こんにちは!
今回は、レンブラントの《夜警》について解説します!
早速見ていきましょう!
夜警
レンブラント・ファン・レイン《夜警》1642年
縦3.63 × 横4.37メートルという超巨大な作品です。
夜の絵じゃない
《夜警》というは通称で、《フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長の市民隊》というのがタイトルです。
表面のニスが変色し、黒ずんでいたため、長い間、夜だと思われていました。
しかし20世紀に入り、2度の洗浄作業でニスが取り除かれた際、絵は明るみを取り戻し、昼を描いた絵だと判明します。
どんな絵?
火縄銃手組合による市民自警団が出動する瞬間を描いています。
登場人物
隊長と副隊長
左がフランス・バニング・コック隊長、
右がウィレム・ファン・ラウテンブルフ副隊長です。
隊長のバニング・コックはすごい人で、1650年にはアムステルダム市長にもなっています。
謎の少女
おじさんだらけの中に、場違いな感じで少女がいます。
しかもこの少女にスポットライトが当たっているのでやけに目立ちます。
彼女は、実在の人物ではなく、この市民隊の象徴、マスコット的な存在として一緒に描かれています。
帯にぶら下げた鶏の爪は、火縄銃手の象徴です。
さらに死んだ鶏は、撃ち倒された敵の象徴でもあり、同じくぶら下げている水牛の角と合わて「宴会」を象徴(鶏は食べ物、角は杯)しています。
当時の火縄銃手組合などの運営において、宴会は親睦を深め、団結力を強める重要なイベントでした。
この絵も、宴会を開く本部の大広間を飾るために発注したものでした。
ドレスの黄色も勝利を表す色です。
この頃亡くした妻サスキアがモデルでは?といわれています。
レンブラント・ライト
隊長・副隊長・謎の少女のみ、斜め45度から光が当てています。スポットライトです。
これによって、たくさんの人物が描かれていても、誰が主役なのかわかります。
人物写真のライティング技法のひとつ、やや背後の斜め上から光を当てる「レンブラント・ライティング」は、レンブラントの明暗法を写真撮影に応用したものです。
現在でも用いられている技法で、顔の立体感がうまく表現できるそう。
もう1人の少女
このことに気付いたとき、本当にびっくりしたのですが、なんと上の少女の後ろに、ブルーのドレスを着た少女がいるんです!
誰なのか、なんのために描いたのか、謎すぎて食い入る様に絵を見てしまいました。誰なの。
自画像
画面左、旗を上げている人の後ろに、ベレー帽を被った男が見えます。
みんなが武装している中、1人だけベレー帽なので、画家の自画像だと考えられています。
盾
絵の上部にある盾には、この絵に描かれている人物の名前が書かれています。
この存在によって、絵の中に描かれた人物を特定することができます。
ただ、X線や赤外線の調査によって、ニスを塗った後に盾が付け加えられていることが判明しているため、
レンブラントが描いた可能性は低く(ないわけではない)、弟子などの第3者が後ほど描いたのでは?と考えられています。
発注者にキレられる
市民隊の隊長バニング・コックと隊員17名の計18名から集団肖像画の制作を依頼されます。
ちなみに絵の中の人物を数えると18人以上います。(笑)
そもそも集団肖像画は、記念写真のように、みんなが同じ大きさで公平に描かれるのが常識、そして代金も割り勘で支払っていました。
なので完成したこの絵を見て、「自分の顔がしっかり描かれていない!」とキレられてしまいます。
隣の人の手で自分の顔が隠れてしまっているのに、割り勘で同じ金額を払うというのは納得いきませんよね。
レンブラント的には、ありきたりな集団肖像画ではなく、自警団が出動するときの動きや臨場感を描こうとしたようですが…。
結局代金は、目立つ人が多く支払うことで解決したそう。
ちなみに副隊長は、背が低いため、追加料金を払って背を高く描くよう依頼しますが、結局構図の都合でさらに低く描かれ、さらに顔も横顔で半分しか描かれていないため、不満だったそう。(笑)
上下左右切り取られている
ヘリット・ルンデンス レンブラントの《夜警》の模写 1712年
1715年、それまで飾られていた火縄手銃組合集会所のホールから、ダム広場のアムステルダム市役所に移された際に、そこの部屋のサイズに合わせて《夜景》の上下左右が切り取られてしまいます。
上の絵は、切り取られる前の絵を模写した作品です。
白い線の外側が切り取られてしまった部分です。
この絵から、元の状態を推測することができます。