ランスロットの聖杯探しの旅を超解説!

こんにちは!

今回は、聖杯探しの旅に出たランスロットの物語についてです。

早速見ていきましょう!

聖杯探究 ランスロットの場合

廃墟のような礼拝堂

エドワード・バーン=ジョーンズ《聖杯の礼拝堂におけるランスロットの夢》1896年

聖杯探しの旅に出た騎士ランスロットは、誰にも出会うことなく、森の中を何日もさまよいました。

ある日、奇妙な文字が刻まれている石の十字架を見つけ、そのそばには廃墟のような古びた礼拝堂がありました。

中を見ると、絹布で豪華に覆われた祭壇があり、その上には、背の高い銀の燭台がのっていて、6本の白いロウソクが立てられていました。

中に入ろうとしましたが、入口は鉄の格子ででふさがれていて、入ることができません。

エドワード・バーン=ジョーンズ、ウィリアム・モリス、ジョン・ヘンリー・ディアーレ《ホーリー・グレイル・タペストリー「3 ランスロット卿の失敗」》1890年代

しかたなく、ランスロットは馬を降り、手綱を十字架に繋ぐと、甲と剣を置き、地面に盾をしいてその上に寝てしまいました。

硬くて冷たい寝床なので、彼はあまりよく眠ることができませんでした。

病気の騎士と不思議な出来事

ハワード・パイル《『アーサー王と聖杯の物語』の挿絵「聖杯が現れ、ランスロットが眠る」》1910年

眠るともなく覚めるともなく横になっているランスロットでしたが、白くて美しい2匹の馬が自分の方にやってくるような気がしました。

馬は病気の騎士を運んでいました。

十字架の近くにやってくると、騎士の祈る声が聞こえてきました。

「ああ、優しい神さま、この悲しみはいつ消えるのでしょう。聖い器はいつ私の近くにやってきて、私を祝福してくれるのでしょう。もうずいぶん長く待ちました。ほんのちょっとした罪のために」

このとき、ランスロットは、6本のロウソクをたてた燭台、銀のテーブルと聖杯が、誰にも支えられずに、十字架の前までやってくるのを見ました。

ウィリアム・ヘンリー・マーゲットソン《『アーサー王とその騎士の伝説』の挿絵「彼の手と膝で、病気の騎士は聖杯に忍び寄りました」》1914年

すると病気の騎士が起き上がり、両手を差し上げて「聖なる器にまします、優しい神さま、この病を癒してください」と言いました。

その後、騎士は聖杯まで這ってゆき、それに手で触れ、口づけをしました。

するとその瞬間、騎士は健康な体になり、神に感謝しました。

ランスロットの罪

エドワード・バーン=ジョーンズ《ランスロット卿の失敗》

かなり時間が経ってから、聖杯は燭台とともに礼拝堂に戻っていきました。

しかし、どこに行ってしまったのかは、ランスロットにはわかりませんでした。

なぜなら、彼は、罪にまみれていて、聖杯の前で立ち上がることができなかったからです。

ランスロットの罪ってなに?という方はこちら↓

簡単に言うと、彼はアーサー王の妻と不倫していました。

ランスロットとヴィネヴィアの禁断の恋を超解説!

2022.01.10

武具を持っていかれる

病気だった騎士が従者と合流し、「この眠っている騎士は、聖杯が目の前に現れても目を覚ますことができなかったのが不思議だ」と言いました。

従者は「きっと重い罪の中に生きていて、まだ懺悔もしていないのでしょう」と答え、騎士は「お気の毒。聖杯探しの旅に出た円卓の騎士なのに」と言いました。

騎士は甲と剣がなかったため、従者にすすめられて、ランスロットのもの勝手にもらい、ランスロットの馬の方が優れていたので彼の馬に乗って行ってしまいました。

謎の声

エドワード・バーン=ジョーンズ《ランスロットの夢》

やがてランスロットは目を覚まし起き上がり、今の出来事は夢だったのだろうかと考えました。

そんなとき、どこからともなくこんな声が聞こえてきました。

「ランスロットよ、おまえは非常に不毛な人間だ。聖杯のある場所に、おまえはよくもあつかましくいることができるものだ。ただちに立ち去れ。お前の罪の悪臭がこの場所を汚してしまわないうちに」

この言葉に深く傷ついたランスロットは、どうしたらいいのか途方に暮れ、あふれる涙に目がくらみ、うめき嘆きながら、また生まれてきた日を呪いながら、急いで立ち去りました。

聖杯の秘密が自分には明かされず、自分が永遠に名誉を失ってしまったことが、彼にははっきりとわかりました。

神に見放された…

十字架のところまで戻ると、甲も剣も馬も無くなっており、夢ではなかったことを悟ります。

彼は悲しみにうちひしがれ、「ああ神さま、ここで私の犯した罪と、邪(よこしま)な生活が完全に暴き出されました。はじめて騎士に叙せられて以来、重い罪の影の中でずっと暮らしてきました。私ほど肉欲とふしだらに身を任せてきた男はおりますまい」と、夜通し嘆き続けました。

朝になり、少しずつ落ち着きを取り戻していたランスロットでしたが、馬と甲がなくなっていることから、神が自分を憎んでいることを悟ります。

罪の懺悔

彼は森を彷徨い、隠者の庵に辿り着き、隠者に頼んで、罪の懺悔を聞いてもらいました。

礼拝堂での不名誉な出来事、それをもたらした、これまでの罪にまみれた生活のことを話しました。

隠者はどのように生活を改めるべきか、ランスロットに賢明な助言をしました。

ランスロットは、心の底から悔悟の涙を流し、隠者は罪の消滅を宣し、苦行を言い渡しました。

それは、頭髪で織ったシャツをつねに肌につけるというものでした。すごいな…。

そしてランスロットは、隠者のもとで祈りと悔悟の日々を送りました。

これにてランスロットの聖杯探しの旅は終わりを迎えました。つまりドロップアウトです。

ランスロットの罪はここで一旦帳消しになったのですが、さすが色男、この後すぐ、心の底から悔悟の涙を流したこともきれいさっぱり忘れ、大騒動を巻き起こします。笑