こんにちは!
今回は、マザッチョの《サン・ジョヴェナーレ三連祭壇画》を解説します。
早速見ていきましょう!
サン・ジョヴェナーレ三連祭壇画
マザッチョ《サン・ジョヴェナーレ三連祭壇画》1422年
中世のキリスト教世界では、裸は恥ずべきものだったため、普通イエスは衣服を着た姿で描かれていました。
なんと最初にイエスを裸で描いたのはマザッチョでした。
この絵でも遠近法を使用しており、椅子の縁に沿って線を伸ばしていくと、マリアの顎で1点に交わります。
絵の下にローマ数字で「1422年4月23日」と記されていますが、1422年は、マザッチョが画家の組合に登録した年でした。
幻の祭壇画
1961年、現存する作品数の少ない画家マザッチョの初期作品が発見されました。
発見者は、のちに「伝説のキュレーター」といわれるルチアーノ・ベルティでした。
当時39歳だったベルティは、あるフレスコ画の調査に出かけたとき、偶然、サン・ジョヴェナーレ教会という小さな教会を教えられます。
そこには、無名の画家の作品と伝えられる祭壇画が飾られていましたが、それをひと目見たベルティは、マザッチョの作品ではないかと考えました。
ベルティは、マザッチョの幻の絵が発見されたという論文を書き、世界中の美術関係者に衝撃を与えました。
聖書の文字
そして、その発見から40年後の2001年に、別の調査で、この絵が改めてマザッチョの真作であることが確認されました。
どうやって真作だと判断したのかというと…
フィレンツェ国立文書館には、マザッチョ本人しか残せないものが保管されています。
それは直筆で書かれた1427年の不動産申告書です。
古文書研究家で筆跡鑑定の大家であるルチッラ・チュリッチが、祭壇画の中にある、聖書のページに、毎日の礼拝で歌われる「ダビデの歌」が手書きで書き写されていたことから、作者の字の癖を読みとりました。
チュリッチは直筆の申告書に注目すると、絵の中の書き文字との癖の一致が100箇所以上確認できるとし、その類似性から、この祭壇画をマザッチョの真作であることを証明しました。
絵にサインは残していませんでしたが、マザッチョが本に文字をしっかり書き込んでいたことから、実質的にサインをしたのと同じことになりました。