王族のマントの毛皮の正体は何?白地に黒の点?意外な正体とは?超解説!

こんにちは!

今回は、王侯貴族がよく着用しているマントなどに使われる斑点入り毛皮の正体についてです。

早速見ていきましょう!

王族のマントの毛皮の正体とは?

毛皮にある謎の黒い点

ハンス・ホルバインの工房《イギリス王ヘンリー8世の肖像》16世紀?

西洋絵画を見ていると、王侯貴族の肖像画で豪奢な毛皮を身にまとっていることがよくあります。

《エリザベス1世》1600年頃

その中には、上の絵のように黒い点があるものがあります。

イアサント・リゴー《ルイ14世の肖像》1701年

これ、何だと思いますか?

101匹わんちゃんのダルメシアンの柄のようにも見えますが、実は毛皮は毛皮でも、毛皮の模様ではありません。

意外な正体

マルティン・ファン・マイテンス《マリア・テレジアの肖像》1744年頃

この絵を見るとよくわかりますが、なんと!…アーミン(白テン)の尻尾です。

アロンソ・サンチェス・コエリョ《白貂の毛皮をまとう貴婦人》1577-1579年

白テン(白貂)はオコジョのことです。

厳密にはテンとオコジョは別ですが、どちらにせよ毛皮としては高級品で、上の絵が白貂の毛皮らしいです。

白貂の方が毛が長いんでしょうかね…。

余談ですが、上の絵は長い間エル・グレコ作だといわれていましたが、別の画家の絵だと判明した絵でもあります。

オコジョは夏と冬で色が変わるため(夏は茶色、冬は真っ白)、冬毛のオコジョをアーミンと呼びます。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《白貂を抱く貴婦人》1490年頃

白貂と聞くと、この絵を思い出しますが、実は絵の中に描かれているのは白貂ではなくフェレットです。

とはいえレオナルド自身は、フェレットを「白貂」のつもりで描いた可能性が高いと考えられています。

というのも当時、白貂は、純白の毛皮を汚されるよりも死を選ぶと信じられていたため「純潔」の象徴とされていました。

さらに、描かれている女性の姓「ガッレラーニ」とオコジョのギリシャ名「ガレー」をかけていると考えることもできます。

そしてこの女性は、当時レオナルドが奉仕していたミラノ公ルドヴィーコの愛人で、ルドヴィーコがナポリ王から「レルメッリーノ(白貂)」という爵位を得ていたことから、白貂は彼を表していると考えられています。

ウィリアム・シーガ?またはジョージ・ゴア?《イギリスのエリザベス1世(アーミンの肖像画)》1585年

 

絵を描いた画家自身もアーミンが何なのかよくわかっていなかったことがよくわかるとても面白い絵です。笑

ヨハン・ゲオルグ・ジーセニス《シャーロット王妃と召使い》1761年?

黒い点は全部尻尾だった…という事実を知ってから絵画の中によく登場する、白地に黒の点があるマントやケープが全くおしゃれに見えなくなりました…なんて悪趣味なの…もちろん現代の感覚で一方的に当時のものを評価するのは良くありませんが。

それにしても人間はなんて恐ろしいことを思いついてしまったのでしょう…。

アラン・ラムゼー《戴冠式のローブを着たジョージ3世》1765年頃?

絵画の中の黒い点を数えれば、犠牲になったアーミンの数がわかってしまうという……。

ドミニク・アングル《玉座のナポレオン》1803年

ジャック=ルイ・ダヴィッド《ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠》1806-1807年

 

印象派の時代にも流行る

ピエール=オーギュスト・ルノワール《桟敷席》1874年

ぱっと見どこにアーミンの毛皮が?と思うかもしれませんが、ヒントは画面右の2つの黒い点です。

この時代の女性たちの間でも、アーミンの毛皮が流行していました。

フェルメールの絵に登場する毛皮の正体

ヨハネス・フェルメール《真珠の首飾りの女》1662年頃

フェルメールの絵の中にも、白地に黒の点のある毛皮の服が頻繁に登場します。(全37点中6点)

6点とも全て同じ服ですが、モデルは全て別人です。

ほぼ同時代のレンブラントが山ほどの衣装や宝飾品を収集し、絵の中に描いていたのと対照的です。

ヨハネス・フェルメール《リュートを調弦する女》1662-1663年

全て同じもので、財産目録にも「黄色のサテンのジャケット、白の毛皮縁付き」という記録が残っていることから、フェルメールが所有していたものでした。

ヨハネス・フェルメール《手紙を書く女》1665年

これも一応アーミンの毛皮だと解釈されていますが、黒い点が丸っこくて尻尾にはあまり見えません。

ヨハネス・フェルメール《婦人と召使》1666-1667年

さらに、フェルメールの財力でアーミンの立派なジャケットを買えたのかというと買えるようなものではなく、彼の妻(実家がお金持ち)ですら買えないレベルの高級品でした。

そして、当時のオランダの風俗画で、白地に黒い点のある衣服を描いた絵はフェルメールの絵以外に見当たらないので、メジャーな柄だったわけではありません。

ヨハネス・フェルメール《恋文》1669年頃

また、このように黒い点が規則正しく入った動物の毛皮というのは、自然の状態ではほぼありえません。

ヨハネス・フェルメール《ギターを弾く女》1672年

《真珠の耳飾りの少女》でも、真珠を現実にはありえないような巨大なサイズで描いたことからもわかるように、これも実物は白い毛皮で、黒い点はアーミンのつもりなのか単純にそういう柄として描き込んだのかもしれません。

エリザベス女王も戴冠式で

Getty Images

出典:FASHION PRESS『英国王室が惚れるジュエラー「ロイヤル・アッシャー」ダイヤモンドジュエリーを受け継ぐ英国王室の文化』

エリザベス女王も戴冠式の時にアーミン・スポットのある毛皮を着用していました。

エリザベス女王といえば、長年、動物愛護団体から非難を受けても特に気にすることなく毛皮の衣服を身につけていましたが、最近はリアルファーを使った衣服は新しくは作らないと決めたそう。

ミッキーとミニーも??

 

これは私が持っているディズニーランド38周年キングダム・トレジャーのポストカードですが、ミッキーとミニーのマントにもアーミン・スポットがありました…。

…これはもちろんリアルファーではなくエコファーのはず………。