こんにちは!
今回は、クリムトの傑作《ベートーヴェン・フリーズ》を解説します。
早速見ていきましょう!
目次
ベートーヴェン・フリーズ
左の壁:「幸福への憧れ」
正面:「敵対する勢力」
右の壁:「歓喜の歌」
グスタフ・クリムト《ベートーヴェン・フリーズ》1901年
ベートーヴェン祭り用に制作
1902年、クリムトが40歳のときに制作した絵巻物のような壁画です。
全長34メートル、高さ2メートルもあります。
第14回分離派展(ベートーヴェンを称える展覧会)で展示しましたが、当時は不評だったとか…。
なぜ不評だったかというと、「音楽」を愛する国民性から、その「音楽」を、こんな訳のわからない絵にまとめられてしまったことに対する不快感と、単純に絵が卑猥すぎるという嫌悪感からです。
どんな絵?
ベートーヴェンの交響曲第9番をテーマに、黄金の甲冑を着た騎士が、幸福を求めて欲望や敵に向い、勝利し楽園にたどり着くまでの旅路が描かれています。
上の動画は、第9といえばこのメロディ〜!という場面に飛ぶように設定してあります。
ストーリー
流れるようなガウンを身にまとい、目を閉じた守護神は、人類の憧れや希望を表しています。
裸の少女は、手を握り締め、とても怯えており、彼女の姿は「願い」を表しています。
ひざまずく裸の2人は、人類の苦しみを表しています。
2人は、正面の壁に描かれた「敵対する力」と戦うことを、黄金の甲冑で武装した騎士に嘆願しています。
騎士はクリムト自身の分身ともいわれています。
騎士の上にいる女性は、月桂樹の冠を掲げているのが「野望」、隣にいるのが「憐れみ」です。
悪の権化、巨人テュフォンとその娘たちゴルゴン三姉妹、その上に「病」「狂気」「死」、テュフォンの横には「肉欲」「淫蕩」「不摂生」の擬人像が描かれています。
ギリシャ神話の怪物、蛇の髪を持つゴルゴン三姉妹の中でも、最も有名なのがあのメドューサですね。
巨人テュフォン、なんか既視感あるなぁって思ったら、「かいじゅうたちのいるところ」だ…。(笑)
ちなみにテュフォンは、台風(タイフーン)の語源にもなっています。
ちなみにこの部分、おしゃれな装飾ではなく、巨人テュフォンの体です。
青みがかった鷲の翼、蛇のような体が描かれています。
ここにひとりぽつんと女性がいます。
灰色と黒のみで表現された女性は、絶え間ない深い悲しみや激しい苦悩を表しています。
守護神が出現し、人類の救済を表しています。
竪琴を奏でている女性は、詩と音楽を表しており、人々を救い、導くのは芸術だというメッセージが込められています。
うっとりと音楽の旋律に身を任せる守護神たち。
ベートーヴェンは、交響曲第9内にシラーの詩「歓喜の歌」を入れています。
それを楽園の天使たちが花を手に、合唱しています。
溶け合うように抱き合う恋人たちは、勝利そして幸福の成就を表し、シラーの詩の「この接吻を全世界に!」を表しています。
装飾的な金の繭(というのは当たり障りのない解説で、クリムト的には男根を象徴していますね。さらに言うと精子や卵子なども装飾的に描かれています。)に包まれ、両側には太陽と月があります。
2人の足元の周りには水が渦を巻き、2人を結び付けているように見えます。
ベートーヴェン交響曲第9番第4楽章『歓喜の歌』
ベートーヴェンの『歓喜の歌』はとっても有名なので、誰もがどこかで聴いたことがあるかと思いますが、第九を全部聴いたことがあるという人は少ないのではないでしょうか?
なんといってもとっても長いんですよね〜全部で1時間以上あります。
第4楽章だけでも20分以上あるのですが、これだけでも是非聴いてみてください!
オススメはカラヤンという世界で一番すごい指揮者が演奏しているバージョンです。
初めて見て聴いたとき、あまりにもすごくてちょっと泣きました。感動。
クリムトのこの絵を見ながら聴くのもツウな感じでオススメです。(笑)
是非youtubeなどで探してみてください。
貴石などが埋め込まれている
金箔だけでなく、貝殻、ガラス、貴石など様々な素材が埋め込まれています。
従来の絵画は、どちらかというと絵で貝殻やガラスなどの素材感を表現しようとしてきたので、もうそれをそのまま埋め込んでしまっているあたり、絵画というより、装飾品に近いのかもしれません。
デザインの世界ですね。
フリーズってなに?
フリーズというのは、固まることではもちろんなくて、壁の帯状の装飾のことです。
上の写真は、《ベートーヴェン・フリーズ》を所蔵しているウィーンのセセッシオン(分離派会館)です。
2019年のクリムト展で《ベートーヴェン・フリーズ》の複製が来たのですが、そのときの映像です。
私も実際にこの展覧会に行ったのですが、雰囲気味わえてとってもよかったです!
いつか本物見たいなぁ…。