こんにちは!
今回は、ギリシャ神話に登場する炎と鍛冶の神ヘウルカヌスを解説します。
早速見ていきましょう!
ウルカヌス(ヘパイストス、ヴァルカン)
ピーテル・パウル・ルーベンス《ゼウスの雷光をつくるヘパイストス》1636-1638年
ギリシャ名:ヘパイストス、ローマ名:ウルカヌス、英語名:ヴァルカン
アトリビュート:金槌、炎、鍛冶場
炎、もの作り、鍛冶、職人、アーティストたちの神です。
とても醜く、とても人の良い神です。
気分が悪くなるほどの外見ゆえに苦労しますが、頭の回転が早く、器用でした。
醜いアヒルの子
ギュスターヴ=アドルフ・モッサ《ヴィーナスとヴァルカン》1904年
ウルカヌスの母ヘラは、不実な夫ゼウスに仕返しすべく、ゼウスがいなくても自分1人で身ごもれることを見せつけようと考えました。
しかし不幸にも、生まれてきた子供はあまりにも醜く、こんな赤子では仕返しどころか逆に恥をかいてしまうと思い、誰にも気づかれないよう、オリュンポスからこの子供を投げ捨てることを決意しました。
ただでさえ醜いウルカヌスは、1日かけて落ちたせいで、哀れにも体がゆがみ、足が不自由になってしまいました。
通常、ウルカヌスが絵画に描かれるときは、美男子として描かれないとしても、そこまで醜く描かれることもありません。
ですが、上のモッサの描くウルカヌスは容赦がない……。
復讐
ヤン・ブリューゲル(父)《火のアレゴリー:ヴァルカンの鍛冶場を訪れたヴィーナス》1611年
母親に投げ捨てられた赤子ウルカヌスは、優しいニンフたちの上に落ち、人知れず育てられました。
彼女たちから宝石の作り方を習い、才能を発揮しました。
ある日、母に手作りの金のスローン(王座)をプレゼントして復讐しようと思いつきました。
王座を贈られたヘラは、すぐに座りました。
すると、魔法の鎖で立ち上がることができなくなってしまいました。
ウルカヌスは、解放してほしいという母の訴えに耳を傾けず、ぶどう酒の神バッカスに酔わされ、ようやく譲歩しました。(ヴィーナスとの結婚を要求したとも)
痛い思いをしたヘラは、以降、自分の捨てたウルカヌスを少しは敬うようになりました。
妻はヴィーナス
フランソワ・ブーシェ《ヴィーナスとウルカヌス》1732年
神々一醜いウルカヌスからしたら、絶世の美女で、女神一の美貌の持ち主ヴィーナスはあまりにも高嶺の花でした。
魔法の帯で気を引いて結婚にこぎつけたものの、妻の浮気はとまりませんでした。
深く悩んだあげく、鍛冶場をエトナ火山の奥底に作り、引きこもってしまいました。
火山は英語で「ヴォルケーノ」、フランス語では「ヴォルカン」、ウルカヌスが語源です。
最強アイテムの作り手
ディエゴ・ベラスケス《ウルカヌスの鍛冶場》1630年
疲れを知らない職人ウルカヌスは、次から次へと素晴らしい品々を作り、オリュンポスに納めました。
エロスの矢もその1つで、作り手のウルカヌスが、愛に縁がなかったのが何とも皮肉…。
ウルカヌスは、母と妻のおかげで女性の恐ろしさを知っていたので、ゼウスから「人類最初の女性パンドラを作ってくれ」と頼まれたときも困りませんでした。
むしろうまく作りすぎてしまい(?)、パンドラは、人類にありとあらゆる災いをもたらしました。
ちなみに「ゼウスの雷」を作っているものウルカヌスです。
アキレウスの武具
ウルカヌスは、自分を拾って育ててくれた海のニンフ、テティスに頭があがりませんでした。
あるときテティスから、息子アキレウスがトロイア戦争で怪我をしないよう武具一式を作ってほしいと頼まれました。
張り切って作り上げた武具は、この世のものとは思えぬ素晴らしさで、特に盾は世界全体を完璧に表現していました。
斧とアテナ
アテナイには、ヘパイストス神殿と呼ばれる美しい神殿があり、ウルカヌス(ヘパイストス)とアテナが共有していました。
どうしてこの2人が?と思うかもしれませんが、アテナの出生にウルカヌスがひと役買っていたことからきています。
激しい頭痛に苦しむゼウスの頭部をウルカヌスが斧で2つに割ると、中から完全武装のアテナが出現し、ゼウスの頭痛も収まりました。
芸術作品でアテナの誕生にウルカヌスがよく登場するのも、そうした理由からです。