こんにちは!
今回は、ゾラの小説と関係のある印象派の絵についてです。
早速見ていきましょう!
ゾラの小説と印象派絵画
印象派が活躍した時代を代表する作家のひとりエミール・ゾラは、『ルーゴン=マッカール叢書』全二十巻で、第二帝政における民衆生活を活写しました。
そのうち、もっともよく知られているのは『居酒屋』と『ナナ』です。(どちらも映画化されています)
居酒屋
エドガー・ドガ《アイロンをかける女性》1869年頃
『居酒屋』はゾラ最大の出世作で、最も重版した作品です。
『居酒屋』のヒロインは、貧しい洗濯女です。
必死に働いてお金を貯め、ついに自分の店を構えるまでになるけれど、夫の怪我と元彼が転がり込んできたことで暮らしは困窮し、アルコールに逃げ場を求めて、ついに惨めな最期を遂げます。
ドガが描いたアイロンをかける女性の絵のシリーズは、『居酒屋』のヒロインを洗濯女にしようと思ったきっかけの絵だったとか。
ナナ
エドゥアール・マネ《ナナ》1877年
彼女の娘が『ナナ』です。
両親のそんな姿を見てきたナナは、華やかな生活に憧れ、美貌を武器に高級娼婦となり、次々男たちを破滅させたあげく、若くして天然痘で死んでしまいます。
制作(作品)
ポール・セザンヌ《リンゴとオレンジ》1899年頃
画家クロード・ランティエは、理想の女を描こうと苦闘するが、やがて敗れて精神を病みます。
妻のクリスティーヌに正気にもどるよう説得され一時われに返るが、自分の描いた絵の女の前で首をつり死んでしまいます。
夫の自殺を目撃したクリスティーヌは、嫉妬と驚愕のあまり発狂…。
この画家のモデルがゾラの親友でもあったセザンヌだといわれています。
そしてセザンヌはこの話に傷つき、2人は絶交したといわれています。(諸説あり)
セザンヌはリンゴの絵をたくさん描きましたが、これは中学生の時、いじめられていたゾラをかばったお礼にリンゴをもらったことが関係しているのではといわれています。
ゾラはゾラで、住み込みの小間使いを愛人にして別宅を構え、子どもまで作っており、妻の目を盗んで、最新の乗り物だった自転車で、自宅から軽快に通っていました…。(小説の内容にありそう)
生きる歓び
フィンセント・ファン・ゴッホ《開かれた聖書の静物画》1885年
主人公ポーリーヌは10歳で孤児になり、冷たく陰鬱な一家と暮らすことになります。
その家の息子と恋仲になるも別の金持ちの女と結婚してしまったり、なぜか彼らの子供の世話をしたり、ひどい仕打ちを一家や村の人々から受けながらも、前向きに明るくたくましく生きていく話です。
上のゴッホの絵では、開かれた聖書の横に、ゾラの「生きる歓び」が描かれています。
この絵を描く前に、牧師だった父親が死んでしまい、追悼の意を込めて、聖書に父親を、ゾラの小説(ゴッホにとっての聖書)に自分を重ねて描きました。
どれも暗澹たる小説なのに、大ベストセラーとなりました。
時代の様相が活写され、ああ、実にこのとおりだ、身近にこうした例がいくらでもある、と感じ入る人がおおぜいいたからでしょう。
ゾラは、写実とロマンの中に道徳的判断まで組み込もうとした前世代の作家とは異なり、「科学における実験のように人間を観察し記録した」と語っています。
現実をありのまま描く、という意味では印象派と似ていますが、しかし現実のどの局面を選んで拡大するか、という点では決定的に違いました。