こんにちは!
今回は、ブリューロフの《ポンペイ最後の日》についてです。
早速見ていきましょう!
目次
ポンペイ最後の日
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カール・ブリューロフ《ポンペイ最後の日》1830-1833年
ポンペイの大噴火
今からおよそ2000年前の79年8月24日(日付については諸説あり)の午後1時頃に、ヴェスヴィオ山が大きな噴火を起こし、ポンペイの街すべてが地中に埋没しました。
本作は、そのときのポンペイの街と、避難しようとして逃げ惑う人々の姿を描いています。
この絵からわかるのは、ここに描かれた人が誰一人として助からなかったことです。
作品解説
人間の魂の本質
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多くの人々が上を見上げています。
人々は、悲鳴、祈り、うめき声の中で、荒れ狂う自然から逃れようと必死です。
ある人は人を助け、母親に一緒に逃げるよう説得し、神に祈り、逃げ惑い、こんな時でも泥棒は落ちた金貨を拾い上げ…
悲劇は彼らの感情を引き出し、そのような状況に陥ったときの人間の魂の本質を明らかにしています。
それは、高揚した感情、献身、勇気、そして愛を示しています。
荒ぶる自然
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黒い雲からは熱い小石が降り注ぎ、敷石などの上に黒い斑点をつくっています。
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幾筋もの稲妻が雲を引き裂いて、暗い夜空を明るませています。
画面右側では、石造りの建物が崩壊しかけており、その上に立てられている大きな2体の神像が落下しかけています。
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中央右の老人と左の若い男性が、腕を上に伸ばし、呼応しています。
父親を背負う息子たち
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老いた父親は、息子であるローマ兵と少年に抱えられています。
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馬の毛を束ねた飾りの付いた鉄兜をかぶっています。
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「レ・ミゼラブル」のガブローシュみたいなこの少年からは、並外れた生命感を感じさせます。
この潤んだ瞳がまたなんとも…。
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ティントレット 《聖マルコの遺骸の運搬》1562-1566年
ブリューロフは、この部分を描くのに上の絵を参考にしたようです。
プリニウスと母親
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疲れ果てて座り込んだ年配の女性の手を、自らの胸に当てて説得している若者の姿が描かれています。
ポンペイの火山噴火当時の唯一信頼できる記録でもある、博物学者の小プリニウスが歴史家タキトゥスに宛て書いた手紙に影響を受けて描いています。
小プリニウスは、ポンペイから数十キロ離れたミセヌムにいましたが、この絵の中ではポンペイにいたことになっています。
小プリニウスの母親は自分を置いて早く逃げるように促しましたが、彼は母親を置いて逃げることはできないと、母親を説得しています。
新郎新婦
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その後方には、花の冠をかぶった生気のない花嫁を両腕で抱える花婿が描かれています。
彼は亡くなったばかりの花嫁の顔を見つめています。
暴れる馬
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その後方では、前脚を高く上げて興奮している様子の馬が描かれています。
彼らを描くことによって、この場の高揚感を演出しています。
馬車から落下した家族
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地面に倒れて意識を失っている母親と、母親にしがみつく子供を描くことで、生と死を対比させています。
大きな布をかぶっている家族
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中央左の2人の小さな子どもを連れた若い夫婦は、降り注ぐ熱い小石を少しでも避けるために、大きな布をかぶっています。
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母親に抱えられた乳児は、焼け焦げた鳥に手を伸ばしています。
司祭と母娘
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画面の左端では、首に十字架をさげたキリスト教の司祭と、その娘や孫娘と思われる女性たちが互いに抱きしめ合っています。
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母と娘たちは、ザ・古典主義の構成「二等辺三角形」で描かれています。
また、母親が娘を抱きしめ、長女が妹を抱きしめるというジェスチャーによって優しさや統一感がでています。
異教の司祭
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母娘と一緒にいるのはキリスト教の司祭でしたが、この人物は持っているものから異教の司祭だとわかります。
2人の司祭を描くことによって、旧世界の日没と新しい時代の夜明けを象徴しています。
異教の神々の像が崩壊していることから、これからは新しい「キリスト教」の時代だ、と伝えています。
スカウルスの墓
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ここに描かれている建物は実在しています。
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チャールズ・ヒース《「ポンペイアナ:ポンペイの地形、建物、装飾品」よりスカウルスの墓》1817年
スカウルスの墓は発掘されており、ポンペイに行けば実物を見ることができます。
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この墓の中に避難しようとする人たちと、
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建物が崩れてきているので、外に出ようとする人たちなどで入り乱れています。パニック状態です。
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鑑賞者をじっと見つめる視線…。
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彼女の悲しそうな瞳に絶望感を感じます。
頭の上に載せていた金の入れ物はこの後落下するのでしょう。
それと同じくらい、彼らが助からないことも明確です。
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そんななか、1人だけドラマに出てくるウワサ話が好きそうな近所の人っぽい人がいます…。
泥棒
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こんな時でも、貪欲な人は貪欲なようです。
何を拾っているのかというと…
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…金貨です。
画家本人
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画面左側後方にいる画材を頭に載せている男性は、ブリューロフの自画像であるといわれています。
大きな評判に
ブリューロフは、ナポリを訪れたときに、ポンペイの災禍を描くという着想を得ました。
彼は、制作にあたってポンペイを見学し、歴史文献をよく読み研究して描き上げました。
制作は、基本的にローマで行われ、完成までに6年かかりました。
本作は、発表後に大きな評判を呼びました。
初めにエルミタージュ美術館で展示され、パリやミラノで展示された後、ロシア皇帝ニコライ1世に贈られ、現在はロシア美術館に収蔵されています。
本作は、小説家エドワード・ブルワー=リットンが同名の小説『ポンペイ最後の日』を執筆するきっかけにもなりました。
この小説は何度も映画化されています。