こんにちは!
今回は、誰でも一度は見たことがあるはず、ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》を解説します!
早速見ていきましょう!
ヴィーナスの誕生

サンドロ・ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》1485年
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左から右へ物語は流れていきます。
《プリマヴェーラ》より若干小さいですが、縦約2メートル、横約3メートルと大きな作品です。
なんとこの作品、作者の死後400年くらい忘れ去られていた絵なんです。(なぜ)
《プリマヴェーラ》と登場人物がかぶるので、比較して見てみるのも面白いです。
愛の女神ヴィーナス

海で誕生した愛の女神ヴィーナスが、ホタテ貝に乗っています。
ヴィーナスのこの立ち方ですが、現実的には不可能です。倒れます。
首も長すぎます。解剖学的にありえません。
では、なんでこうなっているのでしょうか?
逆にホタテ貝の上で直立しているヴィーナスを想像すれば、「なんか違うな?」って思いません?
こんな優雅な雰囲気出ませんよね。とてもシュールな絵になりそうです。
体をS字にひねることによって、煙がふわ〜っとのぼっていくような、柔らかな雰囲気になります。
これは「恥じらいのヴィーナス」と呼ばれる古代彫刻のポーズがもとになっています。
モデル

サンドロ・ボッティチェリ《シモネッタの肖像》1475-1480年頃
ロレンツォ・メディチの弟ジュリアーノの愛人、シモネッタ・ヴェスプッチでは?といわれています。
彼女は、ヴィーナス誕生の地としても有名なポルトヴェーネレに住んでいました。
この絵が制作される前に彼女は亡くなっているので、モデルかは微妙なところですが、絶世の美女だったので、美しい女神を描こう!!って思ったら、彼女の顔を思い浮かべた可能性はありますよね。
ゼピュロスとクロリス(フローラ)

西風の神ゼピュロスが息を吹きかけて、ヴィーナスを岸まで運んでいます。
ゼピュロスだけかと思いきや…

ちょっと息吹きかけてる!!
彼女はクロリス(精霊)でゼピュロスと出会い、花の神フローラへ変身します。
バラが舞っているので、すでにフローラに変身した後かもしれません。
ホーラ

季節の女神のひとりであるホーラが、ヴィーナスにドレスもしくはマントを差し出しています。
なんとこのホーラの動作、イエスに洗礼をほどこすヨハネと同じ動きをしています。
彼女はヴィーナスの付き人でもあります。

ホーラのドレスにはヤグルマギクの文様が一面に施されています。
青いヤグルマギクは、天上世界を連想させる花でもあります。
この青色は、非常に高価な貴石ラピスラズリを砕いて作られる顔料ウルトラマリンを使用しています。(フェルメールが好んで使った色で有名)
このことから、絵画の依頼者が裕福で費用を惜しまなかった人物だということがわかります。

首回りのギンバイカの葉は、結婚における忠誠と変わらぬ愛を表します。
また、その花は、ヴィーナスの花とも呼ばれています。

ピンクのバラをベルトに。
バラはヴィーナスのアトリビュートで、愛と生殖能力の象徴です。
誰にも影がない
気付きましたでしょうか?
誰にも影がないんです!影を描かないことで、現実の話ではなくて、これは神々の話なんだよ、空想の世界なんだよ、ということを表しています。
植物

左下に描かれているガマは「再生」や「多産」を表します。(淡水の植物なので、ここに描かれているのは厳密にはおかしいですが、あえて意図して描いている可能性も)
ちなみにヴィーナスが乗っていたホタテ貝も「生殖」や「豊穣」を意味しています。
右上のオリーブの木は「平和」を意味しています。

ホーラの足元にはアネモネが!意味は「はかなさ」です。
画面を舞っているバラは「愛」と、描かれているものにも一つずつ意味があります。

オレンジの木の葉、ゼピュロスの翼の羽毛1枚1枚に金箔が施されています。
また、全ての人物像の神に金のハイライトが入っています。
さらに、貝殻のすじ、バラの軸と中心、前景中の草の茎にも同様に金が施されています。
これらの金色の部分は、日没後にろうそくの火で照らしたときに、絵画全体が点滅しているように見せる効果があります。
天と地
海側の左半分は「神の世界」、地上側右半分は「人間の世界」を表しているとも解釈できます。
構図

全体的に、右下がりの絵です。
右肩上がりという言葉があるように、右上がりだとプラスのイメージがあります。
この絵では、右下がりなのでヴィーナスの不安定感が画面全体で強調されています。
依頼者
この絵の依頼者や、描かれた理由についても諸説ありますが、メディチ家の誰かが依頼したようです。
注文が殺到した
この絵が大評判になり、ボッティチェリの工房には、「同じような絵が欲しい!!」という注文が殺到します。
そこで、ヴィーナスだけを描いた絵を制作し、売りました。