こんにちは!
今回は、グレコの《聖衣剥奪》を解説します。
早速見ていきましょう!
聖衣剥奪
エル・グレコ《聖衣剥奪》1577-1579年
1577年、スペインのカトリックの大本山、トレド大聖堂の依頼を受けて、38歳のとき描いた作品です。
ここの司祭長の息子と親友だったため、注文を受けることができました。
今まさに十字架に架けられようとしているイエスの姿が描かれています。
聖衣剥奪とは?
聖衣とは、イエスが着ていた衣のことで、イエスが十字架に磔にされる前に、ローマ兵たちがイエスの衣をはぎ取り、奪い合ったという逸話が描かれています。
イエスは、血の象徴である深紅の聖衣を着ています。
男が十字架の準備をしています。
聖母マリアは、聖書だとイエスが十字架に架けられた後に登場しますが、グレコは、イエスが逮捕され聖衣をはぎとられる場面にあえて描きました。(異端的だと後に問題に…)
問題に
グレコ渾身の大作でしたが、トレド大聖堂からは、宗教的に問題があるとして受け取り拒否されてしまいます。
トレド大聖堂が問題視したのは、イエスの頭の位置でした。
トレド大聖堂は、スペインのカトリック教会で最も格式高い大聖堂でした。
そのため、グレコの描いたイエスの頭の位置が、周りの人々よりもずっと低い場所にあるのは、イエスに対する冒涜だと強く主張しました。
グレコ以前の宗教画では、イエスの頭の位置は、周囲の人々より高く、人々がイエスを見上げる構成が当たり前でした。
グレコは、宗教画の常識よりも、芸術的意義を優先させました。
こう描くことで何が違うのかというと、イエスの周囲を人々が取り囲むことで、静かなイエスと、周りの騒がしい愚かな兵士とのコントラストが強調されています。
さらに、人々の中にイエスを埋没させつつも、表情やポーズ、目線によって、イエスがいかに周りの人々とは違って聖なる存在なのかを強調しています。
決着
トレド大聖堂とは作品の受け取りをめぐって訴訟を起こしたりと2年間争い、結局当初グレコが提示していた額の約3分の1が支払われました。
ではこの3分の1の額が少ないのかというとそういうわけでもなく、当時としては最高額の350ドゥカード(約300万円)でした。