長い間話しこむうちに、15時頃になり、太陽がぎらぎらと燃え、耐えがたいほど暑くなってきました。

そこで乙女が「よければ、太陽の熱からあなたを守るため、美しい天蓋(テント)をここにたてさせましょう」と提案し、召使に準備させました。

そして乙女は「さあ、こちらでお休みください。ずいぶんのぼせられているようね」と言いました。

パーシヴァルは天蓋に入り、乙女が彼の武具をはずすと、すぐに眠ってしまいました。

盛大に酔っ払う

アーサー・ハッカー《パーシヴァル卿の誘惑》1894年頃

深く長い眠りから目が覚めたパーシヴァルに、乙女は食べ物と、今まで飲んだことのないような、強くて素晴らしいワインを用意しました。

ワインの効き目は抜群で、パーシヴァルはすっかり酔っ払ってしまいました。

彼は、こんなに美しい乙女には今までお目にかかったことがないと思い、乙女の魅力の虜になり、興奮し、全身に火がついたような状態になりました。

ついにパーシヴァルは乙女の愛が欲しいと言い出し、自分の愛は、もうあなたに捧げていると言いました。

乙女の思惑

フランク・カドガン・クーパー《パーシヴァル卿の伝説》

最初のあいだは、乙女はパーシヴァルの要求を退けていました。

ぎりぎりまでお預けをくらわせて、彼の欲求をよりいっそう高めようという魂胆でした。

狙い通り、パーシヴァルは熱心な嘆願をこれでもかと続けました。

ついに彼が熱い欲求で身もとろけそうになっていると見た乙女が、「パーシヴァル、よろしいですか、私としてはあなたのお望みのようにすることを絶対お断りいたします。…ただし、あなたがこの瞬間から私のものになること、私を助けて敵をやっつけること、全て私の命令に従うことをお誓いになるなら、話は別ですが」と言いました。

パーシヴァルは熱心な調子で服従を約束し、騎士としての名誉にかけて誓ってしまいます。チョロいな…。

「では、あなたのご希望通り、なんなりといたしましょう。…実を言うと、あなた以上に私の方があなたが欲しかったの。あなたは、私が自分のものにしたいと思っている世界中の騎士のひとりなのです」

どうなる!パーシヴァル!

ヨハン・ハインリヒ・フュースリー《Percival Delivering Belisane from the Enchantment of Urma》1783年

こう言って乙女は天蓋の真ん中に、この上もなく綺麗で豪奢なベッドを用意しました。

準備が整うと、召使たちは乙女の服を脱がせ、ベッドに乙女を横たえました。

パーシヴァルは乙女の脇に体を置き、2人の体に上掛けをかけようとしたとき、地面の上に置きっぱなしの剣が目にとまりました。

それをベッドに立てかけようと手を伸ばした瞬間、パーシヴァルの視線は、柄頭に彫られている朱色の十字架をとらえました。

一瞬にしてパーシヴァルは正気に戻り、額の上に十字を切りました。

するとたちまち天蓋は崩れ落ち、もうもうたる真っ黒な煙が彼の目を眩ませ、そしてあたり一面におぞましい限りの悪臭が立ちこめたので、彼は、自分が地獄に堕ちたに違いないと思いました。

「イエス・キリストさま、優しい救世主さま、こんな死に方をさせないでください。あなたの力でどうかお救いください。さもなければ、私は破滅してしまいます」

パーシヴァルが目を開くと、今まで横になっていたところには、天蓋の影も形もありませんでした。

海を見ると遠くに船が浮かんでいて、その中には乙女が乗っており、彼に向かって「パーシヴァル、あなたに裏切られたわ」と叫びました。

こうして乙女は、ごうごうと唸りをたてる風にのって去っていきました。

船の進んだ跡は、水がまるで燃えているかのように沸きたっていました。

一番大事なもの

パーシヴァルは大いに悲しみ、「肉がわたしの主人なのだから、そいつを殺すのだ」と、剣で自分の腿を切り裂き、血が飛び散ります。

「ああ、我が主よ、この血をあなたに背いた償いとしてお受けください」と言いました。

彼は「危うく破滅するところだった。一度失うともう取り返しがつかない純潔を失うところだった」と言い、シャツを裂いて、血が流れている傷の手当てをしました。

白い船と男

海に目をやると、今度は白い布で覆われた船が近づいてきました。

中には、司祭のような格好をした男の人が乗っており、パーシヴァルは彼に、なぜこのような荒れ果てた場所にやって来たのか尋ねました。

「私がここにやって来たのは、賢明なる助言によりあなたのお力になるためです。あなたの真に騎士的な徳を試すため、神があなたをここに置かれたのだが、いかがでしたかな」と言いました。

パーシヴァルは恥ずかしさに頭をたれ、乙女の誘惑に乗って、もう少しで大罪をおかすところだったと告白しました。

美しい乙女の正体

オディロン・ルドン《パーシヴァル》1912年

すると有徳の士はパーシヴァルに説明してくれました。

すなわち、乙女は悪魔で、世界で1番偉い主に見捨てられたと言ったのは、神のことで、神が傲慢の罪をおかした悪魔を天上から追放した、ということでした。

そして悪魔はそれ以来神に戦いを挑み、神のよき召人、騎士たちをたえず墜落させ、神の敵に仕立てあげようとつとめていました。

パーシヴァルは、悪魔が言ったことは全て二重に解釈できることに気がつき、自分がいかに危ういところであったかを思って身震いしました。

パーシヴァルは自分を救ってくれた神に感謝の祈りを捧げました。

いざ出発

その後辺りを見回すと、有徳の士は消え去っていましたが、声だけが聞こえてきました。

「パーシヴァルよ、お前は罪に打ち勝ったのだ。この船に乗って、どこにでもそれが行くところに従いなさい。恐れてはいけない。神が導いてゆくのだから」

これを聞いたパーシヴァルは、喜びで心がいっぱいになり、もう一度神に感謝の祈りを捧げてから、船に乗ると、船が動き始めました。

パーシヴァルの聖杯探しの旅はまだまだ続きます。