こんにちは!
今回は、「夜の画家」と呼ばれ、静寂で神秘的な絵を描いた画家ラ・トゥールについてです。
『リトルマーメイド』に登場する絵についても解説しています。
早速見ていきましょう!
目次
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールは、現フランス領のロレーヌ地方の画家です。
乱暴者
パン屋の家に生まれ、46歳のときには、パリで、国王ルイ13世から「国王付画家」の称号を得ています。
それまでの経歴やその後についても詳しいことがわかっていませんが、残っている記録によると、かなりの財産家になり、暴力を振るって貸し金を取り立てたり、召使に盗みをさせたりと、強欲で、乱暴で、トラブルメーカーだったそう。
カラヴァッジョの影響
作風は、明暗の強い対比から、カラヴァッジョの影響を受けていると考えられています。
カラヴァッジョといい、ラ・トゥールといい、ジャイアンみたいな人間が、こんな静かで心にしみる絵を描いてるのかと思うと笑えてくるな…。
違う画家の作品だと思われていた
ラ・トゥールは、20世紀初頭に再発見された画家でした。
どういうことかというと、作品自体は評価されていましたが、別の画家の作品だと思われていたんです。
それをドイツの美術史家の調査によって、ラ・トゥールの作品だと判明しました。
戦争で絵が散逸したこともあり、作品は44点ほどしか確認できていないそう。
現実の光で聖なる光を表現
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《聖ヨセフ》1642年頃
少年のイエス・キリストと養父で大工の聖ヨセフが描かれています。
当時、ロレーヌ地方では聖ヨセフに対する信仰が盛んでした。
ロウソクの光を、聖なる光のように描いているところがラ・トゥールの特徴でもあります。
聖ヨセフは、材木に穴をあけようとしていますが、この材木が十字架を連想させることから、後に処刑されるイエスの重い未来を暗示しているのでは?ともいわれています。
同じ絵を何度も描いた
2枚のマグダラのマリア
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《悔悛するマグダラのマリア》1638‐1640年 ロサンゼルス・カウンティ美術館
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《悔悛するマグダラのマリア》1640‐1645年 ルーヴル美術館
この絵に見覚えある人は、アリエル大好き人間です!!!
ディズニー映画『リトルマーメイド』の「♪パート・オブ・ユア・ワールド」の曲のシーン、アリエルの洞窟内に登場します。
(ディズニーシーのマーメイドラグーン内、アリエルの洞窟を再現したエリアにもこの絵のレプリカが飾ってあって感動しました。)
人魚姫アリエルは、人間の世界に憧れて、人間界のガラクタを宝物として収集し、洞窟に飾っています。
その中で、アリエルが「なぜ火は燃えるの?教えて」と歌うシーンで、この絵のろうそくの炎を指差しています。
ところで何の絵?なんでディズニーに出てくるのでしょうか?
キリスト教界のアイドル
描かれているマグダラのマリアとは、簡単に言うと、「キリスト教界のアイドル」です。
今も昔もとても人気があり、多数の絵に描かれています。
実在した人物だといわれいます。
マグダラのマリアは、娼婦だ、聖人だ、イエスの妻だ…と肩書きが定まっていません。
一般的には、マグダラのマリア=「罪深い女」というイメージです。
ですが、当時の男尊女卑の考え方から、娼婦や罪深い女というイメージは、後から付け加えられたものだといわれています。
娼婦
絵画に描かれる場合は、裸を描きたいので、娼婦として登場することも多いです。
今回の絵でも、肩や脚など、肌の露出が多いのは、元娼婦だからです。
モチーフ
聖書、十字架、ロープ、そしてろうそくが灯っています。
これらはキリストをイメージさせるモノたちです。
自分の罪を悔い改め、心を入れかえ、神の赦しを得ようとしています。
膝の上にあるガイコツに触れ、死に思いをめぐらせています。
アリエルの境遇と重なる
アリエルは、どこかで見つけてきたこの絵を見て、「人間の世界には、火ってものがあるんだ」と知ります。
他にも「炎」が描かれている絵はたくさんあるのに、なぜこの絵を『リトルマーメイド』の中に登場させたのでしょうか?
それは、マグダラのマリアの苦悩と、人間にどうしてもなりたいアリエルの苦悩を重ねているのかもしれません。
その他のマグダラのマリア
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《悔い改めるマグダラのマリア》1628‐1645年
実際にある光を、聖なる光のように描いています。
闇と光の表現が、心にしみる感じで、本当に素敵ですよね。
当時は、電気なんて無かった時代。
日常的に、ろうそくの光で生活していたからこそ、この闇の表現が描けるんでしょうね。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《悔い改めるマグダラのマリア》1625‐1650年
ラ・トゥールは、こういった深い精神性や、宗教的感情を感じられる絵を得意としていました。
2枚のいかさま師
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《いかさま師》1630‐1634年
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《いかさま師》1635‐1638年
絵の内容としては、右の着飾った若い男性を、みんなで騙そうとしている、という絵です。
彼の前に金貨が積まれていることから、最初は勝たせてあげて、油断させて、後から全部奪うつもりなんでしょうね…。
なぜ同じような絵を複数枚描いているかというと、画家によって理由はいろいろありますが、「その絵が売れる」からです。
まとめ
・ラ・トゥールはキアロスクーロ(明暗の対比)を用いた「夜の画家」 ・《悔悛するマグダラのマリア》は『リトルマーメイド』に登場する