マザッチョ「聖母子と天使」を超解説!幻の「ピサの祭壇画」とは?

こんにちは!

今回は、マザッチョの《ピサの祭壇画》の《聖母子と天使》を解説します。

早速見ていきましょう!

ピサの祭壇画

マザッチョ《ピサの祭壇画》予想図 1426年

《ピサの祭壇画》は、マザッチョ24歳のとき、ピサのサンタ・マリア・デル・カルミネ教会に付属する、コリーニョ一族専用の礼拝堂のためにジュリアーノ・ディ・コリーニョが発注した多翼祭壇画(ポリプティック)です。

もともとは20枚以上の絵が組み合わさっていたと考えられています。

しかし、17世紀に礼拝堂から取り払われ、分解され、各地へと散らばり、現存するのは11枚のみです。

多くの美術史家が、ヴァザーリの著作の記述をもとにして《ピサの祭壇画》のオリジナルの構成がどのようなものであったのかの仮説を立てています。

聖母子と天使

マザッチョ《聖母子と天使》1426年

この絵は、4枚以上の絵からなる祭壇画の1枚で、マザッチョと弟の合作だと考えられています。

この作品の保存状態は極めて悪く、さらにオリジナルの状態よりもパネルのサイズが小さくなっており、おそらく左右は8cm、上下は2.5cm程度切落とされたと考えられています。

聖母マリア

 

慈愛を表す赤いドレスと、天の真実を表す青いマントをまとった聖母マリアが描かれています。

青色は、高価な顔料ウルトラマリンを使用しています。

マザッチョは、聖母を普通の容貌の女性として描いていますが、王座の中で安定した三角形を形作り、威厳を漂わせています。

中世では、神の栄光を表す際に、の背景が使われ、この絵でも金箔が用いられています。

しかし、中世との違いとして、左からの1つの光源で陰影をつけ、ルネサンスの天才彫刻家ドナテッロの影響で、聖母子は彫刻的に量感をもって描くことで立体感を表現し、聖母子や天使たちを生命力に満ちた現実の肉体を持つ存在として描き出しています。

イエスとぶどう

 

聖母マリアが手に持ち、幼子イエスが頬張っているのはぶどうです。

ぶどうはぶどう酒を表し、イエスが十字架の上で流す血と共に、聖母がイエスの死を予見していることを暗示しています。

建築的な王座

 

3タイプの古代ローマ建築の柱が取り入れられたどっしりした石造りの王座が描かれています。

後退する線によって、奥に広がる空間を自然に感じ取ることができます。

台座の波模様は、ローマ時代の石棺をまねたもので、聖母マリアに抱かれたイエスの死を暗示しています。

マザッチョと親友だった建築家で彫刻家のブルネレスキの発明した遠近法が用いられており、後退する線をたどると、消失点はイエスの右足の先にあります。

短縮法

 

キリストの光輪や、

 

右の天使の持つリュートに、短縮法が用いられています。

これは、遠くのものほど小さく見えるという視覚の原理に基づく高度な遠近法で、難しい角度のものを描く際に使われます。

天使たちが悲しげな表情をしているのは、磔刑という宿命に導かれる我が子を憂える聖母の心情を思っているからです。