マグリットの広告デザイナー時代を超解説!

こんにちは!

今回は、マグリットが手がけた商業デザインを紹介します!

早速見ていきましょう!

マグリットと広告デザイン

フリーランスのデザイナー

ルネ・マグリット《楽譜表紙「アリータ」》1925年

1924年2月、約2年続けた壁紙工場のデザイナーの仕事を辞め、マグリットはフリーランスの商業デザイナーになりました。

主な仕事は、雑誌の広告やポスター、楽譜の表紙のデザインでした。

この時期の商業デザインの作品は、アール・デコ的なスタイルで描かれています。

ルネ・マグリット《空の鳥》1966年

しかし、マグリットの絵画作品がシュルレアリスムに変わっていくと、デザインの仕事も、コラージュや、マネキンやビルボケのモチーフを使ってみたりとシュルレアリスムっぽくなっていきました。

マグリットは商業デザインの仕事をしたかったわけではなく、生計を立てるためにしていました。

なので、画廊との契約があったときにはデザインの仕事はしておらず、逆にデザインの仕事をする必要があったときには、絵をあまり描いていません。

弟とデザイン事務所を開く

ルネ・マグリット《トフィー・アントワーヌ・トニーズ》1931年

画廊からの支援が途絶えてパリから帰国した時、弟ポールとともに「スタジオ・ドンゴ」という名のデザイン事務所を開いて、デザインの仕事を再開したのも、絵が売れなくて、そうしないとお金が稼げなかったからです。

とはいえ、商業デザインの仕事は、マグリットの絵画にも影響を与えました。

絵画の中に文字を入れてみたり、対象物や主題を表すのに大切な描画スタイルや画面構成などは商業デザインの影響でしょう。

逆に、マグリットのイメージを使ったりパロディにした広告などの商業デザインが頻繁に見られることからも、マグリットの作品がいかに商業デザイン寄りかがわかります。

マグリットがデザインした広告

初広告はスープ

ルネ・マグリット《強い兵隊さんになるために》1918年

上のポスターは、現在わかっているなかで一番最初のマグリットの商業ポスターです。

スープカップを持った少年と「強い兵隊さんになるために……僕はデルベのポトフを飲みます」というコピーがつけられています。

ルネ・マグリット《蝶々婦人のポスター》1919年

ルネ・マグリット《ポスター》1919年

メビス?という友人のために描いたポスターのようですが、筆記体がどうしても読めない…。

なんのポスターか分かり次第追記します。

高級ブランド

ルネ・マグリット《楽譜表紙「ノリーヌ・ブルース」》1925年

マグリットは、ブリュッセルのオートクチュール・ブランド「ノリーヌ」の広告の仕事を多数手がけました。

ルネ・マグリット《ノリーヌの広告》1925年

マグリットがデザインした高級ブランド「ノリーヌ」の広告を紹介!

2022.12.12

ルネ・マグリット《宝石商・金細工職人 マックス・ケレルズの広告》

ルネ・マグリット《レストラン「ラーヴェンシュタイン」の広告》

ルネ・マグリット《本屋「ラウル・サイモンソン」の広告》

「希少な古書・近代書、現代作家の原稿・自筆譜、初版本、図版の購入。一般販売の組織化。鑑定を行う。」と書いてあります。

カタログがもはやシュルレアリスム作品

ルネ・マグリット《「サミュエル カタログ」》1927年秋

ブリュッセルの毛皮店「メゾン・サミュエル」で、1928年に販売する豪華な毛皮のコートを紹介したカタログです。

マグリットはここのカタログを2回制作しています。

イラストだけでなく編集全般を任せられていました。

ルネ・マグリット《「サミュエル カタログ」》1927年秋

カタログ自体がシュルレアリスム作品となっています。

ルネ・マグリット《ラ・メゾン・サミュエル》1927年冬

2度目の仕事の冬物のカタログでは、見開きページの左にポール・ヌジェの詩的なテキスト、右にイラストを配置しました。

イラストで毛皮をまとうのは女性だけではなく、ビルボケなどのオブジェも登場し、コラージュされた奇妙な世界の中に佇んでいます。

たくさんの「らしくない」楽譜

ルネ・マグリット《楽譜表紙「何もない…」》1925年

マグリットは、1920年代に約40枚の楽譜の表紙をデザインしました。

カラフルなアールデコスタイルで描かれており、マグリットっぽくなさすぎてびっくりするのではないでしょうか?

マグリットがデザインした楽譜を一挙紹介!

2022.12.07

歌姫のポスター

ルネ・マグリット《プリムヴェール》1926年

上の作品は、ブリュッセルのミュージック・ホールで歌っていた歌手プリムヴェールのためのポスターです。

「桜草」の名を持つ歌姫の艶姿を、前景右端に配されたカーテンで一部隠しつつ露わにすることで、効果的に見せています。

緑と赤という補色の組み合わせが鮮烈です。

スタジオ・ドンゴ

ルネ・マグリット《トフィー・アントワーヌ・トニーズ》1931年

この広告は、マグリットが弟のポールと立ち上げたデザイン事務所スタジオ・ドンゴで制作したものです。

ルネ・マグリット《ジョルジェット》1934年

ベルギーのタバコブランド「ベルガ」の広告プロジェクトで描いた絵で、モデルはマグリットの妻です。

ルネ・マグリット《ベルガのポスター》1935年

こちらはスタジオ・ドンゴとして制作したものです。

ベルガは残念ながら2014年に終了してしまいました。

ルネ・マグリット《蒸留所ルクソール、エリクサー》1936年頃

どうタイトルを付ければいいのかわかりませんが(笑)、ポスターの内容を見るにブリュッセルの蒸留所ルクソールから出ているエリクサーという名前のアドヴォカートというリキュールの広告ポスターのようです。

エリクサーは、錬金術で飲めば不老不死になれると伝えられる霊薬のことで、エリクシールとも言います。

資生堂のエイジングケアブランドの名前も「エリクシール」ですね。

アドヴォカートというのは、卵黄・香りのよいスピリッツ・砂糖・ブランデー・少量のバニラが入っている黄色い濃厚なクリーム状のリキュールです。

フランス語がわからないので「SUS」がなんなのかよくわかりませんでしたが、「上」という意味っぽいので、最上のアドヴォカートだよ!ということでしょうか。

「選択の余地はありません…」というコピー付き。

ルネ・マグリット《「ベルギーの繊維労働者センター(9月18日祝)」のポスタープロジェクト》1938年

ルネ・マグリット《「ベルギーの繊維労働者センター(労働時間を短縮するため)」のポスタープロジェクト》1938年

ルネ・マグリット《「ベルギーの繊維労働者センター」のポスタープロジェクト》1938年

ルネ・マグリット《「ベルギーの繊維労働者センター」のポスタープロジェクト》1938年

ルネ・マグリット《「ベルギーの繊維労働者センター」のポスタープロジェクト》1938年

ルネ・マグリット《「シュルレアリスム」展ポスター》1945年

ブリュッセルのラ・ボエティ出版社で開催された展覧会のポスターです。

香水

ルネ・マグリット《メムのエキサイティングな香水のポスター》1946年

ルネ・マグリット《メムのエキサイティングな香水「嵐の夜」のポスター》1946年

ルネ・マグリット《世界映画芸術祭(ブリュッセル1947年6月1〜30日)》1947年

ルネ・マグリット《第2回ベルギー世界映画芸術祭(クノック・ル・ズート1949年6月18日〜7月10日)》1949年

マルドロールの歌

ルネ・マグリット《ロートレアモン伯爵 (イジドール・デュカス)「マルドロールの歌」の表紙》1948年

この本は知らなくても、「解剖台の上での、ミシンと雨傘との偶発的な出会い(のように美しい)」という言葉は、シュルレアリスム好きの方ならどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。

ブルトンを初めとするシュルレアリストたちに大きな影響を与えた本です。

《ロートレアモン伯爵 (イジドール・デュカス)「マルドロールの歌」の挿絵》1948年

悪の化身であるマルドロールを主人公に、悪のごった煮のような内容です。

《ロートレアモン伯爵 (イジドール・デュカス)「マルドロールの歌」の挿絵》1948年

《ロートレアモン伯爵 (イジドール・デュカス)「マルドロールの歌」の挿絵》1948年

ルネ・マグリット《エリッヒ・フォン・シュトロハイムの「メリー・ウィドウ」への招待状》1955年

ジョジョ第2部に登場するシュトロハイムという超濃いキャラの元ネタでもあるエリッヒ・フォン・シュトロハイムは、映画監督&俳優でした。

そんな彼が監督した映画「メリー・ウィドウ」の招待状をマグリットが制作しています。

雑誌

ルネ・マグリット《雑誌「ビザール(奇妙な)」の表紙》1955年

サベナ航空のトレードマーク

ルネ・マグリット《空の鳥》1966年

マグリット最晩年の作品で、国営企業のサベナ航空のために描きました。

1967年のサベナ航空リーフレット、「サベナ・レヴュー」1986年の別冊

1966〜73年の間、エンブレムや広告、グッズなど、ありとあらゆる同社のアイテムに用いられたイメージです。

星ひとつない夜空の中、青空の鳥は、オレンジ色の標識灯がともる滑走路の上を飛んでいます。

この鳥は、飛行機そのものの隠喩であると同時に、旅や観光、あるいは帰還といった飛行機にまつわるプラスのイメージも重ねられています。

「サベナ・レヴュー」

こちらはマグリットの《赤いモデル》が使用されています。