こんにちは!
今回は、フェルメールの《レースを編む女》についてです。
早速見ていきましょう!
レースを編む女
ヨハネス・フェルメール《レースを編む女》1669年
若い女性がレース編みに集中しています。
彼女は自分の作業に完全に夢中になっていて、鑑賞者に見られていることには気づきそうにありません。
本作は、フェルメール作品の中でも最小クラスの作品で、24×21㎝しかありません。
また、ルノワールとゴッホが賞賛した作品です。
お金持ちのお嬢様
女性は、ボビンレースの糸を見下ろしています。
衣服やファッショナブルな髪型から、かなりの富裕層の女性だと考えられます。
顔の片側と黄色いジャケットや作業台には、柔らかな光が当たっています。
フェルメールは、明るい色の部分と暗い色の部分を隣同士に置くことで、彼女の姿に立体感を与えています。
ボビンレース
17世紀のオランダに住む女性にとって、レース編みは大切な日常の仕事の一つでした。
そのため、風俗画として他の画家も多く描いたテーマでした。
時間がかかるレース編みに集中している=悪徳に染まる機会が多い外出を控え、家事に集中する女性として「美徳」を表しています。
レースの型紙
女性の手は平らな淡いブルーのボビンレース用クッションに置かれています。
クッションの上にはサーモンピンク色の「レースの型紙」が敷かれています。
この羊皮紙の型紙に複数のピンが刺されており、レースの模様を作るための枠組の機能を果たしています。
手
フェルメールは描き始める前に、作業中の女性の手を注意深く観察したのでしょう。
レースを編む際の指の動きが、きわめて正確に描写されています。
彼女は左手の親指、人差し指、中指の間に2本のボビンを持ち、2 本の糸を引いています。
またこの2本の糸は、クッションから液体のように流れ出ている糸とは対照的にはっきりした線で描かれています。
手首と手のひらの端を台に乗せることで安定感を増しています。
さらに左手の小指の動きは、とても現実的です。
糸の張り具合を調節するために、小指がわずかに上がっています。
レース制作用のテーブル
女性が作業をしているテーブルは、ボビンレースの制作用に作られたものです。
テーブルの高さは調節可能で、作業しやすくするために天板を傾けられるようになっています。
レースの襟
この絵にはレース作品の例が描かれており、女性の黄色いジャケットには繊細なレースの襟飾りが付いています。
フェルメールは襟飾りが女性の肩から少し上がるように描いているため、鑑賞者からはレースを通じて黄色いジャケットだけでなく背景の壁も見えます。
それによって、レースの透過性と、極めて薄く柔らかい繊細な構造がさらに強調されています。
何の本?
小さな本は、2 本の青いリボンで結ばれて閉じられています。
レースを制作する女性の姿は、家庭の美徳という意味と結び付けられてきました。
そのため、この本は小さな聖書か祈祷書かもしれません。
もしくは、レースのデザインのヒントになるパターンが記載された本かもしれません。
クッション型裁縫箱
房飾りの付いたクッション(裁縫道具入れ)が置かれています。
このタイプのクッションには蝶番が付いていて開くようになっています。
クッションなので、布を張って綿が詰められています。
ボビンや他の裁縫用品を収納するために使われていました。
絨毯
フェルメールの他の作品《天文学者》など複数の作品で、同じ絨毯が描かれています。
大抵の場合、絨毯の模様はぼやけています。
絨毯は、クッションから流れ落ちる糸とともに焦点が合っていません。
それによって、鑑賞者の眼は、はっきりと描写された女性の勤勉な手元やボビンへと向かいます。
消えかけのサイン
女性の背後の壁にはフェルメールのサインの一部が残っています。
ある時点で、この作品の絵の具がキャンバスからパネルに移されました。
その過程でサインの一部が失われてしまったようです。
しかし、絵の具が塗られていても、キャンバスの織り目ははっきりとわかります。