こんにちは!
今回は、ゴッホの描いたルーラン一家の絵を紹介します。
早速見ていきましょう!
ルーラン一家
理想のモデル
ゴッホといえば、ひまわりや糸杉など風景画が有名ですが、本人は肖像画を描くことが好きでした。
ではなぜ肖像画ではなく風景画などが多く残っているのかというと、貧乏でモデルを雇うお金がなかったからです。(自画像が多く残っているのもナルシストだからではなくてそのためです)
アルルにやって来た35歳のゴッホは、4カ月経ってもモデルを見つけることができないでいました。
元々人付き合いが上手ではなく、住民たちから「風変わりな異国の画家」と見られていたゴッホには、モデルどころか友人すらいませんでした。
フィンセント・ファン・ゴッホ《ズアーブ兵》1888年
1人でアルルの風景を描く日々が続いていましたが、ようやくモデルを見つけることができました。
上の絵は、アルルでゴッホが描いた最初の人物画の完成品です。
しかし、今度はゴッホ自身が思うように描けず「下手(まず)く固いもの」ともらし、「調子のちぐはぐな荒い色の組み合わせで、描くのが楽じゃなかった」とテオに書き送っています。
そんな孤独な毎日を過ごしていたゴッホが、ルーランという良き理解者であり友人を得たことによって、彼ら一家の肖像画がこうして残ることになりました。
ジョセフ
フィンセント・ファン・ゴッホ《郵便夫ジョセフ・ルーランの肖像》1888年
47歳のジョゼフ=エティエンヌ・ルーランと仲良くなり、その一家をモデルとして複数の肖像画を描きました。
ゴッホは、ルーランについて、手紙で郵便配達人としていますが、実際には駅の郵便物取扱係でした。
弟テオに絵を送るためにゴッホは、ルーランの職場に足しげく通いました。
ゴッホは上の絵について、「貧弱な部屋の平凡な壁などは描かずに、無限を描く」と、《ズアーブ兵》とは違って背景を青だけで描いています。
じっとしていられないタイプだったというルーランを、筆の跡が残るような速描きで捉え、パリ時代には見られなかった輪郭線も強調されています。
フィンセント・ファン・ゴッホ《郵便夫ジョセフ・ルーランの肖像》1888年
ゴッホは妹ウィル宛の手紙でルーランのことを「頭部はソクラテスに似て、鼻はほとんどあるかなしか、……たっぷりとしたごま塩の髭、大きな耳を持ってる。この男は強烈な共和主義者にして社会主義者で、議論もなかなか上手い」と評しています。
強烈な共和主義者で住民から疎まれていたルーランに、ゴッホは親近感を覚えたのでしょう。
フィンセント・ファン・ゴッホ《郵便夫ジョセフ・ルーランの肖像》1888年
フィンセント・ファン・ゴッホ《郵便夫ジョセフ・ルーランの肖像》1888年
ルーランは、ゴッホがゴーギャンとの共同生活がうまくいかず耳切り事件を起こし、病院に入院したときも、退院後も彼を温かく見守り、弟テオにゴッホの状態を連絡していました。
フィンセント・ファン・ゴッホ《郵便夫ジョセフ・ルーランの肖像》1889年
1889年1月に、ルーランが仕事の都合でマルセイユに移住していることから、花散りばめた3点は、以前描いた同じ構図の作品を模写したものと考えられています。
フィンセント・ファン・ゴッホ《郵便夫ジョセフ・ルーランの肖像》1889年
フィンセント・ファン・ゴッホ《郵便夫ジョセフ・ルーランの肖像》1889年
背景には、ケシやヤグルマギク、ヒナギク、バラなどの花々が描かれていて装飾的です。
オーガスティン・ルーラン夫人
フィンセント・ファン・ゴッホ《オーガスティン・ルーランの肖像》1888年
37歳のルーラン夫人は、ゴッホのことをあまりよく思っていなかったそうですが、モデルにはなってあげたようです。
ポール・ゴーギャン《ルーラン夫人》1888年
ゴーギャンもゴッホと一緒にルーラン夫人の絵を描いています。
フィンセント・ファン・ゴッホ《ゆりかごを揺らす女(ルーラン夫人)》1888-1889年
フィンセント・ファン・ゴッホ《ゆりかごを揺らす女(ルーラン夫人)》1889年
フィンセント・ファン・ゴッホ《ゆりかごを揺らす女(ルーラン夫人)》1889年
フィンセント・ファン・ゴッホ《ゆりかごを揺らす女(ルーラン夫人)》1889年
フィンセント・ファン・ゴッホ《ゆりかごを揺らす女(ルーラン夫人)》1889年
長男アルマン
フィンセント・ファン・ゴッホ《アルマン・ルーランの肖像》1888年
長男のアルマンは17歳で、後に警察官になっています。
映画『ゴッホ 最期の手紙』は、125人の絵描きが、約62,450枚の油絵を描いて制作した、史上初の全編絵画の長編アニメーション映画です。
ゴッホの絵画は全部で94点引用され、部分的な引用が31点とまさにゴッホづくしの映画なのですが、主人公はこの絵のアルマンです。
この絵のまま登場するので、是非チェックしてみてください。
フィンセント・ファン・ゴッホ《アルマン・ルーランの肖像》1888年
フィンセント・ファン・ゴッホ《帽子をかぶった青年(アルマン・ルーラン)》1888年
次男カミーユ
フィンセント・ファン・ゴッホ《カミーユ・ルーランの肖像》1888年
11歳のカミーユが描かれています。
フィンセント・ファン・ゴッホ《カミーユ・ルーランの肖像》1888年
フィンセント・ファン・ゴッホ《カミーユ・ルーランの肖像》1888年
末っ子マルセル
フィンセント・ファン・ゴッホ《マルセル・ルーランの肖像》1888年
末っ子のマルセルは女の子です。
フィンセント・ファン・ゴッホ《マルセル・ルーランの肖像》1888年
フィンセント・ファン・ゴッホ《マルセル・ルーランの肖像》1888年
フィンセント・ファン・ゴッホ《オーガスティン・ルーラン夫人とマルセルの肖像》1888年
フィンセント・ファン・ゴッホ《オーガスティン・ルーラン夫人とマルセルの肖像》1888年