こんにちは!
今回は、魔法使いマーリンの最期&ヴィヴィアンとの物語についてです。
早速見ていきましょう!
マーリンとヴィヴィアン
フランク・ゴッドウィン《マーリン》
マーリンは実在した?
アーサー王伝説に登場する世界一の魔法使いマーリンは、アーサー王に仕えていました。
彼は、アーサーにとっての困ったときのドラえもん的存在でした。
アーサー王伝説と言われるだけあって、物語自体は創作ですが、アーサー王らしき人物は実在したかもしれないそうで…(とはいえ、いないと断言できないというだけで、可能性はほぼゼロに近い)。
マーリンはそもそも、『ブリタニア列王史』に登場する魔術師でしたが、その後、アーサー王物語に組み込まれました。
彼は、実在した将軍アンブロシウス・アウレリアヌスと半伝説的なウェールズの予言者マルジン・ウィスルトの物語を組み合わせて作られた人物だといわれています。
美女に弱い
フランク・カドガン・クーパー《湖の乙女》1924年
マーリンは数多くの女性に言い寄る色男で、とにかく美人に弱く、そのせいで身を滅ぼすことになります…。
すごい魔法使いなのに、その最期はあっけないものでした。
エリナー・フォーテスキュー=ブリックデイル『国王牧歌』の挿絵 1913年
アーサー王と妃グィネヴィアの結婚式で、マーリンはヴィヴィアンに一目惚れしてしまいます。
湖の乙女ヴィヴィアン(ニミュエ、ニニーヴ、ニヴィアンとも)は妖精で、騎士ランスロット(アーサーが信頼していた騎士でありアーサーの妻と不倫)の育ての親でした。
マーリンは彼女にメロメロで、たえず付きまといます。
ギュスターヴ・ドレ《ヴィヴィアンとマーリン》1867年頃
またヴィヴィアンも、マーリンの魔術を全て習得して自分のものにしたいと思っており、たえずマーリンの機嫌をとり続けました。
利害が一致した2人は付き合うことになりました。
そしてこの後マーリンは彼女に、自分の知る魔法の全てを教えてしまいます…。
死を予知していながらも…
マーリンは、アーサー王に対して近いうちに自分は生きながら地中に埋められるだろうからと前置きして、国の行く末をあれこれと予言し、エクスカリバーとその鞘だけは絶対に守るようにと忠告しました。
これを聞いたアーサー王は、「自分の運命がわかるのだから、そうならないように魔術でなんとかすればよいではないか」と、至極真っ当な指摘をします。
ですが、マーリンは「それは無理な話です」と、なぜか諦めモード…。なぜ…。
そしてアーサーと別れ、ヴィヴィアンと一緒に旅に出ました。
ウンザリするヴィヴィアン
エドワード・バーン=ジョーンズ《マーリンとヴィヴィアン》1861年
旅の道中、マーリンは魅了の魔法を使おうとしたりするなど、たびたび強引に彼女に迫りました。
ヴィヴィアンはうんざりすると共に、マーリンが悪魔の子(人間の女性と悪魔の子)だということも思い出し、彼のことが怖くなってきました。
最強魔術師のあっけない最期
アーサー・ラッカム『アーサー王物語』の挿絵 1917年
途中、魔法で大きな石の下にはまっている岩があり、マーリンはヴィヴィアンをそこへ案内しました。
ヴィヴィアンは「まあ不思議、よく見せてください」と誘導してマーリンを石の下に潜り込ませると、どんな魔術を使っても二度と出られないようにし、そのまま立ち去りました。
エドワード・バーン=ジョーンズ《欺かれるマーリン》1874年
マーリンがどこに閉じ込められたについては、墓、洞窟、魔法の塔、木など様々な説があります。
上の絵では、セイヨウサンザシの木の茂みに閉じ込められています。
エドワード・バーン=ジョーンズ《魔法の木》1882-1898年
狂気じみた墓のストーリー
マーリンの最後については様々な説がありますが、今回はもうひとつ、墓のストーリも紹介します。
ある日、2人は危険な森へ入っていき、岩の間にある秘密の部屋を訪れました。
ここは昔、親に結婚を反対された王子と貧しい娘が駆け落ちし、生涯を過ごした場所でした。
2人は幸せに暮らし、同じ日に亡くなり、この場所にある同じ墓に埋葬されています。
ヴィヴィアンはこの話をマーリンから聞いて、心の中でガッツポーズ、ここに彼を閉じ込めてやろうと思い、「今夜は一緒にその秘密の部屋で過ごしましょう」と思わせぶりなことを言います。
彼女に対して「いろいろ教えてあげている見返り、まだ何ももらってないな〜」などという発言を繰り返していたマーリンは、これに大喜びし、張り切ります。
早速墓のところまで行き、ヴィヴィアンはマリーンに、「(墓の)覆いの石を持ち上げてほしい」とお願いします。なんてストレートな…。
これに対しマーリンは、「持ち上げることはできるけど、長年地中に埋まっていた遺骸はぞっとするほど見苦しいから、見ない方がいい」と言います。
「そうかしら?」とヴィヴィアンはせがみ、どう考えてもおかしいはずなのに、恋は盲目、マーリンは石を持ち上げます。
墓の中の2人の遺骸は、白布に包まれており、腐敗した死体を見ることにはなりませんでした。
そしてヴィヴィアン、「この2人の決断と生き方に感動しましたわ。一晩中ここで過ごしましょう」と提案します。
これもどう考えてもおかしいはずなのに、マーリンもこのことに同意し、ヴィヴィアンはベッドの用意をしました。
マーリンはベッドにつくや、ぐっすりと眠りこんでしまいました。
呪文をかけられて、はやくも意識と記憶を失ってしまったようです。
ヴィヴィアンは、さらに呪文をかけ、頭をたたかれても目が覚めないほどに魔法が深まると、召使を呼び、墓の中にマーリンを放りこませ、覆いの石をもとの位置に戻すよう指示しました。
そして、呪文を唱え、墓を封印しました…。
ヴィヴィアンが最強の魔術師に
マーリンを生き埋めにしたヴィヴィアンはその後、円卓の騎士の一人ペレアス卿と結婚し、魔術の力でアーサー王や円卓の騎士たちを助けています。
彼女はペレアス卿が死ぬまで添い遂げました。
彼女の庇護のおかげで、ペレアスは他の騎士たちとは違って安楽な死だったそう。
また、アーサー王がカムランの戦いで傷つくと、モーガン・ル・フェイら他2人の貴婦人と共に王をアヴァロンへ導きました。
アーサー王はこの地で亡くなったとも、眠っているだけで時が来たら目覚めるともいわれています。