美人薄命?アングルが描いたド・ブロイ公爵夫人と夫婦の愛

こんにちは!

今回は、アングルが描いた《ド・ブロイ公爵夫人の肖像》を解説します。

早速見ていきましょう!

ド・ブロイ公爵夫人の肖像

ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングル《ド・ブロイ公爵夫人の肖像》1851-1853年

モデルは誰?

後にフランスの首相となる第4代ブロイ公爵ジャック=ヴィクトル=アルベールと結婚したポリーヌ・ド・ブロイです。

肖像画が完成したときポリーヌは28歳でした。

彼女は聡明な美人として有名でしたが、とっても内気な性格で、大の恥ずかしがり屋でした。

そんな彼女を困らせないために、周囲の人々は彼女と目を合わせることを避けたそう。

夫のアルベールは彼女のことを非常に愛していました。

《ドーソンヴィル伯爵夫人》1845年

彼の姉妹であるドーソンヴィル伯爵夫人ルーイズ・ド・ブロイを描いた上の作品に感銘を受けて、妻の肖像画をアングルに依頼しました。

美人薄命とはよく言いますが、彼女も30代前半に結核に感染し、1860年35歳の若さで亡くなってしまいます。

夫のアルベールは79歳まで生きましたが、最愛の妻を失った後、再婚はしませんでした。

彼は彼女の死後、この絵を布で覆い、ベルベットのカーテンの後ろに隠しておいたそう。

辛すぎて見ることができなかったのでしょう。

解説

 

陶器のようになめらかな肌…!!!

肖像画ではメジャーな四分の三正面像で描かれています。

髪をしっかりまとめ、ドレスとあわせた青いサテンのリボンで結んでいます。

顔周りにフワッとあるのはマラブーという羽毛の飾りです。

耳には小さな天然真珠のイヤリングを身に付けています。

アングルは女性を美しく描くために、骨格を無視して描くという特徴があります。

この作品でも、ぱっと見気になりませんがよく見ると、首が長すぎたり、腕の骨が無いか脱臼しているような感じで描いています。

なのに不自然にならないのがさすが巨匠。

 

左目は正面、つまり鑑賞者の方を向いていますが、右目は少し左の方に流れています。

左右の視線をずらして描くことによって、ミステリアスな表情を作り出しています。

両眼とも正面を向いていると、あまりにも目が合いすぎてしまい、長時間絵を鑑賞できませんよね。なので右目を少しそらして描いています。

そう描くことによって、絵の中の人物と目が合っているような、いないような、逆に見られているような気分になり、絵の中に引き込まれていきます。

 

十字の紋章のひとつ、クロスパティーのペンダントは彼女の信仰心を意味し、著名なジュエリー職人によってデザインされたものです。

ぷくっと膨れた形状のペンダントで、古代ローマのお守りに見た目が似ています。

 

右手のブレスレットは、赤のエナメルとダイヤモンドをセットにした豪華な金の環です。

 

ドレスの質感も本当に本物。本当に本物っぽいですよね。完全に布。

レースの透け感も本当にすてき…。

 

ブロイ家とベアルン家の紋章を組み合わせた架空の紋章が描き込まれています。

 

彼女の左にさりげなくアングルのサインがあります。