こんにちは!
今回は、マサイスの《両替商とその妻》を解説します。
早速見ていきましょう!
両替商とその妻
クエンティン・マサイス《両替商とその妻》1514年
ベルギーのアントワープの市民の日常を描いた風俗画です。
大航海時代の到来によって、国際的な商業都市として繁栄しており、様々な国の人々や通過が流入し、両替商が活躍していました。
最初の額縁にあった言葉
この作品の最初の額縁には、『旧約聖書』の「秤においても升においても不義をなすべからず」というフレーズがあったといわれています。
俗
夫は、両替天秤で硬貨の重さを量っています。
天秤は、善悪をはかる象徴で、彼の職業に伴う倫理観を促しています。
彼の前にある金や真珠、丸めた布にはめた指輪などの宝飾品は、この世のはかなさを表しています。
つまり物質=「俗」を示しています。
聖
妻は、絵入り時祷書をめくっています。
こちらは、魂=「聖」を示しています。
しかし、妻の視線は時祷書ではなく、天秤の方へ向けられています。
彼女の精神的活動は、物欲にじゃまさてしまったようです。
あるいは、夫が不正をしないように見張っているのかもしれません。
棚
棚には、寓意や教訓を表すものが描かれています。
水で満たされたガラスの水差しは、聖母の純潔を表しています。
棚に打ちつけられた釘に、ガラス玉のついた紐がつるさがっています。
これも聖母の純潔を象徴するアイテムです。
どうもロザリオらしいです。ロザリオといえば十字架のイメージしかないなぁ…十字架どこ…。
右に見える黒い棒のようなものは、「最後の審判」を思い出させるようなアイテム、天秤です。
閉じている箱は、隠された神性を象徴しています。
リンゴはエデンの園の原罪を表しています。
火の消えたろうそくは、虚栄心と死を象徴しています。
凸面鏡
凸面鏡が、窓を十字架の形に映し出しています。
その窓の近くには、本を読む人物がいます。
マサイスの自画像では?ともいわれています。
作品の中に鏡を描き、絵の外の世界を描き込む手法は、ヤン・ファン・エイクの《アルノルフィーニ夫婦の肖像》にも使われるなど、ネーデルラントで流行していました。
この絵の場合、店内で読書をするのは状況的に奇妙なことから、現実ではない聖なる世界が描かれているのではともいわれています。
その場合、赤いマントと福音書がアトリビュート(持ち物)の両替商の守護聖人マルコが描かれていると考えられています。
扉の外
扉の外には、老人と若者が描かれています。
マサイスはこの「老人と若者」の対比を好み、よく描いていました。