マグリット「赤いモデル」全7点を紹介!赤色なんてないのになぜ?超解説!

こんにちは!

今回は、マグリットの《赤いモデル》についてです。

早速見ていきましょう!

赤いモデル

ルネ・マグリット《赤いモデル》1935年

マグリット37歳から描き始めた「赤いモデル」シリーズは、全部で7点あります。

この悪夢のような絵は、マグリットの代表作のひとつでもあります。

赤色なんてないのに?

タイトルは「赤いモデル」ですが、見て分かる通り、赤色のものなんて絵の中にはありません。

ではなぜこの題名なのでしょうか?

マグリットがパイプの絵に「これはパイプではない」と書いた絵のように、一種の言葉とイメージのお遊び的な絵だったと考えることもできます。

靴が足に、または足が靴へと変化していく様子を描いたのかもしれません。

奇妙な面白い絵です。

ルネ・マグリット《赤いモデルⅢ》1937年

ですが、「赤」そして「靴+人間の足」から何を連想しますか?

革靴といえば、動物の皮ですね(もちろん合皮もありますが)。

ということはこれは人間の皮膚でできた靴かもしれません…。

と考え始めるとぞわぞわしてきませんか?不快感…。浮き出る血管がまたなんとも気持ち悪い…。

赤色なんてないのに絵を見ていると、赤…血を感じてきます。

マグリットは鑑賞者の感覚と感情をかき乱すような作品を作りたかったのかもしれません。

エロティックな絵?

ルネ・マグリット《赤いモデルⅢ》1937年

シリーズの中で最も大きい第3作目の上の絵には、新聞の切れ端が地面に捨てられています。

さらにつま先の前に2枚のコインとタバコの吸殻も落ちています。

 

よく見ると左右反転した《巨人の時代》が描き込まれています。

ルネ・マグリット《巨人の時代》1928年

強姦を主題にしたこの作品は、野蛮な暴力性とともに、《赤いモデル》の身体性やエロティックな意味を浮かび上がらせています。

ルネ・マグリット《閨房哲学》1947年

この絵からもわかるように、靴や衣服などの身に着けるものは、身体を覆い隠すことによって、かえってエロティックさが際立ちます。

ロンドンでマグリットとディナーを共にした精神分析学者たちは、本作に対して、去勢の象徴というフロイト的な解釈を述べたといわれています。

脱ぎ捨てられた靴は、不在そのものを表し、そして不在こそが欲望を誘発します。

マグリットの解説

1938年、40歳の誕生日の1日前にアントウェルペンで行った「生命線」と題する講演の中で、この作品についてマグリットは次のように語っています。

「靴の問題は、最も野蛮な習慣でも、習慣の力によって、まったく礼儀にかなったものと認められるようになることを、 はっきりと示しています。《赤いモデル》のおかげで、人間の足と革靴との結合が、じつに怪物的な習慣にほかならないことを感じることができます」

全7点を紹介

ルネ・マグリット《赤いモデル》1935年

ルネ・マグリット《赤いモデル》1935年

この絵はアンドレ・ブルトンの著作『シュルレアリスムと絵画』第2版(ブレンターノ版)の表紙に使われており、シュルレアリスム絵画の代表作として知られるようになりました。

この版は、ブルトンのアメリカ亡命時代の1945年にニューヨークで出版されたものです。 

著者晩年の1965年に、大幅に増補された新版がパリのガリマール書店から出版されるまで、広く読まれていました。

ルネ・マグリット《赤いモデルⅢ》1937年

本作は縦183cmと、マグリットの作品としては大きな部類です。

これは、イギリスの詩人で、シュルレアリスムの有力なパトロンだった富豪のエドワード・ジェイムズの依頼により、彼のロンドンの邸宅の舞踏室を飾るために描かれた3枚のうちの1枚でした。 

マグリットは、1937年2月12日から3月19日までの約5週間、ロンドンのジェイムズ邸に滞在し、この壁面を飾る連作を制作しました。

ルネ・マグリット《赤いモデル》1947年

ルネ・マグリット《赤いモデル》1948年

ルネ・マグリット《赤いモデル》1952年

ルネ・マグリット《赤いモデル》1953年