こんにちは!
今回は、セイレーンについです。
早速見ていきましょう!
セイレーン
フレデリック・レイトン《漁夫とセイレーン》1856-1858年
セイレーンは、ギリシャ神話に登場する海の怪物です。
死のメロディ
エドワード・アーミティジ《セイレーン》1888年
彼女たちは口を開けて描かれていることが多いです。
語りかけているのではなく、歌をうたっています。
ギュスターヴ・モロー《セイレーンたち》1885年頃
彼女たちはその美しい歌声で、船乗りたちを没我状態にし、死んでもかまわないという気持ちにさせ、海へ飛び込ませて溺れさせたり、船を岩礁へ衝突させます。
ウィリアム・エッティ《セイレーンたちとユリシーズ》1837年
歌声に魅惑された挙句セイレーンに喰い殺された船人たちの骨は、島に山をなしたとか…(人間を食べたのかどうかは諸説あり)。
セイレーンは、現代のパトカーや救急車のサイレンの語源となっています。
不安や怯えを感じさせるあの音の語源がセイレーンだと思うと面白いですね。
有名な2つのストーリー
セイレーンの登場する有名なギリシャ神話が2つあります。
セイレーンvsオルフェウス
アルゴ探検隊の船(金羊毛を求めて探検する話。船員には怪力のヘラクレスなどもいた)がセイレーンの岩礁に近づいたとき、
同乗していたオルフェウス(冥界の王ハデスの心さえ動かしたほどの竪琴の名手)が竪琴を演奏し、漕ぎ手はセイレーンの歌声より彼の音楽に耳を傾け、 難所を乗り切ることができました。
セイレーンvsオデュッセウス
ハーバート・ジェームズ・ドレイパー《ユリシーズとセイレーンたち》1909年頃
トロイア戦争から帰途中のオデュッセウス(ユリシーズ)は、セイレーンの歌を聞いて楽しみたいと思い、船員には蜜蝋で耳栓をさせ、自身をマストに縛り付け決して解かないよう船員に命じ、この場をくぐり抜けました。
レオン・ベリー《セイレーンたちとユリシーズ》1867年
マリー=フランソワ・フィルマン=ジラール《ユリシーズとセイレーンたち》1868年頃
本当は鳥女
ギュスターヴ・アドルフ・モッサ《飽食のセイレーン》1905年
古代ギリシャのセイレーンは、2〜7人姉妹(人数は諸説あり)で、首から上が女、胸からは鳥という「鳥女」でした。
だから彼女たちは鳥のように歌います。
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《オデュッセウスとセイレーンたち》1891年
船はいくつもの無人島が重なる、見るからに難所といった狭い海路を通り抜けるところです。
どこからともなくやってきたセイレーンたちが、船べりに止まって歌っています。
これほど巨大だと顔が人間でなくても十分怖いのに、皆似た無表情の白い顔の女性でさらに恐怖感が増します。
ぐにゃりと曲がった鉤爪の肢はひどく老いて邪悪な印象で、不気味さをいっそう増幅させます。
美しい人魚へ
シャルル・ランデル《セイレーン》1879年
ギリシャ語の「鳥の翼」という単語が、複数形になると「魚のヒレ」と同音だからなのか、いつしかセイレーンの姿は、上半身が美女、下半身が魚の人魚型になっていきました。
ちなみに人魚で尾が二股説もあり、スターバックスコーヒーのロゴはそのセイレーンがモデルです。
ヘンリエッタ・レイ《セイレーンたち》1903年
とはいえ画家は(そして絵の注文主は)、セイレーンを女性の全身ヌードを描く口実にもしていました。
様々な画家が描いたセイレーン
エドワード・ポインター《セイレーン》1864年
エドワード・バーン=ジョーンズ《セイレーン》1875年
グスタフ・ヴェルトハイマー《セイレーンの口づけ》1882年
ジュリオ・アリスティド・サルトリオ《セイレーン》1893年
ギュスターヴ・モロー《詩人とセイレーン》1893年
フェリックス・ジアン《セイレーンたちの呼び声》19世紀
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《セイレーン》1900年
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《人魚》1900年
パウル・クレー《セイレーンの卵》1939年
ポール・デルヴォー《人魚の村》1942年
ポール・デルヴォー《偉大なるセイレーンたち》1947年
パブロ・ピカソ《オデュッセウスとセイレーンたち》1947年
セイレーンとローレライの違い
フレデリック・チャイルド・ハッサム《ローレライ》1904年
「人魚」と聞いてセイレーン以外に思い出すのは、中世ドイツに伝わる「ローライ伝説」。
ローレライは、ドイツにある高さ約130mの岩山で、ライン川の一番の難所です。
ここで水の精が舟人たちを美声で惑わせて、多くの事故を引き起こしたとか…。
諸説ありますが、その姿は美しい人魚とされることが多く、セイレーンの一種だったのかもしれません。