遠近法に取り憑かれた画家ウッチェロ

こんにちは!

今回は、遠近法を溺愛した画家ウッチェロについてです。

早速見てきましょう!

パオロ・ウッチェロ(1397-1475年)

パオロ・ウッチェロは、フィレンツェの初期ルネサンスの画家です。

鳥が好き

1397年頃生まれたとされています。

父親は理髪師でした。

「ウッチェロ」という名はあだ名です。

イタリア語でを意味しており、鳥の絵を描くことが好きだったので、そう呼ばれていました。

残念ながら、ウッチェロの描いた鳥の絵は残っていません。

画家ではなく彫刻家

ウッチェロは画家ですが、ウッチェロの師匠ロレンツォ・ギベルティはフィレンツェ随一のすごい彫刻家でした。

さらに、友達のドナテッロ彫刻家です。

なんでウッチェロは彫刻家でなく画家になったんだろ。

異常なくらい遠近法が好き

パオロ・ウッチェッロ《夜の狩猟》1465-1470年

遠近法がとてもとてもと〜〜っても大好きだったウッチェロ。

遠近法遠近法遠近法…って感じだったので、「画家じゃなくて数学者」として位置付けられたことすらありました。(笑)

なぜこんなに遠近法ラブだったのか、現代の人々には遠近法は当たり前すぎてピンと来ないかもしれませんが、

この時代、遠近法は、最先端の絵画表現方法でした。

なかったんです。

それまでの絵は平べったくて奥行きなんて無かったんです。

時代が進むにつれて、若干の奥行きが表現されるようにはなりましたが、まだまだ…。

なぜか他の画家たちは遠近法にそこまで興味を持っていませんでした。

そんな中、明らかに遠近法を使って絵を描いたのがウッチェロでした。

ウッチェロが弟子入りしていたのが彫刻家だったこともあり、3次元性彫刻の感覚を絵に取り入れようとして、遠近法にたどり着いたのかなと。

そんなウッチェロが遠近法を駆使した作品がこちら!

『サン・ロマーノの戦い』三部作

1432年のサン・ロマーノの戦いで、フィレンツェとシエナ軍の、約6〜7時間続いた戦いを描いた三部作です。

パオロ・ウッチェッロ《サン・ロマーノの戦い》1438-1440年

なんか演劇っぽい絵ですよね〜

戦争の絵なのに、が一滴も描かれていないことに気付きましたか?

まるでゲームのよう。

さらに、オレンジざくろバラが兵士たちを囲んでいます。

なんて素敵な背景…!戦場なのに?!?!

全体的に空想っぽいんですよね。

絵には、多くのが使われています。

金を加工し、磨いているので、光の当たり具合によっては絵画が立体的に見えます。

全体的に変色してかなり色が暗っぽくなっています。

特にシルバーが変色しています。すぐ変色してしまう色の一つです。

兵士たちの灰色のも、本当はピカピカのシルバーでした。

この絵に限らず、昔の絵全般に言えることですが、も変色しやすいので、どの絵も今見ている赤以上に、当時は鮮やかでした。

この絵も本当は、金銀赤と派手な色をたくさん使ったきらびやかな絵だったんでしょうね。

パオロ・ウッチェッロ《サン・ロマーノの戦い》1435-1440年

パオロ・ウッチェッロ《サン・ロマーノの戦い》1435-1440年

ドラゴン退治?

パオロ・ウッチェロ 《聖ゲオルギウスと竜》 1470年頃

「なんかスターウォーズのコンセプトアートみたい」っていうのが私の第一印象です。(笑)

ものすごく昔の絵なのに、なんか今っぽい感じが魅力。

「聖ゲオルギウスと竜」という有名なお話があり、それを絵にした作品です。

簡単に説明すると、ドラゴンの生贄にされそうになっていた王女を、白馬の騎士(聖ゲオルギウス)が助け、ドラゴンを退治するというお話です。

ですが…

この王女、ドラゴンに怯えている感じが全く無いですよね。

それどころか、ドラゴンのつけて、ペットの散歩みたい。

なにこれって思いません?

実はこの話、聖ゲオルギウスがすぐにドラゴンを殺したわけではないんです!

絵を見てもわかるように、聖ゲオルギウスは、とりあえず槍でドラゴンを刺し、弱らせます。

聖ゲオルギウス「今のうちにドラゴンの首を帯でつないで!」

なんで今すぐ殺して、なんで私がそんなことしなきゃいけないのって、王女はきっと思ったと思うのですが、自分の帯を外して、その指示に従います。

そのシーンが描かれています。

この後、王女がドラゴンを引っ張って街まで戻り、(シュール)

聖ゲオルギウス「このドラゴンを殺してほしければ、キリスト教を信じ、全員洗礼を受けなさい!!!」

そして王も国民も全員洗礼を受け、ドラゴンを退治。ハッピーエンド。

この話を踏まえて絵を見ると、王女の無表情さもわかる気がする…(笑)

まとめ

ウッチェロは、遠近法が大好きな画家
・当時の画家には珍しく、鮮やかな色使いでファンタジー感がある