フェルメール「真珠の耳飾りの少女」は真珠を付けていない?!超解説!

こんにちは!

今回は、フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》について解説します!

早速見ていきましょう!

真珠の耳飾りの少女

ヨハネス・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》1665年

フェルメールが30代前半で描いた作品です。

モデルが不明

ヨハネス・フェルメール《少女》1665-1667年

娘マーリア、妻、恋人…??などいろんな意見がありますが、フェルメールは家族の肖像画を描いていないので、誰なのかわかっていません。

そのため、不特定の人物を描いた「トローニー」だと考えられています。

モデルがいないということではなく、肖像画のように似せて描く必要もなければ、人物を特定するようなアイテムや背景を描き込む必要もない、画家が自由な発想で描くことができるのが「トローニー」です。

フェルメールが描いたトローニーは現存しているものの中では本作と上の絵の2点のみです。

背景に透明の緑色がかった絵の具を重ねて塗ることで、深みとニュアンスを出しています。

真珠ではない?

 

真珠にしては大きすぎますよね?

こんなサイズの真珠ってちょっと無理があるのと、仮に真珠だとしても、光の反射がおかしいため、真珠に見立てたガラス玉かスズ製のイヤリングだと考えられています。

フェルメールが生きた17世紀のオランダでも真珠は流行していたので、「もしこんな大きな真珠があったら…」と画家が想像で描いた可能性も。

修復で現れた唇のツヤ

修復前の《真珠の耳飾りの少女》

修復前の絵は、今よりも暗く、黄ばんでいます。

修復前

修復後

修復後の絵には、右端中央白いハイライトが入っています。

後世の修復家がシミと間違えて塗りつぶしてしまっていたことが、1994年の修復で判明します。

 

このツヤがあることによって、唇の濡れた感じ、みずみずしい魅力を表現しています。

口元が少し開いていることから、何か言いたそうに見えたり、微笑んでいるようにも見えます。

ふと振り返った姿でしょうか、わずかに顔を傾けて肩越しに見つめるこのポーズから、様々な物語を想像させます。

うるっとしたまなざし

 

こちらをじっと見つめるうるっとした瞳…どうしてこんなに惹きつけられるのでしょうか。

 

それは、やや灰色がかった青い瞳に、白のスポットをひとつ入れているからです。少女漫画と同じテクニックですね。

これがあることによって、少女の表情が生き生きとし、親密感が演出されています。

ターバンと宝石が原料の絵の具

 

ターバンは、当時のオランダのファッションということではなく、トルコなど異国の文化への憧れ、もしくは、東洋風な装いをさせることで、神秘的な雰囲気を出そうとしたと考えられています。

このターバンの青は、当時純金より高価だった、ラピスラズリという宝石を砕いて作った絵の具を使用しています。

この青は「海を越えてきた青」を意味する「ウルトラマリンブルー」と呼ばれ、普通の絵具の100倍もの値段がついていました。

ウルトラマリンブルーは、時間による色の劣化も少なく、今も美しい輝きを放っています。

元々はターバンが目を引くことから《青いターバンの少女》と呼ばれていました。

ゴッホも好んだ配色

 

フェルメールの作品を見るとよくわかるのですが、青と黄色の組み合わせをよく使っています。

キリスト教的には、裏切り者のユダが黄色の服を着ていたことから、裏切りを表す色として、黄色は好まれていませんでした。

しかし補色の関係にある青と黄色の2色を使うことによって、お互いの色を引き立て、絵の中にメリハリができるため好んだのでしょう。

ゴッホも、この色の組み合わせを大変気に入り、《夜のカフェテラス》《星月夜》など様々な絵に使用しています。

白い襟の効果

 

白い襟は、画面のアクセントとしての効果だけでなく、光の反射を表現するための仕掛けとしても機能しています。

どういうことかというと、耳飾りの下の部分を見ると、表面にわずかに映る白い襟が描き込まれていることがわかります。

さらに左頬には、真珠に反射した光が描かれています。

午後の光

当時の地図によると、フェルメールのアトリエは北東に面しており、この絵の光源の高さを考えると、北から当たる午後の光だということがわかっています。

左上から光が注ぐ構図は、フェルメールの室内画の特色でもあります。

このことから、アトリエの東側の壁に向かって絵画制作していたと考えることができます。

100億円の絵

今では100億円とも言われるこの絵は、フェルメールの死後約200年にあたる1881年の競売では、評価できないほど汚れていて、わずか2ギルダー30セント(約1万円)で落札されました。

元ネタ?

グイド・レーニ?《ベアトリーチェ・チェンチの肖像》1599年

この絵をフェルメールが知っていた可能性があり(低いですが)、この作品をオマージュしたのでは?ともいわれています。

この絵に描かれているのはイタリア名門貴族の娘ベアトリーチェ・チェンチです(ベアトリーチェではないという説もあり)。

極悪非道な父親を殺したため、斬首刑となり、処刑前夜に描いたのがこの絵です。

彼女の頭のターバンは、首を刎ねられるとき、髪で刃が滑らないようにするためでした…。

彼女が本当に父親を殺したのか、それともチェンチ家を消したかった人物の陰謀だったのかは謎のまま…。

小説と映画


真珠の耳飾りの少女 (字幕版)

アメリカの作家トレイシー・シュヴァリエが書いた『真珠の耳飾りの少女』という小説があります。

これを2003年に映画化したのが、フェルメール役をコリン・ファース、この絵のモデルとなった少女役をスカーレット・ヨハンソンが演じた『真珠の耳飾りの少女』です。

実話っぽい感じのストーリーですが、フィクションです。

この映画のヒットを受けて、この絵は《青いターバンの少女》から《真珠の耳飾りの少女》と呼ばれるようになりました。