こんにちは!
今回は、クロード・ロランの「シバの女王の乗船」を解説します。
早速見ていきましょう!
シバの女王の乗船
クロード・ロラン《シバの女王の乗船》1648年
シバの女王って何者?
シバの女王は『旧約聖書』、『コーラン』、およびエチオピアの歴史の中で言及される古代の王国シバの支配者です。
その王国は、考古学によって現在のエチオピアとイエメンの領域に位置していたと推定されています。
『旧約聖書』によると、聡明なソロモン王の噂を聞きつけた女王は、イスラエルを訪問して王に面会し、様々な難問で王の知恵を試そうと考えました。
そこで女王は従者を従え、莫大な財宝と香料を携えてやって来ましたが、ソロモン王に答えられないものはありませんでした。
エチオピアの伝説によると、シバの女王は王の知恵と富に感銘を受けて一神教に改宗しました。
また女王はイスラエルに長期滞在し、ソロモンとの間に子供が生まれたと伝えられています。
絵の解説
クロード・ロランは、イスラエル王ソロモンを訪問するために出発しようとしているシバの女王を描いています。
早朝の太陽が海を照らす中、女王は古典的建築物に囲まれた港を出発しようとしています。
女王は侍女たちを従えて階段を下りて行き、ガレオン船に乗船するために待機させているボートに乗り込もうとしています。
女王は赤のチュニック、ロイヤルブルーのマント、金色の王冠を身に着けています。
『旧約聖書』によると、女王は莫大な金品と香料をイスラエルにもたらしたとあり、女王に従う侍女たちはそうしたダビデ王への贈物を手に持っています。
その光景を市民のある者は立ち、ある者は階段に座り、あるいはもたれかかりながら見ています。
また船乗りたちがイスラエルに運ぶ積み荷を荷揚げする一方、海上で停泊しているガレオン船上では忙しげに出航の準備を進めています。
空では飛んでいる鳥の群れが眺望できます。
通常、この主題で描かれるのはシバの女王とソロモン王が出会う場面であり、イスラエルに出発する女王を描いたロランの選択は図像学的に珍しいものでした。
構図は遠近法の線(階段)と強い垂直線(画面の右側の建物の柱廊の列)の交点で、右側の階段にいる人々のグループに目を向けさせます。
画面右下隅の最後の階段に、ブイヨン公フレデリックの名前が刻まれています。(彼は絵の発注者ではありませんが、この絵を購入した人物です)
構図においてロランはルプソワールと呼ばれる技法、地平線の奥行きの空間回帰の感覚を与えるレイヤーを描く方法を使用しました。
太陽の光と周囲の建築物の暗さのコントラストはまた空に深みを与える効果を引き起こしています。
色調を微調整するアーティストの熟練した技術はこの奥行き感を巧みに実現しており、絵画の空間が後退するにつれて色をより涼しい色調に段階的に変化させています。
黄土色の黄色とチタンホワイトのグラデーションで実現された夜明けの黄金色の輝きや、藍色と黄土色を組み合わせた海の配色も美しく、緑がかった色調で水面の光の反射を完全に捉えています。