こんにちは!
今回は、フェルメールの《ワイングラスを持つ娘》についてです。
早速見ていきましょう!
目次
ワイングラスを持つ娘
ヨハネス・フェルメール《ワイングラスを持つ娘》1658-1659年
室内でワインを飲む男女が描かれています。
笑顔の女性
部屋の中で若い女性が椅子に座り、ワインを勧める男性の視線を避けるように、こちらを向いて微笑んでいます。
女性が誘惑されているのか、あるいは優位に立っているのか、フェルメールはその答えを絵の中で明らかにはしていないため、どう考えるかは鑑賞者に委ねられています。
ワインの意味
彼女は、まるで乾杯をするような様子でワインの入ったグラスを手にしています。
ワインは「誘惑」を象徴することもあります。
特別な日に着る高級なドレス
絵の中の女性は高価なシルクのドレスを身にまとっています。
当時、このようなドレスを持っていたのは上流階級の女性だけでした。
そして特別な機会にのみ、こうしたドレスを着用しました。
きつい胴着を身に付けているため、女性の姿勢は上半身が真っ直ぐになっています。
当時のコルセットは着心地が悪かったはずです…。
言い寄る紳士
横にいる紳士は、女性の持っているワインを飲むよう女性を促しているかのように見えます。
お目付け役?断られた男?
もう 1 人の人物は部屋の向こう側の隅で居眠りしています。
彼はお目付け役としてここにやって来たのでしょうか。
それとも彼女にすでに断られてふてくされているのでしょうか。
「紳士とワインを飲む女」の進化版
ヨハネス・フェルメール《紳士とワインを飲む女》1658-1660年頃
本作は、上の絵と多くの共通点があります。
キャンバスを縦に使い、サイズも同じ寸法です。
そのため本作は、以前に描いた《紳士とワインを飲む女》の画面構成を変更、改善した作品だと言われています。
本作では、若い女性に主題としての視線が集まるようになっています。
柔らかい昼の光がきらめく雰囲気が一層強まっており、フェルメールは非常に滑らかなタッチでこの作品を仕上げています。
下地にも高価なウルトラマリンを使用
赤、青、黄色といった鮮やかな原色が多用される中に、朱色の豪華なドレスが描かれています。
またフェルメールは、この絵の大部分、下地にさえも高価な群青の顔料をいっぱいに塗り込めて、光と多様な影の対比を華麗に表現しています。
ステンドグラスの意味
窓のステンドグラスには、赤、青、黄色といった色が使われて紋章を持つ女性が描かれています。
これらの色は、絵全体で使われている色を反映しています。
同じ窓がベルリンにあるフェルメールの絵画『紳士とワインを飲む女』にも描かれています。
クリスペイン・デ・パッセ、ガブリエル・ロレンハーゲン《『選ばれたエンブレム』節制》1613-1614年
これまで、この窓に描かれている女性は、ガブリエル・ロレンハーゲンなどの寓意画集にも登場するくつわ(馬を操る馬具、手綱をつけるための金具)を持った「節制(謙虚さ)」の擬人化だと解釈されていました。
しかし、その後の詳しい研究によって、そうではないことが明らかになりました。
このモチーフは、当時の家屋でよく見られた単なる紋章でした。
とはいえ、「節制」を暗示する意味合いはこのくつわに残されています。
この窓枠の右下に、フェルメールの署名が残されています。
何の絵?
部屋の奥には、服装から1620〜1630年頃に描かれたと思われるこの女性の祖先の肖像画が、壁にかかっており、女性が裕福で由緒ある家柄の出身であることを示唆しています。
レモンの意味
銀の盆の上にあるレモンなどの卓上の静物も、豊かな家庭であることを示すアイテムです。
この時代、レモンはワインに味を添える香り付けとして使用されていました。
また、謙虚さの象徴あるいは不道徳な行動に対する警告という意味合いを持つものとして、レモンが描かれることもありました。
光と影と色
白い陶器の水差しとナプキンを見ると、フェルメールが色をどのように操っていたかを知ることができます。
彼の描く影の部分は本当に色彩豊かで、ここではウルトラマリンブルーが使用されてます。
水差しの影のグラデーションなんか本当にきれい…。
フェルメールは、自然光の中で見る者の目に映る色の反射をこうした技法によって表現しました。
女性のドレスの袖の左右のレースを比較すると、一方が青い色合いで塗られているのに対して、もう片方は黄色い色合いであることがわかります。
これは、同一の素材であっても異なる色が反射することを示しています。
フェルメールはハイライトに白、青、黄色の小さな点を使っています。
こうした点は、本物の真珠のように立体的に描かれています。
カメラ オブスクラ(ピンホール式の投影機)を通して物を見た際に、このような効果を発見したのかもしれません
玄関によく使われたタイル
幾何学的な規則性をもって描かれた床のタイルは、室内の片隅であっても空間の奥行きを感じさせるものとなっています。
実際には、このような床のタイルはオランダの家の玄関によく使われていました。
快適で暖かい雰囲気を生み出すため、リビングやダイニングルームでは木の床のほうが好まれていました。