こんにちは!
今回は見た人誰もが一度は泣いたはず『フランダースの犬』のラストに登場する、ネロがどうしても見たかったルーベンスの絵を解説します!
『フランダースの犬』
可愛らしい絵柄にだまされて子供がつい見てしまうアニメ『フランダースの犬』。
主人公ネロがとにかく最初から最後までついてなさすぎるという、世の中の理不尽がつまったお話で、小さい頃見た私は悲しくてしょうがなかった記憶があります。
唯一の身内であるおじいさんが死に、冤罪をかけられ仕事はなくなり、貧困で食べるものもなく、最後の望みをかけた絵画コンクールも落選し、ひどく疲れてしまったネロ。
実は落選した絵画コンクールの審査員がネロのことを「ルーベンスを継ぐことができるレベル」と高く評価し引き取りにきたり、冤罪が晴れたり、ネロをいじめていた大人がネロの善良さに気付き謝ろうと探すけれど、時すでに遅し。
フランダースの犬 500ラージピース天使の空 500-L126
大雪の夜、全てに絶望したネロは教会で、どうしても見たかったルーベンスの絵を奇跡的に見ることができたけれど(いつもは絵の鑑賞は有料、しかも高額でとてもネロには払えない金額)、寒さの中パトラッシュと共に絵の前で凍死。
迎えに来た天使と共に天国へと旅立ちエンド。
ネロが最後に見た絵
ネロがどうしても見てみたかったのが《キリスト昇架》と《キリスト降架》という絵です。
どちらもベルギーのアントウェルペンの聖母大聖堂にあります。
《キリスト昇架》
ピーテル・パウル・ルーベンス 三連祭壇画《キリスト昇架》1610~1611年
イエスが十字架にはりつけとなり、その十字架を立てるシーンです。
左側の絵は、イエスの処刑を嘆き悲しむ人々が描かれています。
右側の絵は、馬にまたがった司令官がイエスを処刑するように指示を出している場面です。
三連祭壇画なので閉じると、裏の絵が現れます。

左側の絵、サンタさんみたいな人は、ビール醸造、バーテンダーの守護聖人、聖アマンドです。
その隣にいる女性は、聖ワルプルガです。
右側の絵、美しい女性は聖カタリナです。
彼女は剣で首を斬られて死んだため、剣と、殉教の印、シュロの葉を持っています。
これは聖人の絵を描くときあるあるなのですが、どの聖人の絵なのか誰が見てもわかるように、
どんな殺され方(イエスが最後に処刑されるのと同じように、聖人たちも異端と見なされて殺される場合が多い)をしたのか、そのときに使われた拷問器具などが一緒に描かれることが多いです。
隣のおじさんは、金細工や鍛冶屋の守護聖人、聖エリギウスです。
《キリスト降架》
ピーテル・パウル・ルーベンス 三連祭壇画《キリスト降架》1611~1614年
はりつけで処刑されたイエスを十字架から降ろしているシーンです。
イエスのポーズは《ラオコーン像》から取っているそう。
「十字架後架」のシーンを描いた絵にはよくはしごが描かれます。
はしごには、イエスの遺体を降ろすためだけでなく、イエスの犠牲によって、人類は救われて、天に昇ることができるという意味もあります。
左側の絵は、イエスを身ごもっているマリアが、洗礼者ヨハネ(水で身体を清める儀式のプロ。後にイエスにもしてあげてる)を身ごもっているエリザベトを訪問している場面です。
右側の絵は、抱神者シメオン(神を抱っこしたすごい人)が、イエスを抱いている場面です。
こちらの絵の裏側にも…

左側の絵は、キリストを背負っている聖クリストフォロスです。
小さい男の子が「川渡りたい〜」ってお願いしてくるので、背負って渡ろうとしたら、子供とは思えないくらい重くて、神を運んでいたと気付く話です。(なにそれ)
左側の絵は、隠者です。
なんで急に隠者?って思うかもしれませんが、イエスが処刑されても、信仰する人の中には生き続ける的なものかな〜というのと、
この絵を見に来ていた人々と一番立場が近くて感情移入というか、自分を重ね合わせやすかったのかな、なんて思ったり。
祭壇画は、その土地にゆかりのある聖人が描かれやすかったりもします。
ネロがいつも眺めていた絵
世界名作劇場 フランダースの犬 1000ピース 憧れの絵 1000-342
《キリスト昇架》《キリスト降架》は見るのにお金が必要でしたが、マリア様の絵は自由に見ることができ、ネロは毎日のようにこの絵を見に来ていました。
ネロは、この絵の中の聖母マリアの顔と、幼い頃に亡くした母親の顔を重ね合わせて見ていました。
《聖母被昇天》も同じくベルギーのアントウェルペンの聖母大聖堂で見ることが出来ます。
《聖母被昇天》
ピーテル・パウル・ルーベンス《聖母被昇天》1625-1626年
亡くなった聖母マリアが、天国へ昇っていくシーンが描かれています。
みんなが下を向いているのは、「えぇ…どこいったの?」お墓の中にあるはずのマリアの死体がないからです。
マリアは肉体ごと天国へ昇っていったため、地上には何も残っていませんでした。
マリアは人間ですが、神イエスの母親なんで、そんな特別措置もあるんでしょうね。
まとめ
・ネロが見たかった絵はルーベンスの《キリスト昇架》《キリスト降架》 ・ネロが毎日見ていたのはルーベンスの《聖母被昇天》でマリアと母親を重ねていた