こんにちは!
今回は、マザッチョの《聖三位一体》についてです。
早速見ていきましょう!
聖三位一体
マザッチョ《聖三位一体》1427年頃
マザッチョが25歳頃に、フィレンツェのドミニコ会派サンタ・マリア・ノヴェッラ教会から依頼されて描いた、高さ6メートルを越す大きな壁画です。
空間を広げる立体的な絵
この作品はマザッチョの代表作で、体系だった透視図法が導入された最初期の絵画です。
この作品は、人の目の高さを考慮して描かれており、鑑賞者が見上げたときに、絵がもっとも立体的に見えるよう正確な遠近法で描かれています。
遠近法は、15世紀初頭、建築家のブルネレスキらが開発した当時最先端の技法で、友人でもあった彼から技法を学び、作品に取り入れました。
そのため、従来の平面的な絵画表現とは異なり、本物の礼拝堂があるかのような現実感を見る人に与えています。
三位一体ってなに?
三位一体とは、「創造主 父なる神」「神の子 イエス・キリスト」「聖霊」は、唯一の上の3つのあり方で、本質的には同じものであるとする、キリスト教の教義のことです。
この絵では、父なる神がイエスを支え、イエスの頭上には聖霊を表す鳩が描かれています。
イエスの足元には、イエスの母である聖母マリア、イエスの弟子の福音書記者ヨハネが描かれています。
そして一番手前には、この絵を寄進した夫婦が描かれています。
通常、寄進者は、大事なものを大きく描くという考えのもとイエスやマリアより小さく描かれますが、ここでは正確な遠近法で描くために、もっとも手前にいる寄進者夫婦が大きく描かれています。
有名人との記念撮影?
このフレスコ画の依頼主(寄進者)に関する当時の記録は残っていませんが、レンツィ家が依頼主では?といわれています。
また、近年の研究でこの作品の真下にある墓が、フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ地区のベルティ家の所有であることが判明しました。
ベルティ家は、聖三位一体を長きに渡って信仰していた労働者階級の一族で、聖三位一体をモチーフとした絵画をマザッチョに依頼した可能性も高いと考えられています。
どうして寄進者まで描き込まれているのかというと、写真もまだなかった時代に、自分の憧れの人と一緒に写りたいと思ったら絵に描いてもらうのがその方法だったからです。
お金出すなら自分も一緒に描いてほしい!ということです。
14世紀後半から15世紀初頭の聖三位一体を扱った絵画で、聖母マリアや洗礼者ヨハネ、さらには寄進者が並置して描かれた作品は珍しく、墓と聖三位一体を関連付けて描いた作品もほとんど前例がありませんでした。
この骸骨はだれ?
聖人とこの絵画の依頼者は、骸骨が横たえられた石棺の上に描かれています。
骸骨の上の壁面には「過去の私は現在の貴方であり、現在の私は未来の貴方である」という銘が刻まれています。
この骸骨は、神が創造した最初の人間アダムで、かつて彼は神から禁じられていた木の実を食べるという罪を犯しました。
その罪を救世主イエス・キリストが償うという意味で、ここにアダムが描かれています。
聖三位一体への信仰のみが死を乗り越えられるということを表現しています。