フェルメール「リュートを調弦する女」を超解説!なぜ演奏ではなく調弦なの?

こんにちは!

今回は、フェルメールの《リュートを調弦する女》についてです。

早速見ていきましょう!

リュートを調弦する女

ヨハネス・フェルメール《リュートを調弦する女》1662-1663年

リュートと女性

 

若い女性が窓辺に座り、リュートを弾いている…わけではありません。調弦しています。

なぜそれがわかるのかというと、右手の構え方や、右手が触れている弦と左手が触れているペグ(糸巻)が違うからです。

リュートに耳を傾けつつ、彼女は窓とその向こうにある通りを見つめながら楽器を爪弾いています。

リュートの音が鳴っているシーンを描いていますが、画面は静寂に包まれています。

 

白い毛皮付きの黄色いサテン地のジャケットは、他の4作品にも登場しているフェルメールの定番の衣装です。

机の上の楽譜

 

机の上には、楽譜の本が無造作に置かれています。

床に転がっているものたち

 

大理石の床には、本がもう1冊と、恋愛を象徴する弦楽器ヴィオラ・ダ・ガンバ(コントラバス)が置いてあります。

当時のオランダの裕福な若者たちは、教育の一環として音楽を学び、他の人々と合奏することがありました。

なので合奏は男女の出会いの場でもありました。

地図が表す意味

 

白い壁には、手描きのヨーロッパ地図が掛けられています。

 

地図の下部には「EUROPE」の文字があります。

海には多くの帆船が描かれており、「船乗り」を象徴しています。

これらからこの絵は、航海に出た恋人の帰りを待ちわびているシーンだと読み解くことができます。

空席の椅子

 

女性の向かいには、ライオンの頭部の豪華な彫刻が施された空席の椅子が大きく描かれています。

先ほどまでこの椅子に座っていたのは誰でしょうか。

もしくはこれから座るのは誰でしょうか。

この絵は何を表しているのか

この絵に描かれている人物は彼女だけですが、描かれているモチーフから「他の誰か」の存在を感じとることができます。

そしてその「誰か」は、それらのモチーフから、恋人もしくは思い人であることがわかります。

彼女はその不在の人物に思いを馳せながらリュートを爪弾いています。

誰かが来るのを待っている

楽器を調弦していること、そしてヴィオラ・ダ・ガンバが床に置かれていることから、この女性は誰かとの合奏を待ちわびているところだと考えられています。

さっきまでいた誰か

楽譜の本が散らかった様子や、ぞんざいに置かれた男性の楽器から、2人が会った後だと考えることもできます。

演奏によって調子がずれた楽器を調弦するために指を動かす女性は、すでに部屋を離れた相手の背中に目を向けているのかもしれません。

奥行き

本作では、遠近法を用いた奥行き感のある椅子と机が、この絵画と見る者とを繋ぐ架け橋となり、キャンバスを斜めに動くように見るよう視線を誘導しています。

また、地図の縁に、女性の頭部、リュートのネックがギリギリ重ならないように描くことで、画面にある種の緊張感と秩序をもたらしています。

 

格子窓から部屋に差し込む光は、耳と首を飾る真珠に輝きを与え、横にある椅子の真鍮製の鋲に当たっています。

光源の低さから、夕暮れの光だと考えられています。

 

本作は、周りの暗さと相まって、柔らかい光に包まれている演奏者に目がいきます。

フェルメールは本作のように、手前を暗くして、目立たせたい部分に光が当たるように描くことを好みました。

17 世紀には人工的な照明がほとんどなかったため、アトリエで光の量を調節するには窓や雨戸の開き具合を調節する必要がありました。

17 世紀から現在に至るまで、オランダの都市に見られる典型的な幅の狭い家屋において最も日当たりがいいのは、通りに面した部屋でした。