こんにちは!
今回は、ギリシャ神話に登場する軍神マルスを解説します。
早速見ていきましょう!
マルス(アレス、マーズ)
ジャック=ルイ・ダヴィット《ヴィーナスと三美神に武器を取り上げられるマルス》1824年
ギリシャ名:アレス、ローマ名:マルス、英語名:マーズ
アトリビュート:武具
戦争、残酷さ、破壊の神です。
戦さの神マルスは嫌われ者で、嫌われるだけの性格の持ち主でした。
荒れ狂う戦さ、惨状、血を愛する彼の名から連想するのは、暴力的な死やペストです。
不吉な星の神でもあります。
嫌われ者
サンドロ・ボッティチェリ《ヴィーナスとマルス》1485年頃
マルスは忌み嫌われ、実の両親ゼウスとヘラからも、正当な1人息子であるにもかかわらず疎まれていました。
アテナが知的な戦いをするのに対して、マルスは怒りにまかせて荒々しく戦ったことから、2人はライバルで仲も悪かったそう。
彼を愛したただ1人の女性、ヴィーナス にしても、マルスの美しさ、筋肉豊かな肉体、輝く武具にしか興味がありませんでした。
2人の間には、デイモス(恐慌)とポボス(敗走)という2人の子供が生まれますが、父と同じくらい嫌われ者で、父と共に戦場へと向います。
正義のシンボル
意外にも、アテナイの司法機関であるアレオパゴスは、アレス(マルス)に由来しています。
マルスは、かつて自分の娘を犯した男を殺したため、神々が、犯行現場であるアクロポリスの向かいの丘に集まり、史上初の裁判が開かれました。
1人だけ反対者がいたものの、マルスは無罪放免となりました。
以降、アテナイ市民は全ての殺人をこの丘で裁くことにしました。
アレオパゴスは、「アレスの丘(丘=パゴス)」を意味します。
現在でもギリシャでは、アレオパゴスは最高裁判所の名称となっています。
宣誓を司る神
ディエゴ・ベラスケス《マルス》1638年頃
マルスには正義も法もなく、戦争一筋でしたが、だからこそ宣誓を司る神となったのかもしれません。
確かに不正者が最も恐れたのは、復讐と破壊と恐怖の神でした。
不倫現場をさらされる
マルスを愛していたただ1人の女性が、愛の女神ヴィーナスでした。
彼女はウルカヌスと結婚したものの、すぐに夫とは比べものにならないほどの美男マルスと不倫に走り、ついには太陽神ヘリオスに現場を押さえられてしまいます。
太陽神から妻の浮気を知らされたウルカヌスは仕返ししてやろうと、透明の網を作って、妻のベッドの上に置き、2人を捕まえて、裸でもつれあった姿のままオリュンポス12神の前にさらしました。
誰もが彼らをからかい、死ぬほどの辱めを受けた2人は別れ、人里離れた場所へ引きこもってしまいました。
3月と火曜日の語源
ギリシャでは忌み嫌われていたマルスも、ローマでは人気者です。
というのも、永遠の古都ローマを作ったロムルスとレムスの父だからです。
そのため、火曜日と3月はマルスが語源になっています。
火曜日の語源は、ラテン語の「Martis」という言葉で、意味は「マルスの日」です。
ちなみに英語の「Tuesday」は、「チュートン族の軍神の日」という意味です。(チュートン族は古代ヨーロッパに実在した部族)
また、1年の最初の月である3月(マーチ)にもマルスの名を採用しました。
かつては3月が1年の始まりだったことから、9月(セプテンバー)は9番目の月なのに7(セプト)の月と呼ばれています。
火星
真っ赤な火星はマーズ(マルス)と呼ばれています。
火星の衛星は、父に従って参戦した2人の子供にちなんでポボスとデイモスと名づけられています。
ちなみに衛星(サテライト)は、もともと「護衛」を意味しています。
天文学者たちの名づけのセンスが最高。