こんにちは!
ダヴィットが描いた有名なナポレオンの絵が、実は複数枚あるって知ってましたか?
早速見ていきましょう!
目次
ジャック=ルイ・ダヴィッド(1748-1825年)
ジャック=ルイ・ダヴィッド《自画像》1794年
ジャック=ルイ・ダヴィッドはフランスの画家です。
フランス革命期を生きた画家で、絵の腕は超一流ですが、人間としては結構過激でヤバめです。
絵が上手すぎていろんな議員や議長になったダヴィッドは、ロベスピエールという恐怖政治をしていた権力者ととても仲良しになります。
そして芸術界のロベスピエールとなったダヴィッドは、その権力で気に入らない芸術作品を破壊し始めます。暴君。
さらには、ロベスピエールと一緒になって無実の人に対しての投獄・殺戮にも加担。罪深い…
最終的にはロベスピエールは失脚し処刑されています。
それに伴いダヴィッドも投獄され、ギロチンまであと一歩手前…というところで元妻の助けにより、釈放されます。元妻さすがにすごすぎでは?
その後、ダヴィッドはナポレオンという英雄に熱中します。
ナポレオンの有名な絵が実は複数枚ある?
《ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト》この絵を見たことがある人は多いはず。
実は5つのバージョンがあるんです!どの絵も2メートル以上ある大作です!
絵ごとにマントの色や馬など微妙に違います。
どこが違うか探しながら見てみてください!
マルメゾン城
ジャック=ルイ・ダヴィッド《ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト》1801年
ナポレオンが馬にまたがった絵の中で、一番有名なのがこの絵です。
この絵、実はナポレオンが注文者ではないんです!
そもそもは、スペイン王カルロス4世が、同盟国として一緒に戦ってくれたことに対するお礼としてナポレオンにプレゼントした絵なんです!
なので依頼者はカルロス4世です。
この絵を見たナポレオンは非常にこの絵を気に入り、ダヴィッドに何枚も描かせることにしました。
シャルロッテンブルク宮殿蔵
ジャック=ルイ・ダヴィッド《ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト》1801年
ナポレオンは、絵のモデルになることが嫌で拒否。
「外見ではなく、この素晴らしい内面を描いてくれ」そう言われたダヴィッドは、ナポレオンの息子をモデルとし、ナポレオンからかろうじて借りることのできた衣装を元に絵を制作しています。
なので、これらの絵はナポレオンには全く似ておらず、かなり美化された絵ということになります。
さらに絵だと馬ですが、実際には山道に強いロバに乗ってアルプスを越えました。(笑)
ヴェルサイユ宮殿蔵1枚目
ジャック=ルイ・ダヴィッド《ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト》1802年
この絵は当初、フランス国民の目に触れるようにアンヴァリッドにありました。
手前の岩に文字があることに気がつきましたか?
どの絵にも「BONAPARTE(ナポレオン)」「HANNIBAL(ハンニバル)」「KAROLVS MAGNVS IMP(カール大帝)」の文字が岩に刻まれています。
これは、ナポレオンが、偉大な将軍ハンニバルとカール大帝と肩を並べるくらいすごいんだぞ!アピールです。
ベルヴェデーレ宮殿蔵
ジャック=ルイ・ダヴィッド《ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト》1802-1803年
当初ミラノにあったこの絵は、ミラノ制圧の記念として飾っていました。
ナポレオンがこの絵を複数枚描かせたのは、英雄ナポレオンというプロパガンダのためです。
ヴェルサイユ宮殿所蔵2枚目
ジャック=ルイ・ダヴィッド《ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト》1804年頃
ナポレオンからの注文は2〜4枚目の絵です。
この絵はダヴィッドが自分用に描いたものです。ナポレオン大好きすぎでは。
マントの色の意味
1枚目は黄色(オレンジっぽいけど)、2枚目以降赤色で描かれいてることに気がつきましたか?
黄色は将軍の色、赤は王の色です。色によってその人の階級がわかります。
この絵が描かれた当時、ナポレオンは将軍だったので、
絶対に自分は王になる!!!という決意表明というか、もうわたしは王です!!!というアピールです。強い。
番外編 ナポレオンの絵が日本にもある?
ジャック=ルイ・ダヴィッドの工房《サン=ベルナール峠を越えるボナパルト》1805年
この絵は、東京の東京富士美術館所蔵作品です。
なんと日本で見れちゃいます!!
この流れで見ると、え、同じじゃん??ってなりますが、
誰がみてもわかる違いは、サイズです。
上の5枚は2メートル以上ありますが、この絵は縦73cmくらいしかありません。半分以下のサイズです。
そしてこの作品は、ダヴィッドではなく、ダヴィッドの工房が作った作品です。
工房作というのは、ダヴィッドの弟子が作ったレプリカということです。
ダヴィッドは巨大な工房を持っており、何百人という弟子がいました。
その中にはグロやアングルなどがいます。
まとめ
ダヴィッドはスネ夫的なずる賢さがある画家だからこそ、権力者の懐に入り込むのが上手かったんだろうな、なんて思ったり。
ナポレオン自体は見た目があまりイケてない方の部類だったようで、そのナポレオンを最大限に美化して偉大な英雄として描いているその技力すごい。
・ダヴィッドは《アルプスを越えるナポレオン》の絵を5枚描いている ・ナポレオンの絵なのに、実際のナポレオンとは別人の絵