こんにちは!
今回は、マサイス《醜女の肖像》を解説します。
早速見ていきましょう!
醜女の肖像
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着飾った醜い老婆の肖像画、一体何のために描かれたのでしょうか?
何のために描かれた絵?
この作品は、風刺画、教訓画として需要があったために描かれました。
年老いた醜い女性が、似合わない華やかで挑発的なファッションに身を包んでいます。彼女の貴族的な服装は、この絵が描かれた頃には何十年も前のファッションで時代遅れでした。
無理な若作りし、まだ求婚者が現れることを信じている様子は滑稽で、自分をよく見るように、そして恥を知るようにというメッセージが込められています。
このテーマは、肉体美が賛美されたルネサンス時代に非常に好まれ、多くの画家が取り上げました。
教訓画として、老婦人が自分の部屋に飾ったわけではありません。
実際にこういった絵が注文が殺到するほど人気だったのは、その滑稽さゆえに笑いを誘うからでした。
頭の飾り
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頭に被っているのは、中世後期からほぼ一世紀にわたってヨーロッパ中で流行したエナンという円錐帽の変型であるエスコフィオンです。
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これは有角獣、あるいは悪魔の角とも呼ばれ、聖職者などから罰当たりであると大非難の嵐でしたが、女性たちは気にせず着用していたアイテムです。
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公爵夫人のエスコフィオンは宝石(虚栄心の表れ)を縫い込んだ花柄の布製で、真ん中から白く長いリネンを垂らし、角を隠そうとしつつも目立たせています。
顔
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醜い公爵夫人の顔は下半分が非常に長く、全体的に男性並みの大きさであり、頬骨が高く眉の上もごつごつしており、女性的な優しいカーブが皆無です。
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鼻は極端に短く、鼻孔が横に広がっており、鼻の下は類人猿のように長く、膨らんでいます。
口元を見る限り、歯を全て失っているようです。
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目には光がなく、大きな耳は尖っています。これらの特徴から、動物性がほのめかされていると感じられます。
婚約の象徴の赤い花だけど…
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高価な指輪をはめた右手には、一輪の赤い花があります。
画家マサイスの生地フランドルでは、これは婚約や求愛の象徴でしたが、このような固い蕾では花が開くことはなさそうです。
皺の寄った胸
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大きな襟ぐりのドレスは、胸元に多くのボタンできつく締め付けられ、しぼんだバストを押し上げ、皺が寄っています。
パジェット骨病だったのでは?
この絵のモデルはその描かれ方から、骨が肥大・変形するパジェット骨病だったのでは?ともいわれています。
そうだとしたらこの絵の女性は、パジェット病の患者として、決して咲くことのない赤い花を持っている愚か者としてではなく、不幸な状況の犠牲者ようにみえます。
しかし、実際にいたモデルから描いたというよりは、おそらく架空の世界の人物だろうと考えられています。
レオナルド・ダ・ヴィンチも模写した
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マサイスのグロテスクな風俗画は当時非常に人気があり、彼の「醜い公爵夫人」もさまざまなバージョンが描かれ、ダ・ヴィンチの作品の模写も残っています(ダ・ヴィンチの作品は残っていません。残っているのは弟子が模写した絵)。
かつてはダ・ヴィンチのスケッチ画をマサイスが模写したと言われていましたが、今では逆が定説となっています。
美とは何か
彼女の外見にもかかわらず、この肖像画は非常に魅力的で、多くの人を惹きつけます。
黄金比率など、美しさは数値で測れると考える人たちもいます。しかし、それは整った顔が美しいという一つの信念にすぎないのかもしれません。
何を美しいと感じるかは国籍、階級、個人的体験、特有の文化やマスメディアの影響などが深く関与しており、全世界の誰もが同じ基準で美貌や醜貌を判断することはないとされています。
美の定義の幅が広がり、美女と魅力的な女性は違うという考えが広まっています。
2枚で1セット
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本作は元々は2枚で1セットでした。対の作品が上の絵です。
当時の二重の肖像画では、右側の方が位が高いとされ、通常こちら側に男性が描かれます。
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しかしこの作品では、《醜女の肖像》が右となっているため、彼女が世の中の常識をひっくり返し、変化をもたらしているかのようです。
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他の画家が模写した絵も残っています。
アリスの登場人物の元ネタ
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『不思議の国のアリス』に登場する公爵夫人の元ネタはこの絵だといわれています。