プリマヴェーラは2枚あった?ボッティチェリの春を解説!

こんにちは!

今回は、ボッティチェリの代表作であり、謎多き名画《プリマヴェーラ》について解説します!

早速見ていきましょう!

《プリマヴェーラ》

サンドロ・ボッティチェリ《プリマヴェーラ》1480年頃

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なぜか右から左へ物語は流れていきます。(一般的には左から右に物語は流れます)

2メートル以上、横3メートル以上と、大きな作品です。

ヴィーナス

愛の女神ヴィーナス4月の女神でもあります。

彼女に視線がいくように、背後にあるミルトスという木がアーチ状になっていて、彼女を囲んでいます。これ、光輪に見えますよね。

ミルトスの花が、結婚式の飾りとしてよく使われるので「祝いの木」とも呼ばれています。

さらに、ミルトスはヴィーナスの持ち物でもあります。(ヴィーナスが誕生した後、裸身を隠すのに使った葉っぱだった)

絵の中心にいたり、服に「赤と青」を使っていることから、聖母マリアを連想させます。

よ〜く見ると気づくのですが、ヴィーナス後方にいるのに、前方にいる人とサイズ変わらなくて、みんな一列に並んだら1人だけ巨人です。

この絵は遠近法はさほど気にせず描いてる絵なんだな〜というのが、こういったところからわかります。(あるいは描いているのは「神」なので、あえて遠近法無視している可能性もあります。)

モデル

サンドロ・ボッティチェリ《シモネッタの肖像》1475-1480年頃

ロレンツォの弟ジュリアーノの愛人、シモネッタ・ヴェスプッチでは?といわれています。(ヴィーナスではなく3美神のモデル説も)

この絵が制作される前に彼女は亡くなっているので、モデルかは微妙なところですが、絶世の美女だったので、美しい女神を描こう!!って思ったら、彼女の顔を思い浮かべた可能性はありますよね。

クロリスとゼピュロス

左がニンフ(精霊)のクロノス、右が西風の神ゼピュロスです。

ゼピュロスが春の風を運んできました。

ゼピュロスがクロノスを誘拐して、自分のものにします。

一般的にこれは事件ですが、神々の話なのでなんでもアリです。

クロノスは、あらびっくり!

口から花がこぼれ、花の女神フローラへ変身します。(なにそれ)

フローラ

花の女神フローラが花をまいています。

足元の花も満開。春の到来です。

この後、この庭は花で満たされるのでしょう。

王冠のイチゴは「誘惑」、手に持っているバラは「愛」を象徴しています。

1人だけ、とても装飾的。可愛いけど、なんか違和感があります。

顔が笑っていますよね。当時、神に表情をつけるというのは、珍しいことでした。

フィレンツェ(「花」のラテン語)は花の女神フローラにちなんで名付けられています。

三美神

ヴィーナスの付き人、美の女神たちです。

左から、愛欲・純潔・美を表しています。(なにを象徴とするかは、神話や主題によって若干異なります)

愛欲と純潔は相反するので、ガン飛ばしあっています。

キューピッド

キューピッドヴィーナス子供です。

目隠しをしたキューピッドの放つ矢は、三美神の誰に当たるのでしょうか?

ここから恋は盲目愛の不確かさを表しています。

マーキュリー(ヘルメス)

同じ神でも、神話の種類や、言語の違いで呼び方が複数あります。

マーキュリー商人の守護神であり、5月の神でもあります。

カドゥケウスという、2匹のが絡まりついている杖が持ち物です。

この杖で雲を追い払っています。庭の番人です。

モデル

ロレンツォ・メディチでは?ともいわれています。

500以上の植物が描かれている

その中の約190種類の花のうち、130種類は特定されています。

ヒナギク、ワスレナグサ、ジャスミン、ユリ、スミレ、アネモネ、タンポポ、ナデシコ、シダなどなど…

中には「死」を意味する植物もあるといわれていますが、まぁ…これだけ多数の植物を描いていたら、中にはそんな意味にも解釈できるものもあるでしょうねって感じも…。

オレンジ

頭上にオレンジがたくさんありますよね。

オレンジメディチ家の象徴でした。

オレンジと一緒に、オレンジの白い花も描かれていますが、イタリアでは「結婚」の象徴とされています。

何の絵?

春の寓意を描いた作品です。

絵の中で、愛・平和・繁栄が表されています。

春は2枚あったのかも?

題名の《プリマヴェーラ》、意味は「春」ですが、画家が付けたわけではありません。

これも絵画あるあるなのですが、「題名は必ずしも画家が付けたわけではない」んです。

「春」という題名は、芸術家の伝記を書いたヴァザーリが、その中で、「春のアレゴリー」と呼んだことに由来しています。

ただ、そこに記載されている絵の特徴が「三美神がヴィーナスを戴冠している」なんです。

そんなシーンはこの絵にはないので、ボッティチェリの「春」は現存していないだけで2枚あった可能性があります。

こんな感じで、絵画の題名の付け方は、結構適当だな〜って思うことが多々あります。(笑)

神話は異端だった

ルネサンス以前の中世絵画では、キリスト教以前の神話は異端とされてきました。

そんな中、裕福で教会に対しても力をもっていたメディチ家が、高価な古代ギリシャや古代ローマの哲学書の写本を収集し、タブーともされていた古代ギリシャの哲学者プラトンの研究会をつくりました。

プラトニック・ラブ

この絵には、地上の愛神の愛、両方を象徴する存在として、ヴィーナスが描かれています。

なので主題はプラトニック・ラブでは、とも言われています。

プラトニック・ラブとは、肉体的な欲求を離れた、精神的な愛を表す言葉です。

これを唱えたのが、哲学者プラトンだったので「プラトン的な愛」プラトニック・ラブと呼ばれています。

ちなみにプラトンは同性愛者だったので、男性同士の友情について語っていた言葉が、いつしか男女に使われるようになりました。

「プラトン・アカデミー」という、ちょっとしたお友だちサークル的な集まりがあり、ロレンツォもボッティチェリも参加するほど、プラトンの考えにハマっていました。

依頼者

この絵の依頼者についても諸説ありますが、今一番有力なのは、メディチ家のいとこの結婚祝いとしてメディチ家の誰かから注文された絵だ、ということです。

残念な話

この作品、経年劣化で著しく退色してしまっています。

今見ても十分すごいのに、当時はどれだけ美しかったことか…