こんにちは!
今回は、ディルク・ファン・バビューレンの《取り持ち女》についてです。
早速見ていきましょう!
取り持ち女
ディルク・ファン・バビューレン《取り持ち女》1622年
ディルク・ファン・バビューレンは、オランダ黄金時代の画家です。
カラヴァッジョから強く影響を受け、本作もカラヴァッジョ風の作風で描かれています。
取り持ち女とは?
取り持ち女というのは、娼婦と客を仲介する人物(大抵元娼婦のお婆さん)のことです。
取り持ち女の手の仕草は、この娼婦の代金が高いことを意味しています。
リュートを弾く娼婦と、娼婦を買おうと硬貨を手に持っている客の男が描かれています。
リュートはその形から性的な意味合いを持つモチーフです。
3つある?
ディルク・ファン・バビューレン《取り持ち女》1623年以降
《取り持ち女》には、少なくとも3つのバージョンがあります。
2つはファン・バビューレン作、あるいは彼の工房作とされています。
メーヘレンの贋作
ハン・ファン・メーヘレン《取り持ち女》
こちらの《取り持ち女》は、20世紀の有名な贋作者メーヘレンが描いた贋作だと判明した作品です。
メーヘレンは、フェルメールがファン・バビューレンの《取り持ち女》を模写した作品、というていでこの贋作を制作したと考えられています。
そして皮肉なことに、ファン・バビューレンの工房の複製画よりも、このメーヘレンの贋作の方が金銭的価値が高くなってしまったそうで…。
メーヘレンについてはこちら↓
フェルメール家が所有していた?
ヨハネス・フェルメール《取り持ち女》1656年
フェルメールの義母マーリアが、《取り持ち女》の1枚を所有していました。
フェルメールの初期の作品である上の絵にも、影響を与えたと考えられています。
画中画として登場
また下の2つの作品の中に画中画として描かれています。
ヨハネス・フェルメール《合奏》1665年頃
《合奏》は、1990年に所蔵先のイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館から盗まれ、現在も行方不明のままです。
画中画として描かれた《取り持ち女》は、ファン・バビューレンが写実的にわかりやすく情欲を描いた《取り持ち女》とは違い、いかがわしい側面が拭い去られ、フェルメール独特の優雅で繊細で抑制された筆致で描かれています。
しかし、この絵を画中画に描くことで、フェルメールの作品に官能性をプラスする効果をもたらしています。
ヨハネス・フェルメール《ヴァージナルの前に座る女》1670-1672年頃
《ヴァージナルの前に座る女》は、一応フェルメールの真作ということになっていますが、絶頂期の作品に比べ、明らかに画力が落ちているため偽物の可能性もあるそうで…。
この絵を画中画として描くことで、音楽と性愛との関係性をより深めて暗示することにつながっています。