こんにちは!
今回は、鳥獣戯画について解説します。
早速見ていきましょう!
目次
鳥獣戯画
日本最古のマンガ?
『鳥獣戯画』(正式名称は『鳥獣人物戯画』)は、今から800年以上前、平安時代に描かれたもので、日本に残っている絵巻物の中で、最も古いものの一つです。
とても貴重なもので、国宝にも指定されています。
「鳥獣」とは、鳥やけものなどの身近な動物のこと、「戯画」とは、面白おかしく描いた絵という意味です。
『鳥獣戯画』には、「詞書(ことばがき)」という文章がないので、どういう物語なのか、はっきりとはわかっていませんが、うさぎやかえるなどが当時の祭りのマネをしたりする様子が描かれています。
全4巻
甲(こう):鳥獣戯画といえばコレ
うさぎやさるの水遊びや、うさぎとかえるの相撲や、動物たちの祭りなど、動物たちが人のマネをしている姿が描かれています。
乙(おつ):16種類の動物
甲巻とは違い、本来の動物らしい姿が描かれています。
日本にいた動物(馬、牛、鷹、犬、にわとり、鷲、はやぶさ、やぎ)だけでなく、当時、日本にはいなかった動物(ヒョウ、虎、獅子(ライオン)、象、バク)や、空想上の動物(玄武、麒麟、青龍)も描かれています。
乙巻は、動物を描くときの手本か、寺で子供たちが学ぶときに使われた動物図鑑だったのではないかと考えられています。
丙(へい):昔の遊び
丙巻は、線の太さや描き方から、甲・乙巻とは違う人が描いたと考えられています。
描かれた時代も鎌倉時代だといわれています。
人が遊ぶ様子が描かれた前半と、動物が遊ぶ様子が描かれた後半とでわかれています。
これ、実は表裏に描いてあったものを、あるときに剥がしてつなげたことがわかっています。
なので、前半と後半で内容が全く違うんだそう。
前半は、お坊さんが将棋や盤双六(ばんすごろく)、にらめっこ、首引きや腰引きなどの遊びをしています。
後半は、甲巻のように人間っぽい動物が描かれていますが、目つきが鋭く描かれており、雰囲気が違います。
前半の流れから突然動物の場面になるため、もともと別々の絵巻物をひとつにつなげたのでは?ともいわれています。
丁(てい):ギャグ漫画
絵の雰囲気からして異色な丁巻は、いろんな「人」が描かれており、ギャグ漫画のような世界が広がっています。
勝負をする場面が多く描かれています。
さらに、甲巻の絵と似たようなシチュエーションの絵を描くことで、笑いをさそっています。
例えば、甲巻ではさるのお坊さんが仏ではなくかえるに手を合わせていましたが、丁巻では人のお坊さんがかえるのガイコツに手を合わせています。
甲乙丙丁ってなに?
絵巻物は3巻セットの場合は「上・中・下」、4巻セットのときは「甲・乙・丙・丁」を使います。
順番を表す数字のようなものです。
何のために描かれたもの?
何のために描かれたのか、いまだによくわかっていませんが、寺の子供たちに行事を教えるために作られたと考えられています。
というのも、この時代、貴族の家に生まれた男の子は、6、7歳から14、15歳まで寺に預けられ、お坊さんの手伝いをしながら教育を受けていました。
その子供たちに、宮中で行われる様々な「年中行事」を教えたり、娯楽として『鳥獣戯画』が作られたのかもしれません。
いつ描かれたの?
甲・乙巻は平安時代の終わり頃の12世紀、丙・丁巻は鎌倉時代の13世紀です。
甲・乙巻が作られた時代は、大雨や地震、雷などの自然災害が起こると、それは権力争いに敗れて亡くなった人の怨霊のせいだと考えられていました。
そのため、霊を丁寧におまつりする「御霊会(ごりょうえ)」を行うことが、朝廷にとって大切なことでした。
12世紀に絵巻物が多く作られたのは、芸術が大好きだった後白河法皇の影響と考えられています。
『鳥獣戯画』は、祭りや芸能が盛り上がっていた時代に描かれた作品でした。
作者不明?
絵にサインがないため、作者が誰なのかわかっていません。
絵の雰囲気や描き方から、甲・乙巻を描いた人、丙巻を描いた人、丁巻を描いた人と、少なくとも3人はいると考えられています。
作者については主に3つの説があります。
一つ目の説は、天皇や貴族などの位の高い人のために絵を描く「宮廷絵師」です。
後白河法皇の命令で宮廷絵師が描いた『年中行事絵巻』と『鳥獣戯画』にはよく似たシーンが登場します。
二つ目の説は、「絵仏師」です。
『鳥獣戯画』は高山寺という寺が所蔵していることから、仏画を描く絵仏師が描いたと考えることもできます。
三つ目の説は、「鳥羽僧正」という仏教の天台宗という宗派の高い位についていたお坊さんです。
彼は、絵がとても上手だったといわれており、ユーモアあふれる絵を描いていたそう。
色がついていないのはどうして?
他の絵巻物は、岩絵の具などで色が付けられているのに対し、『鳥獣戯画』は、墨の線だけで描かれています。
墨の線の細い太いだけで表現する方法は、密教の教えを描く「白描図像(はくびょうずぞう)」でも見られます。
また、面白い絵という意味の「おこ絵」も色なしのものがあります。
みんなの見ている前で素早く描いて、楽しませたのではないかといわれています。
『鳥獣戯画』もささっと描いたので色をつけなかったのかもしれません。