こんにちは!
今回は、ギリシャ神話に登場する愛の神キューピッドを解説します。
早速見ていきましょう!
キューピッド(エロス、クピド、アモル)
ウィリアム・アドルフ・ブグロー《濡れたキューピッド》1891年
ギリシャ名:エロス、ローマ名:クピド、アモル、英語名:キューピッド
アトリビュート:弓矢、翼
愛と創造性の神です。
キューピッドは金の矢を放ち、神々や人間の心に欲望の炎を灯しました。
いたずらっ子
ルーカス・クラーナハ《ヴィーナスと蜂蜜泥棒のキューピッド》1526-1527年
キューピッドは美の女神ヴィーナスと軍神マルスの息子です。
用心深いゼウスは、この子は大変な災いを引き起こすだろうと予感し、生まれたばかりのキューピッドを捨てるようヴィーナスに命じました。
しかしヴィーナスは命令に従わず、ゼウスの気が変わるまで森の中に隠しておくことにしました。
幼いキューピッドは自分で作った矢を放ち、退屈を紛らわせているうちに腕をあげ、オリュンポスに戻れるようになった頃には、すっかり弓の名手になっていました。
神々の武器を盗むのが大好きないたずらっ子でした。
父マルスも盗まれてしまいました。(愛は争いを防ぐという意味にも)
キューピッドは、目隠しをして(愛は盲目)適当に金の矢を放って神や人を愛の虜にしたり、恋心をたきつける松明を持ち歩いて遊びまわっていました。
大きくなるには
ヴィーナスは、キューピッドが小さいままで大きくならないことが心配でなりませんでした。
そこで正義を司る女神に相談したところ、兄弟ができれば背が伸びるだろうと言われました。
ヴィーナスが両思いの神アンテロスを産むと、助言通りキューピッドの背が伸びました。
いろいろな象徴がつめこめれたエピソードです。
恋するキューピッド
フランソワ・ジェラール《プシュケとアモル》1798年
青年に成長したキューピッドが恋に落ちたのは、あるアクシデントがきっかけでした。
母ヴィーナスからいろいろと頼まれ事をしていた中で、思わぬ方向に導かれることに。
ある日、ヴィーナスは、類まれな美しさからまるで女神のように崇められていた王女プシュケ(プシュケは「心」の意味も)に嫉妬しました。
そこで、プシュケがこの世で最低の男に恋するようプシュケに矢を射るようにキューピッドに命じました。
母に言われた通りにしようとしたところ、誤って矢の先で自分を傷つけてしまい、恋に落ちてしまいました。
人々に恋の炎をたきつけてきたキューピッドが、初めて恋に悩まされることになりました。
愛と心
シモン・ヴーエ《プシュケとアモル》1650年頃
プシュケと恋に落ちたキューピッドは、彼女をさらって豪奢な宮殿に隠し、夜ごと闇にまぎれて彼女のもとを訪れました。
プシュケも彼を愛しますが、キューピッドからは自分の正体を決して探らないようにと言われていました。
しかし、どうしても知りたくなり、ある夜、明かりを灯して見ると、世にも美しい神が寝ていました。
目を覚ましたキューピッドは怒って、彼女のもとを去りました。
絶望したプシュケは、何とかキューピッドとよりを戻そうとあらゆる手をつくし、その結果、未練たっぷりのキューピッドも彼女を許して結婚しました。
ゼウスが結婚のお祝いに贈ったのは、人間を神に変える食べ物であるアンブロシアと繊細な蝶の羽根でした。
キューピッドとプシュケの間には女の子が生まれ、ヘドネ(「悦楽」、ウォルプタスとも)と名づけられました。
エロティックはここから
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ《愛の勝利》1601-1602年
エロスは愛と欲望の神です。
彼の矢は欲望を引き起こし、射られた人間は所有欲にかられます。
エロティシズムという語が、プラトニックラブとは違い性的な意味を持つのもそのためです。
一方でクピドには、「カップル成立にひと役買う者」というニュアンスもあります。
神話によって違う
弟の両思いの神アンテロスが生まれ、キューピッドは大人になりますが、ローマ神話ではこのエピソードはあまり重視されておらず、しばしば永遠のやんちゃ坊主として描かれています。
一方、ギリシャ神話では逆で、青年として描かれています。
男性同士の愛の神だった
古代ギリシャの都市テスピアイの人々は、エロスを深く敬愛し、5年ごとに「恋人の日」を意味する「エロティディア」という祭を開いていたといいます。
もともとエロスは、男性同士の愛の神だったので、エロティディアでは、立会人の前で若い男性に雄鶏を贈ったあとに連れさって、恋人にしていました。