フェルメール?「フルートを持つ女」を超解説!一番小さな絵?

こんにちは!

今回は、フェルメール作?な《フルートを持つ女》についてです。

早速見ていきましょう!

フルートを持つ女

ヨハネス・フェルメールに帰属《フルートを持つ女》1665-1675年

ほぼフェルメール作ではない作品

下塗りの層と絵画の様式が他のフェルメールのそれとは異なるため、彼の手によるものなのかどうか疑問視されています。

17世紀に大きな修正が施されたようで、作者を判断することは困難です。

フェルメールの描いた未完成作を彼の死後に他の画家が補筆したものだという説もあります。

このような理由により、所蔵先の美術館ではフェルメールの作品としてではなく「ヨハネス・フェルメールに帰属」として展示されています。

最も小さい絵

本作と《赤い帽子の女》(こちらもほぼフェルメール作ではない作品)は、フェルメール作だとしたら最も小さい作品であるだけでなく、板に描かれた唯一の作品でもあります。

どちらの作品にも、風変わりな帽子をかぶる若い女性と、タペストリーのある背景が描かれています。

こうした特徴から、2 つの絵は一対の作品として制作されたものだともいわれています。

とはいえ、サイズが微妙に違うことやそもそもフェルメール作ではない可能性から、その可能性は低いようですが。

誰でもない絵

 

この絵画は、特定の人物ではなく、ある種の典型や特徴を描いたトローニーです。

女性の生彩を欠いた表情からも、フェルメール作ではないのではといわれています。

 

フェルメールの最も有名なトローニーである《真珠の耳飾りの少女》と同じように、女性の唇はわずかに開いています。

白いひと塗りが、女性の柔らかな口元から少しだけのぞく歯を表現しています。

 

フェルメールの他の多くの作品と同様に、この作品でも線による表現以上に色が重要性を持っています。

この絵画ではその特徴が極端に表れており、たとえば、色の相違によって各部を表現している女性の顔がその例です。

その結果、油彩画であるにもかかわらず、水彩画を彷彿とさせる仕上がりとなっています。

中国風の奇妙な帽子

 

若い女性がやや頭を傾けてかぶっているのは、17世紀のオランダの絵画ではめったに見られない風変わりな中国風の帽子です。

 

竹を編んだ帽子が一般的であったアジアから持ち込まれたものかもしれませんが、この帽子は灰色の塗料で縞模様に塗られているようです。

真珠の耳飾り

 

若い女性は2つの大きな真珠の耳飾りを身に付けています。

 

真珠は半透明の薄い灰色と白い点で塗られており、光の反射が表現されています。

他の絵にも登場する服

 

彼女の着ている青い服は、《天秤を持つ女》と同じものです。

フェルメールは毛皮の質感を表現するために、女性の青い上着の縁取りに小さな白いハイライトを加えています。

小さな白い点は青い上着の布地にも使われており、細部まで描写されていませんが、光沢のあるサテンのつやが伝わってきます。

唯一のフルート

 

女性は左腕で机に寄りかかっており、手にはフルートを持っています。

楽器を題材にすることが多いフェルメールの作品の中で、フルートが描かれているのはこの作品だけです。

タペストリー

 

絵の背景にはタペストリーが描かれています。

タペストリーはフェルメールの絵画構成において机に置かれた状態で描かれることが多く、より細部だけが描写されることもあります。

この絵では、タペストリーの一部分だけが見えています。

タペストリーには、彩色された複数の大きめの要素が描かれているため、現代絵画のような雰囲気も感じられます。

フェルメールのサインがタペストリーに描かれた《赤い帽子の女》とは異なり、この作品に署名は残されていません。

ライオンの頭部付き椅子

 

椅子には、《赤い帽子の女》の椅子にも見られるライオンの頭部が描かれています。

装飾の形状よりも光の反射が重要な役割を果たしており、そのため、この絵を描く際にフェルメールが光学機器を使用したと考える専門家もいます。

当時の画家たちは、カメラ・オブスクラと呼ばれる機器のレンズを通して見ることで、照明を当てた構図の投影像を紙の表面などに結像させることができました。

 

ライオンの頭部に見られる光の反射は、こうした投影像を下絵にして描かれたのかもしれません。

また、少しだけ焦点がずれたような描写となっていることもその根拠と言えるでしょう。