こんにちは!
今回は、フェルメールの《天秤を持つ女》を解説します。
早速見ていきましょう!
天秤を持つ女
ヨハネス・フェルメール《天秤を持つ女》1664年
天秤で何をはかっている?
光の差し込む窓際で、女性が小さな天秤を持って立っています。
天秤のお皿の上には何が載っているのかというと…
何も載っていません…!
なぜでしょうか?
ヒントは彼女の背後に飾られている絵です。
最後の審判
「最後の審判」の場面が描かれています。
世界の終末に、大天使ミカエルが全人類の魂を天秤ではかり、天国行きと地獄行きに分けているシーンが描かれています。
天秤を持つ女性と、魂をはかるミカエルのイメージを重ね合わせて描くことで、「最後の審判の日を思え」という宗教的な絵だとわかってきます。
何気ない室内の光景を描いた絵のように見せかけながら、実は宗教画という面白い絵だったりします。
ミカエルと重ねて
ハンス・メムリンク《最後の審判》部分 1467-1471年頃
上の絵を見てわかるように、大天使ミカエルが天秤で魂の重さをはかっています。
フェルメールの絵だと、手前にいる女性でミカエルの姿が見えません。
そのため、彼女がミカエルの代わり、つまり現世における魂の重さををはかっているのでは?ともいわれています。
机の上にある宝石箱から真珠の首飾りが見えます。
これらの宝飾品は、現世の利益やこの世のむなしさを表しています。
他の説
天秤を持つ女性は、自分の価値をはかっているという説や、
新約聖書の「高価な真珠のたとえ話」から、自分とキリストの振る舞いを比べようとしている説、
さらには、彼女は胎児の魂をはかる象徴で聖母マリア(濃紺の服も聖母マリアを連想させます)を意味している説、
そして、自身の人間性をはかり、「最後の審判」と並べることによって、現世の財産より、天界の宝物を重要視すべきという教訓的な絵だとする説などがあります。
同時代の画家も同じ構図で描いていた
ピーテル・デ・ホーホ《金貨を量る女》1664-1665年頃
フェルメールとデ・ホーホ、どちらが先かわかりませんが、彼も同じテーマの絵を描いています。