こんにちは!
今回は、ヘラクレスの12の功業を解説します。
早速見ていきましょう!
目次
十二の試練
神々の王ゼウスと人間の女の間に生まれたヘラクレスは、ゼウスの正妻である女神ヘラに命を狙われ続けていました。
ヘラの企みにより、ヘラクレスは狂気に陥り、妻子を殺してしまいます。
彼は王に会いに行き、罪を清めてもらおうと考えました。
ところが、ヘラクレスを恨む王は、10の不可能な試練を与え、「完璧に遂行せよ」と命じました。
この試練が、いつのまにか数が増えて12の試練に…。
1:ネメアのライオン
ピーテル・パウル・ルーベンス《メネアのライオンと戦うヘラクレス》1615年頃
王エウリュステウスは、まず、ネメアの町のライオン退治を命じました。
ライオンの皮は攻撃を受けてもびくともせず、どんな武器も炎も通じませんでした。
そこでヘラクレスは、何と素手でライオンを窒息させると、唯一皮を引き裂くことができるこのライオンのかぎ爪を使って胸当てを作り、その頭を兜にしました。
エウリュステウスは、武装したヘラクレスを見てすっかり怯え、壺に逃げこみ、「今後の試練は使者を立てて伝える」と言い渡しました。
2:レルネのヒュドラ退治
アントニオ・デル・ポッライオーロ《ヘラクレスとヒュドラ》1475年頃
ヒュドラは9つの頭を持ち、切られても次々と新しい頭が生えてくる水蛇で、底なし沼に住み、その毒を含んだ息を吸ったものは絶命するといわれていました。
ヘラクレスは、アテナの助けを借り、剣を灼熱の火で熱して、ヒュドラの頭が生えてこないよう切り口を焼灼しようと考えました。
一方、ヘラは、戦いの最中にカニにヘラクレスを噛ませようとしますが、逆にカニがヘラクレスのかかとで潰されてしまいました。
そして、とうとうヒュドラの不死の頭を断ち切ると、巨岩の下に埋め(それでも息をしていたとか)、毒血に矢を浸し、そのあとの戦いに備えました。
3:ケリュネイアの魔の鹿の捕獲
ルーカス・クラーナハの工房《ヘラクレスとケリュネイアの鹿》1537年以降
卑怯なエウリュステウスは、アテナに助けてもらったのではヒュドラ退治は完了したことにならないと言い張り、代わりにケリュネイアの鹿を捕まえるように言い渡しました。
青銅のひづめと金の角を持つ鹿は、矢よりも速く俊足な上、ディアナに守られているので、命を奪うことは厳禁でした。
ヘラクレスは、1年かけて追いまわし、疲れさせてから捕まえました。
ディアナには、「鹿はあとから解放する」と約束しますが、エウリュステウスのもとへ連れて行くと、エウリュステウスは自分のものにすることを宣言しました。
知恵者のヘラクレスは、エウリュステウスに渡す瞬間に、何食わぬ顔をして手綱を放しました。
4:エリュマントス山のイノシシの捕獲
ルーカス・クラーナハの工房《ヘラクレスとエリュマントスの猪》1537年以降
第4の試練では、運悪くケイロンを殺めてしまいます。
ケイロンは、ケンタウロス族の賢人で、かつてヘラクレスの教師でした。
ヘラクレスは、あやまってヒュドラの毒のついた矢で彼の膝を射てしまいました…。
ケイロンは、あまりの痛みに、「こんなに苦しむくらいなら」と永遠の命を捨てました。
ヘラクレスは、悲しみに暮れながらも、試練を果たしにエリュマントス山へ向かい、凶暴なイノシシの跡を見つけると、穴を掘り、雪をかぶせて罠をしかけ、生け捕りにして持ち帰ります、
王エウリュステウスは、いつものごとく腰抜けで、あたふたと青銅の壺に身を隠しました。
5:アウゲイアスの家畜小屋掃除
フランシスコ・デ・スルバラン《アルペイオス川の流れを変えるヘラクレス》1634年
家畜小屋と言ってもただの小屋ではなく、その悪臭はペロポネソス中に蔓延していました。
これをたった1日できれいにしなければなりませんでした。
3000頭の牛が飼われている小屋は、30年もの間、1度として掃除されたことがなく、その堆肥は谷中を覆い、作物の栽培を妨げていたほどでした。
機転の利くヘラクレスが、2つの川の流れを変えると、水の流れはたまった汚れを洗い落とし、遠くへと運び去りました。
ヘラクレスは、アウゲイアスから成功報酬として牛の1割をもらい受けることになっていましたが、エウリュステウスは、「報酬をもらうのは違反で、試練は果たされなかった」と告げ、アウゲイアスも「小屋をきれいにしたのは、ヘラクレスではなく川だ」と主張し、報酬を支払いませんでした。
その後何年か経ち、ヘラクレスはアウゲイアスに仕返しし、報酬を手に入れました。
6:ステュムパリデス沼地の怪鳥の退治
アルブレヒト・デューラー《ヘラクレスとステュムパリデスの鳥》1500年
この試練では、人食い鳥を退治しなければなりませんでした。
青銅のくちばしと足と翼を持ち、羽は矢のように鋭く、その数はあまりにも多く、飛び立つと空が覆いつくされるほどでした。
ヘラクレスは、剣と盾で大きな音を立て、驚いた鳥たちがあちこちに飛び立ったところに矢を放ちました。
鳥たちは上空で、鋭い羽で殺しあって全滅しました。
7:クレタ島の牡牛の捕獲
マルコ・マルケッティ《クレタ島の牡牛を殺すヘラクレス》1556-1557年
ポセイドンは、クレタ島ミノスに白い牡牛を贈りました。
ミノスは、この牡牛をのちに生贄にするはずでしたが、あまりの立派さに自分のものにしてしまいました。
すると、ポセイドンは話が違うと怒り、ミノスの妻パシパエに牡牛への恋心を植えつけ、復讐します。
何とパシパエは、牡牛の子ミノタウロスを身ごもり、牡牛は鼻から炎を吹き、ひづめで大地を荒らし、クレタ島を大混乱におちいらせました。
ヘラクレスは、この牡牛の捕獲を命じられました。
捕獲後、首根っこを捕まえてまたがり、海を渡って王エウリュステウスの宮殿へと戻り、またもやエウリュステウスは身を隠しました。
8:ディオメデスの人食い馬の退治
ギュスターヴ・モロー《自らの馬に喰い殺されるディオメデス》1865年
エウリュステウスは、トラキア王ディオメデスの馬を捕まえてくるようにと命じました。
ディオメデスは、冷酷な人物で、訪問客を人食い馬の餌にしていました。
ヘラクレスは、ディオメデスを人食い馬に食わせて犠牲者の仇を取り、馬たちをオリュンポスへと連れて行きました。
アレクサンドロス大王の名馬ブケパロスは、この人食い馬の末裔だといわれています。
9:ヒッポリュテの帯の入手
ニコラウス・クニュプファー《ヒッポリュテの腰帯を取ろうとするヘラクレス》17世紀前半
エウリュステウスのませた娘たっての要望で、アマゾネス族の女王ヒッポリュテの帯を取ってこなければなりませんでした。
これは、ヒッポリュテが父である軍神マルスから贈られた帯でした。
幸運なことに、ヒッポリュテはヘラクレスに恋をし、自分を愛してくれるならと、帯を譲ってくれました。
けれども、執念深いヘラがアマゾネス族に変装し、ヘラクレスはヒッポリュテの暗殺を計画していると噂を流しました。
アマゾネス族対ヘラクレスの戦いが勃発し、ヒッポリュテは戦死しました。
ヘラクレスは帯を持って逃げ、無駄な流血と共に幕引きとなりました。
10:ゲリュオンとの戦い
ルーカス・クラーナハの工房《ヘラクレスとゲリュオンの牛》1537年以降
地上最強のゲリュオンの牛を盗むという、危険極まりない試練です。
ゲリュオンは、3つの頭と3つの体と6つの手を持つ怪物で、ジブラルタル海峡沿岸に住んでいました。
ヘラクレスは、まず牛の番犬と牛飼いの頭を割り、次にゲリュオンの3つの体に矢が一気に刺さるように横から放ちました。
そうして牛を連れて帰ることに成功しますが、途中、牛を狙う様々な敵に襲われることに…。
11:黄金のリンゴの入手
エドワード・バーン=ジョーンズ《ヘスペリデスの庭》1869-1873年
巨人アトラスの娘の園、ヘスペリデスに黄金のリンゴを取りに行くよう命がくだりました。
アトラスは、たどり着いたヘラクレスに、自分の背負っている天空を持っていてくれたらリンゴを取ってきてやろうと言いました。
基本的に人のいいヘラクレスが代わってあげた途端、アトラスは「もう天空を支えるのはごめんだ、一生持っていろ」と言い捨てながら、わざと黄金のリンゴを目の前でもいでみせました。
ヘラクレスは、あきらめたふりをして、「持ち方が悪いので持ち直すから手を貸してくれ」とアトラスに頼みました。
アトラスが手を貸した瞬間、ヘラクレスはその肩に天空を返しました。
12:番犬ケルベロスの捕獲
フランシスコ・デ・スルバラン《ヘラクレスとケルベロス》1634年
エウリュステウスは、ヘラクレスが着々と課題をこなしているのを見て怒り出し、何とかして達成させまいと策を練りました。
そこで出した最後の課題が、冥界の番犬ケルベロスの捕獲でした。
しかし、ヘラクレスからすれば、こんな怪物はお手のものでした。
こん棒で殴りつけたところ、ケルベロスはあまりの強烈さに、ポケットに入るほどの小さな子犬になりました。
ヘラクレスは悠々と、いつものごとく怯えるエウリュステウスのもとへ犬たちを連れて帰り、さすがのエウリュステウスも降参しました。