こんにちは!
今回は、ミレイの《オフィーリア》を解説します。
早速見ていきましょう!
オフィーリア
ジョン・エヴァレット・ミレイ《オフィーリア》1851-1852年
悲しい物語
シェイクスピアの悲劇『ハムレット』登場するオフィーリアは、恋人のハムレットに冷たくされた挙げ句、父親まで殺されたことで正気を失い、ついには溺死してしまう悲劇のヒロインです。
どうしてハムレットが狂ってしまったのかというと…
父王が急逝した後すぐに母親が亡父の弟と再婚し、彼が新王に。
ある晩、目の前に父の亡霊が出現し、「弟に殺された」と告げたことがことの始まりでした。
猜疑心と復讐心に満ちたハムレットは暴走し、深く愛し合っていた許嫁オフィーリアをも追いつめてしまいます。
ミレイはそんな彼女の最期、花を摘んで花輪を編み、それを細い枝にかけようとして川に落ち、死ぬ間際、祈りの歌を口ずさんでいる場面を描きました。
このシーンは人気で、ミレイ以外にも多くの画家が描いたテーマでした。
切ない花言葉たち
ミレイは通常とは違って、まず背景を完成させてから人物を描きました。
イメージに合う小川を探し、ロンドン郊外にあるホッグズミル川を見つけ、1851年7月〜11月まで滞在し、スケッチを重ねました。
植物は実物に即して正確に描いています。
スケッチが長期に及んだため、季節の違う植物が混ざり合っています。
スミレは「貞節」
ケシは「死」
ひな菊は「無邪気」
パンジーは「無駄な愛」
バラは「愛」
オフィーリアの兄は、彼女を「5月の薔薇」と呼んでいました。
柳は「見捨てられた愛」
いらくさは「後悔」
野バラは「孤独」
西洋ナツキソウは「死の無益さ」
ミソハギ「愛の悲しみ」
勿忘草は「わたしを忘れないで」
きんぽうげは「子供っぽさ」
余談ですが、きんぽうげの英語名は「Buttercup(バターカップ)」で、スラングとしても使われていて「可愛い子」という意味です。
海外のドラマや映画などでも、小さい子供や孫のことを「バターカップ」と呼んでいるシーンがあったりします。
死を連想させる鳥
ヨーロッパコマドリは、日本産とは違って赤い胸が特徴的です。
これは、十字架上のイエスの額に刺さったイバラを抜こうとして血がついたからだそう。
また、コマドリは、森で迷って死んだ子供たちの遺体に葉や花をかけて弔うともいわれています。
正気を失ったオフィーリアは、コマドリに自らの命を重ねる歌を口ずさみます…。
モデルから訴えられる
ラファエル前派の画家たちに人気のモデルで、後にロセッティの妻となるエリザベス・シダル(愛称リジー)です。
絵にリアリティを追求したミレイは、自宅のバスタブに湯を張り彼女に浸かってもらいました。
寒くないようにバスタブの下からオイルランプで温めていましたが、いつの間にか火が消えていたことに、作業に集中しすぎていたミレイは気づかず、湯は水に…
真冬にバスタブのなかで長時間つかったおかげで、リジーは風邪をひいてしまいます。
彼女の父親はミレイを訴え、50ポンド(約100万円)の慰謝料を請求し、少し金額を下げてもらいミレイは支払ったそう…。
評価
1852年、ロイヤル・アカデミーで初めて展示されたときは、賛否評論あり、広くは称賛されませんでしたが、現在では高く評価されている作品です。