こんにちは!
今回は、クロード・ロランの対になった作品「シバの女王の乗船」と「イサクとリベカの結婚のある風景」についてです。
早速見ていきましょう!
「シバの女王の乗船」「イサクとリベカの結婚のある風景」
クロード・ロラン《シバの女王の乗船》1648年
クロード・ロラン《イサクとリベカの結婚のある風景》1648年
恋を選び、絵を諦める
もともとこの2つの作品は、ローマ教皇イノケンティウス10世の甥カミーロ・パンフィーリ枢機卿によって発注されていました。
しかしカミーロは、母親の推薦する結婚相手がいたにもかかわらず、叔父イノケンティウス10世の戴冠式で出会ったオリンピア・アルドブランディーニに恋をし、彼女が夫と死別した後、彼女と結婚するために枢機卿を辞任してしまいます。
彼の母親やイノケンティウス10世から結婚を快く思われなかったために、2人はローマを去らなければならず、カミーロの母が死去する10年後までローマに戻ることができませんでした。
これは絵画が完成する少し前に起きた出来事で、受け取り手を失った絵画は最終的に別の顧客であったブイヨン公フレデリック・モーリス・ド・ラ・トゥール・ドーヴェルニュのために制作されることになりました。
彼は、画家と同じフランスの出身で、当時、イノケンティウス10世の軍の将軍を務めていました。
シバ女王の乗船
クロード・ロラン《シバの女王の乗船》1648年
聡明なソロモン王の噂を聞きつけたシバの女王が、従者を従え、贈り物を伴い、イスラエルへと向かう、旧約聖書の場面が描かれています。
イサクとリベカの結婚のある風景
クロード・ロラン《イサクとリベカの結婚のある風景》1648年
預言者アブラハムの息子イサクとリベカの結婚式の祝宴が描かれており、こちらも旧約聖書の物語のひとつです。
2つを繋ぐモチーフ
両絵画は『旧約聖書』の異なる物語を主題としていますが、どちらも男女関係に関する物語です。
人がにぎわう都市の港と静かな田舎の風景は対照的であり、絵画世界の中心人物たちはそれぞれ左右を建築物あるいは木々に囲まれ、海あるいは大きな川を背景としています。
またどちらの絵画も背景に塔が描かれています。
クロード・ロランが絵画に塔を描くことは珍しくありませんが、対作品のどちらも塔を描いていることは特別な意味があると考えられています。
というのも、絵の購入者のフレデリックの姓ド・ラ・トゥール・ドーヴェルニュは、「オーヴェルニュの塔」を意味し、またその一族は石造りの塔を紋章としていました。
そこで《シバの女王の乗船》の右側と、
《イサクとリベカの結婚のある風景》の左側に立つ丸い塔は彼を表す象徴と考えられています。
ターナーに影響を与える
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《カルタゴ帝国の滅亡》1817年
本作品および本作品と同様のクロード・ロランの作品は、風景画家ターナーにインスピレーションを与え、《カルタゴを建国するディド》と《カルタゴ帝国の滅亡》などを描きました。
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《もやの中を昇る太陽》1807年以前
ターナーは、《カルタゴを建国するディド》と《もやの中を昇る太陽》をクロード・ロランの対作品の横に展示されることを条件に、ターナー遺贈の一部として国に残しました。
ターナーの作品の多くはテート・ギャラリーに所蔵されましたが、この2点をはじめとするいくつかの絵画がナショナル・ギャラリーに所蔵されています。