マグリット「夢の鍵」を超解説!わざと間違えた名前を物につけた意味とは?

こんにちは!

今回は、マグリットの《夢の鍵》を解説します。

早速見ていきましょう!

夢の鍵

ルネ・マグリット《夢の鍵》1927年

上の絵はマグリットが初めて画中に言葉を書いた作品だと考えられています。

子供向けの本みたいに描いた絵

これらの作品は、マグリットが子供向けの本(絵と名前・簡単な説明が載っているアルファベット本のようなもの)の形式を使用して描いた絵です(「children’s reading primer」で検索 googleの画像検索に飛びます)。

かばんの絵に「Le ciel(空)」、ナイフに「L’oiseau(鳥)」、葉っぱに「La table(机)」、スポンジに「L’éponge(スポンジ)」と書いてあります。

本作は、物の名前とその絵との関連が当たり前でないことを示しています。

物の名前を間違えることは、見慣れたものを見慣れないものに見せるためのマグリットの重要な戦略の 1 つで、様々な作品に見ることができます。

「間違っている」とは何か?

「スポンジ」の絵と「スポンジ」の名前が一緒になっている例(これが通常の組み合わせ)があることで、他の絵と名前の組み合わせ(例えば、かばんの絵と「空」の名前の組み合わせ)が一見すると「間違っている」ようにより強く思えてきます。

しかし同時に、マグリットは、これらの「間違った」組み合わせが、絵と名前の関連性が必ずしも「自然」や「正しい」ものでなく、実は私たちが勝手に作り上げたルールであることに疑問を投げかけています。

つまり、何が「正しい」組み合わせであるかは、私たちが決めるのだということを示しています。

間違えた意味とは?

マグリットは故意に物の名前を間違えることで、私たちが普段見ているものへの新しい視点を提供し、それによって私たちが物事を新たな角度から見ることを促しています。

さらに、彼は物の絵や写真が実際の物と全く同じではないことを強調しています。

同じ物体や現象でも、それをどのように見るか、またはどのように理解するかによって、その意味や感じ方が変わるという考え方を示しています。

例えば、ある人が見るとただの木かもしれませんが、別の人が見るとその木は家族を象徴するかもしれません。このように、物や現象の「解釈」は私たちがそれをどのように認識し、どのような意味を与えるかによって異なってきます。

タイトルの由来

《夢の鍵》というタイトルは、古代ギリシャのアルテミドロスの『夢診断の書』の書名のフランス語訳が由来だそう。

全部間違ってるバージョンもある

ルネ・マグリット《夢の鍵》1930年

マグリットの《夢の鍵》といえばこの絵が1番有名なのではないでしょうか。

卵の絵に「l’Acacia(アカシア。木の一種)」、ハイヒールに「la Lune(月)」、山高帽に「la Neige(雪)」、火のついたろうそくに「le Plafond(天井)」、コップに「l’Orage(嵐)」、金槌に「le Désert(砂漠)」と書いてあります。

この絵は全ての組み合わせが間違っています。

英語で書いた珍しい作品

ルネ・マグリット《夢の鍵》1935年

馬の絵に「the door(ドア)」、時計に「the wind(風)」、花瓶に「the bird(鳥)」、旅行用手提げかばんに「the valise(旅行用手提げかばん)」と書いてあります。

この絵だけ文字が全て英語です。

マグリットが絵の中の言葉を英語で書くことは非常に珍しいことでした。

ではなぜ英語で書いたのかというと、1936年にニューヨークのジュリアン・レヴィ画廊で行われた最初の個展のために制作したものだったからです。