2度盗まれたフェルメールの「手紙を書く婦人と召使」盗難事件を超解説!

こんにちは!

今回は、《手紙を書く婦人と召使》の盗難事件についてです。

早速見ていきましょう!

2回盗まれた「手紙を書く婦人と召使」

ヨハネス・フェルメール《手紙を書く婦人と召使》1670年頃

盗難の多いフェルメールの作品ですが、上の絵は2回も盗まれています。

5回も盗まれたフェルメール作品!どうして狙われるの?

2022.04.06

狙われた個人邸宅

現在はアイルランド・ナショナル・ギャラリーが所蔵していますが、以前はダブリン郊外のラスボロー・ハウスという個人邸宅に飾られていました。

一番近い町の中心まで車で10分はかかるという辺鄙な立地のため、盗難グループの格好の的になってしまったのです。

テロ組織

ヨハネス・フェルメール《ギターを弾く女》1672年

1974年2月、ロンドン北部のケンウッド・ハウスからフェルメールの《ギターを弾く女》が盗まれます。

IRAと呼ばれるアイルランドの地下組織の犯行で、この作品と引き換えに、ロンドン市内の爆破テロで逮捕されていた仲間を故国に移送するよう要求しました。

これにイギリス政府がまったく応じなかったため、追って4月に《手紙を書く婦人と召使い》が盗まれました。

手口

ラスボロー・ハウスは、事件当時は私邸でした。

ヨーロッパ有数の絵画コレクター、アルフレッド・バイト卿夫妻が住んでいました。

「車が故障したから助けてほしい」という女性のために使用人が通用口を開けると、銃を手にした男3人が侵入し、バイト夫妻と使用人を縄で拘束しました。

犯人は、本作を含む19点の絵画を車で持ち去っていきました。

事件の1週間後、犯行グループ(IRAの活動家)から脅迫状が届きました。

犯人たちの要求は、《ギターを弾く女》と同じくロンドン近郊の刑務所に服役中の政治犯の北アイルランドの刑務所への移送と、現金50万ポンドの要求でしたが、イギリス政府はいずれの要求にも屈しませんでした。

その翌日、主犯格の女が逮捕され、盗まれた絵画すべてが無事に発見されました。

邸宅を美術館に

1週間後、IRAの活動家が別件で逮捕されたことにより《手紙を書く婦人と召使い》が発見され、ケンウッド・ハウスから盗まれた作品ものちに無事保護されました。

この盗難事件を受けて、ラスボロー・ハウスは屋敷の中央棟を美術館として一般公開、警備も充実させました。

2度目の盗難事件

対策をしたにもかかわらず12年後の1986年、2度目の盗難事件が発生しました。

犯人は、いったん警報装置の誤作動を装い、駆けつけた警官がその場を去った後、警報装置のスイッチを切って再度侵入し、《手紙を書く婦人と召使い》を含む11点を盗み出しました。

事件の主導者は、アイルランドの窃盗犯マーティン・カーヒルだということはすぐに判明しましたが、なかなか事件は解決しませんでした。

彼は作品を闇マーケットで売りさばこうとしましたが、高騰し続けるフェルメール作品の買い手を探すのは至難の技…。

ことごとく失敗に終わり、1993年8月、密売のためベルギーのアントワープに運び込まれたところを、警察のおとり捜査の網に引っ掛かって逮捕され、絵は無事に取り戻されました。

あまりにも危険だということで、ついに作品は国立の美術館に寄付されました。

もしここに飾られたままだったら…

2001年、ラスボロー・ハウスで再び絵画強奪事件が発生しました。

もし、『手紙を書く婦人と召使い』がまだ邸宅に残っていたら、3度目の盗難にあっていたかもしれません。