ボスの奇妙で異様な絵「快楽の園」を超解説!

こんにちは!

今回は、ボスの異色の祭壇画《快楽の園》について解説します!

早速見ていきましょう!

快楽の園

ヒエロニムス・ボス《快楽の園》1490-1500年

500年以上前の絵とは思えないくらい、斬新で、カラフルな絵です。

いまだにカラフルなままなので、相当良い絵の具を使って描いたことがわかります。

左にアダムとイヴが誕生した「楽園」、中央に男女が快楽にふける「現世の楽園」、右に罪人が苦しんでいる「地獄」が描かれています。

こんな男女の裸がびっくりするくらい描かれている祭壇画、異例中の異例です。

約600人もの人が描かれています。

この時代に、ユーモラスなモンスターを祭壇画に描くのも謎すぎる。現代っぽさがありますね。

誰がこの異様な祭壇画を注文したのか

この作品に関する最初の文献は、ボスが亡くなった翌年の1517年で、ヘンドリック伯爵ナッサウ家のヘンリー3世の所有するブリュッセルの屋敷にあったそう。

3枚のパネルからなるトリプティク(三連祭壇画)は、ボスの時代には祭壇画の様式としてよく見られたものでした。

しかし、見てわかるように、この作品は相当変わっており私的であり、教会ではなく個人のパトロンのために描かれたのは、ほぼ確実だといわれています。

また、他にこれといった根拠がないため、ヘンドリック伯爵あるいはその親族がパトロンであったと考えられています。

謎の画家ボス

ボス自身による手紙や記述は一切残っておらず、また彼を知る人による懐古談もありません。

ボスに関する当時の記録はいくつも残されていますが、そのほとんどがスヘルトーヘンボス市の記録文書です。

彼の生涯の大まかなことはこの記録から判明していますが、どういう人物だったのかは全くわかっていません。

そのため、専門家の間でも、ボスは学究的な神学者だという説から、精神障害のある異端者だという説まで幅広くあります。

残された当時の記録からすると、ボスが社会的に尊敬された人物であったことがわかり、宗教についても正統派の考え方をしていたと考えられています。

外面

 

開いていたパネルを閉じると、なんと別の絵が現れます!

緑灰色単色で描かれた天地創造時の地球の絵です。

なんで暗めの単色で描いたのかというと、パネルを開いたとき、鮮やかな色合いで描かれた内側の絵をより引き立てるためです。

 

左上には天地創造しているがいます。

画面上部の言葉は、旧約聖書からの引用「まことに、主が仰せられると、そのようになり、主が命じられると、それは堅く立つ」です。

左翼パネル

 

エデンの園が描かれています。

 

中央にいるキリストの姿をした神が、アダムの妻となるイヴを連れてきた(作った)ところです。

神の左手は、2人の結婚を祝福する身振りをしています。

 

中央右には、が巻きついた木があります。

この後、アダムとイヴが禁断の実を食べて、楽園を追われることを示唆しています。

 

中央にあるピンクの謎の構造物は、命の噴水で、中にはボスのトレードマークのフクロウがいます!(ボスは絵の中によくフクロウを描き入れています)

楽園の河はこの噴水から流れ出しています。

聖書の天地創造の物語には出てきませんが、5世紀以降、キリスト教宗教画に登場しています。

 

画家たちは、エデンの園に実在するものも架空のものも含め、神の創造の豊かさを示すためにあらゆる種類の動物を描きました。

神話上の動物である一角獣は、キリスト教芸術では純潔の象徴です。

 

アザラシめっちゃかわいいな?

中央パネル

 

現世の快楽が描かれていると考えられていますが、この中央パネル、結局なんの絵なのかわかっていないんです。意味不明な絵です。(笑)

裸体の男女がわらわらといますね。

露骨に淫らな表現は少ないですが、全体的には性的な意味合いの強い絵です。

 

 

 

いたるところにイチゴイチジクが描かれていますが、これらは欲望を表すモチーフです。

 

ムール貝は女性器の隠語です。

 

人々を若返らせる「青春の泉」で水浴びをしています。

この部分を見てもわかるように、金髪の女性が多いですよね。

彼女たちは愛と美、そして欲望の女神ヴィーナスを連想させます。

彼女たちの存在によって、興奮した大勢の男たちが周囲を回っています。

 

蝶は移り気で不節操、アザミは堕落の象徴です。(どちらも絵の状況によっては肯定的な意味合いを持ちます)

 

画面右下に1人だけ毛皮を着た男性がいますが、アダムでは?といわれていますが、なぜここにいるのか、そしてなぜ1人だけ毛皮を被っているのかも不明です。

この祭壇画、様々な暗喩や寓意が描かれているのですが、全体で見たときに、「えっと…なにこれ」となっている謎の絵です。

右翼パネル

 

地獄が描かれています。

快楽や欲望に負けた人間たちを悪魔が拷問しています。

 

音楽は人を悪徳に導くと考えられ、楽器が拷問する道具として使われています。

 

修道女の服を着た豚は、堕落した聖職者を表しています。

 

椅子に座っている鳥の怪獣は、人間を飲み込んでは亡者の落ちる穴に排泄しています。

この人間たちは、暴食の罪で罰を受けているのでしょう。

 

2つの耳とナイフは、明らかに男根をイメージしています。

ナイフには「M」の文字が刻まれていますが、ボスの他の作品に描かれている刃物にも同じ刻印があります。

これに関しては様々な解釈がありますが、「M」は「mundus(ラテン語で「世界」の意)」の頭文字だという説があります。

 

体の一部は人間、一部は卵、一部は木というやばそうな怪物いますね。

この顔、ボスの自画像では?なんていわれています。

胴体部分の卵の殻の中は、居酒屋です。地獄に居酒屋あるんかい。

頭に乗せた円盤の上では、悪魔が餌食を連れて歩いています…。

バグパイプにも性的な意味合いがあります。

ちなみにこの怪物が描かれた意味はよくわかっていません。

命の噴水の地獄版では?ともいわれていますが、いまだに謎のままです。

全部解明されず、謎が残るからこそ、今でも人を引きつけるんでしょうね。