こんにちは!
今回は、デ・キリコの「イタリア広場」シリーズについてです。
早速見ていきましょう!
イタリア広場
デ・キリコといえば形而上絵画(見慣れていたものが、いつもとは違った感じに見えるように描かれた絵)が有名です。
その中でも「イタリア広場」シリーズは、彼の魅力がたくさんつまっています。
見つけ次第追加していきます。本当にたくさんある。無限に見つかる絵たち…一体何枚描いたの…。
ニーチェによるアリアドネの話
デ・キリコは、ニーチェの哲学に大きな影響を受けており、彼によるアリアドネとその神話の解釈に魅了されていました。
そもそもアリアドネって誰?↓(勇者に捨てられ神に選ばれる王女)
ニーチェにとって、アリアドネは単なる神話上の人物ではなく、深い哲学的な象徴を持つ存在でした。
彼はアリアドネを「永遠回帰」と結びつけ、人生や運命の永遠の循環を象徴するものとして解釈しました。アリアドネの孤独と待つ姿は、ニーチェの哲学における人間の存在の孤独と葛藤を反映しています。
デ・キリコは、このニーチェの解釈に魅了され、アリアドネの神話を自身の形而上絵画のテーマとして取り入れました。
彼の作品においてアリアドネは、孤独や静寂、夢のような都市風景の中で運命を待つ象徴的な存在として描かれています。彼の絵画は、ニーチェの哲学的テーマを視覚的に表現し、その意味や感情を観る人に問いかけています。
《イタリア広場》シリーズでは、↑のようにアリアドネの像が繰り返し登場します。
出典:Vatican Museums『Ariadne』
アリアドネの像は、デ・キリコの創作ではなく、実際にある像です↑
ジョルジョ・デ・キリコ《赤い塔》1913年
夢と現実の境界のような絵。この曖昧さが見る人を不安にさせます。
像は、広場の寂しさや不気味さを強調するために配置されており、作品全体の謎めいた雰囲気を強めています。
別の男性像の正体は…?
アリアドネだけでなく、↑の作品のようにフロックコートを着た男性像もよく登場します。
出典:MuseoTorino『Monumento a Giovanni Battista Bottero』
この像はクアットロ・マルツォ広場にある哲学者ジョヴァン・バッティスタ・ボッテロの像にインスピレーションを受けたものなのではといわれています。
絵の中に1916年と書いてありますが、後年の作品っぽいような…。
デ・キリコ29歳の1917年というのが、彼が最も高く評価されていた形而上絵画時代最後の年でした。
列車の意味
背景にちらりと見える列車。これもこのシリーズの多くの絵に描かれています。
列車は、産業革命以降の技術革新と近代化を象徴しています。
古典的な彫像や建築物とともに列車を描くことによって、過去と未来、古典と近代の対比が強調されています。
また、列車は動き続けるものであるため、時間の流れを象徴しています。
しかし、デ・キリコの絵画に描かれる列車は静止しているように見え、まるで時が止まってしまったかのようです。
そしてそれは永遠に変わらない静けさと孤独感を感じさせます。
静かな広場や無人の都市風景の中で突然現れる列車は、不安感や存在の不確実性(私たちは本当に存在しているのだろうか?という感覚)を喚起します。
静かで孤独な広場にある煙突や塔が、メランコリックな雰囲気を一層引き立てています。
ジョルジョ・デ・キリコ《イタリア広場(哲学者の午後)》1974年頃
絵の中にサインと共に「1934年」と書き込まれていますが、実際には1974年頃描かれたものです。