こんにちは!
今回は、マグリットの「困難な航海」を解説します。
早速見ていきましょう!
困難な航海
ルネ・マグリット《困難な航海》1926年
ステージ風の段差や、立てかけられた長方形の穴が空いている板、天井近くから垂れ下がる布などのある舞台装置めいた室内空間が描かれています。
デ・キリコの絵に触発されて?
ジョルジョ・デ・キリコ《ビスケットのある形而上学的インテリア》1916年
この絵は、マグリットがシュルレアリスムの道へと進むきっかけとなった画家デ・キリコの上の絵(のシリーズ)に影響を受けて描いたともいわれています。
ビルボケ
部屋の中で立つビルボケ(けん玉)は青い眼を持ち、 窓外の風景とも画中画ともつかない嵐の光景を見つめているようです。
ルネ・マグリット《失われた騎手(迷える騎手)》1926年
ビルボケは、マグリット初のシュルレアリスム作品である上の絵に初めて登場しました。
ルネ・マグリット《秘密の遊戯者》1927年
この作品や、
ルネ・マグリット《会話の芸術》1961年
この作品では、ビルボケは木や植物に似た無生物として描かれています。
テーブル
テーブルの上には、断面が見える大きな石膏の手が、赤い鳥を握りしめているかのように置かれています。
テーブルの右前脚は人間の左脚の形をしています。
くすんだ桃色、白、灰色、茶褐色、濃青色という色彩の組み合わせが美しい。
窓なのか絵なのか
部屋の奥には大嵐の中の船が描かれています。
この海景は、フランスの百科事典の挿図をもとにしたものだそう。
ルネ・マグリット《人間の条件》1933年
しかし、鑑賞者はそれが絵画なのか窓の外の景色なのか判断することができません。
これはマグリットの別の作品↑でも登場するアイデアです。
似た絵
ルネ・マグリット《アイドルの誕生》1926年
マグリットは、《困難な航海》と同じ年に似たような絵を制作しています。
場面は外、荒れた海、ビルボケ、マネキンの腕(鳥をつかむ手に似ている)、長方形の穴の開いた板、段差などが描かれています。
他のバージョン
ルネ・マグリット《困難な航海Ⅱ》1946年
ルネ・マグリット《困難な航海》1957-1958年
ルネ・マグリット《困難な航海》1958年
ルネ・マグリット《困難な航海》1963年
ルネ・マグリット《困難な航海》1966年
ルネ・マグリット《困難な航海》1968年 リトグラフ