アーサー王と12人の乙女の魔法の船について超解説!

こんにちは!

今回は、アーサー王が乗り込んだ魔法の船の話を紹介します。

早速見て来ましょう!

魔法の船

悪い魔女モルガンに愛された男

フレデリック・サンズ《モルガン・ル・フェイ》1864 – 1864

アーサー王の部下である騎士アコロンは、アーサーの姉で邪悪な魔女モルガンの恋人でした。

モルガンは、彼をとても愛していたので、夫(※)とアーサー王を殺して、彼を王にしたいと考えていました。

(※アーサー王伝説は様々な物語の寄せ集めなため、辻褄が合わない部分が多々あります。別のストーリーではモルガンの夫はロット王です。この物語ではウリエンス王です。つまりウリエンス王はアーサーにとって義理の兄弟。そしてアーサー派の人間です。)

アーサーに仕えていながら敵であるモルガンと付き合っているアコロンが裏切り者な訳ではなく、彼はまさか彼女が悪い魔女だということに気付いていませんでした。

そしてモルガンは、あることを思いつきます…。

狩りでの不思議な体験

ある日、アーサー王は、仲間の騎士たちを連れて狩りに出かけました。

足の速い鹿を夢中で追いかけている内に、いつの間にかアーサー、ウリエンス王、アコロンの3人だけになっていました。

そして、急に3人の乗っていた馬が死んでしまいました。

仕方なく3人は歩くことにしましたが、次第に辺りは暗くなり、夜になってしまいました。

美しい船と…

スピード・ランスロット《『アーサー王とその騎士団の伝説』の挿絵「12人の美しい乙女が現れ、アーサー王に敬意を表した」》1912年

大きな川を見つけた彼らのもとに、一艘の船がすべるように近づいてきました。

それは、これまで見たこともないほど、美しく洗練された船でした。

誰かいないかとその船に乗り込むと、12人の愛らしい乙女が出てきて、彼らを歓迎しました。

彼女たちは、目にも鮮やかで清潔な着替えや、今まで見たこともないような、贅をつくしたごちそうを用意し、満腹と疲れで眠くなってきた3人を、豪華な寝室に案内しました。

彼らはすぐさま眠りにつき、一晩中ぐっすりと寝ました。

目覚めるとそこは…!

しかし、朝になって目が覚めてみると、彼らは全く違った場所にいることに気付き、驚きます。

ウリエンス王は、自室のベッドの上、モルガンの腕の中でした。

エクスカリバーがアコロンの元に

アコロンは、草原の中にいました。

小人が近づいてきて「モルガン妃からの伝言です。この後開催される一騎討ちに出てほしいとのこと。この剣をお使いください」と、エクスカリバーとその鞘を彼に渡しました。

代わりに戦って欲しい

アーサー王は、騎士ダマスの城内にある大きな暗い部屋で、一緒に閉じ込められている多数の騎士たちの呻き声で目を覚ましました。

近くにいる騎士が言うには、ダマスが、自分の代わりに弟の騎士オンズレークと一騎討ちを行ってくれる者を探しているとのことでした。

ここにいる騎士たちは、それを断ったため、ここに幽閉されている、という次第でした。

そこでアーサーは、自分とここにいる騎士たちを解放するならと、しぶしぶ一騎討ちを承諾しました。

しかし、オンズレークは怪我で一騎討ちができる状態ではありませんでした。

彼はモルガンと親しかったので、彼女に相談したところ、彼女は「代理として闘うべき立派な騎士(アコロン)を行かせましょう」と答えました。

偽のエクスカリバーがアーサーの元に

アーサーが闘いの準備をしていると、モルガンの侍女が来て「モルガン妃より、王さまが必ず勝者となるよう、この剣を、とのことです」と言いました。

剣を目にしたアーサーは、エクスカリバーだと信じて疑いませんでしたが、実はモルガンが用意した偽物の剣と鞘でした。

超絶不利な試合

エリック・ペイプ《『歌詞と旧世界の牧歌』の挿絵》1907年

そして一騎討ちが始まりました。

アコロンのふるうエクスカリバーにやられっぱなしのアーサー、無我夢中すぎて自分が傷だらけの血だらけだということに、やっと気がつきました。

そこで、自分が手にしているのはエクスカリバーとその鞘(鞘を持っていると怪我をしない)ではないこと、騙されていたことを知ります。遅すぎでは…。

アーサーの駄剣は折れ、盾で闘い、アコロンがよろめいて剣が落ちたところでそれを拾い上げ、それを握った瞬間にエクスカリバーだと悟り、アコロンから鞘を奪い取って投げ、アコロンを追い詰めます。

アーサーは止めを刺す寸前で、相手が自分の仲間の誰かなのでは?と気付き、問いただしたところ、彼がアコロンだったということ、2人ともモルガンに騙されていたことを知り、試合は中止になりました。

2人はその後傷の手当てをうけましたが、4日後にアコロンは死んでしまいました。

アーサーはアコロンの死体をモルガンのもとに送りました。

夫ウリエンス王を始末しようと…

一方、アーサーの死を確信していたモルガンは、自分はその間に夫を始末しようと思っていました。

眠っているウリエンス王を見つめながら、侍女に「今のうちに殺すから、急いで彼の剣を持ってきて」と指示します。

びっくりした侍女は、やんわりと抵抗するも、彼女に逆えるはずもなく、剣を取りに部屋を出ました。

息子登場!猫をかぶるモルガン

侍女は、モルガンとウリエンス王の息子で騎士のユーウェインのもとに行き「起きてください!奥方さまが寝ているお殿さまを殺そうとしています。わたしは今剣を取りにいくところなのです」と言いました。

ユーウェインは、「わかった。あなたはそのまま剣を取りに行きなさい。後は任せて」と言いました。

侍女は震える手でモルガンに剣を渡しました。

モルガンは、ウリエンス王の側までいき、どこをどう刺せば1番いいのかしばらく考え、剣を振りかざした瞬間、ユーウェインが止めに入りました。

ユーウェインは、「悪魔め、何をするんだ。母でなければ殺しているところだ」と言いました。

モルガンは「悪魔にそそのかされたの。もう二度とこんなことはしないから、見逃しておくれ。そしてこのことは内密にしておくれ」と言い訳をします。

ユーウェインは、「二度とこのようなことをしないと誓うなら、今回は見逃しましょう」と、彼女を許します。甘い…甘すぎるのでは…。

悪女はいつでも魅力的で強い

エドワード・バーン=ジョーンズ《モルガン・ル・フェイ》1862年

そして、そんなモルガンのもとに、アコロンの遺骸が届きました。

伝言役の騎士が彼女に「アーサー王からの伝言です。アコロンに殺させようとしたようだが、逆に彼が死ぬことになった。今回の反逆行為は、必ず厳しく罰する。どこへ逃げても必ず見つけだすぞ」と伝えました。

これを聞いたモルガンは「あらやだ、騎士さまったら弟がそのように伝えなさいと言ったからって、それをまともに信じてしまうなんて、愚かにもほどがありますわ。わたしがどんな顔をするだろうと、冗談でやったこと、すべて戯れごとですわ」と言いました。

この言葉を騎士たちは(なぜか)信じ切ってしまいます。なぜ…チョロすぎでは…。

そしてこの後もモルガンの悪巧みは続きます…。