こんにちは!
今回は、ウォーターハウスの《ヒュラスとニンフたち》についてです。
早速見ていきましょう!
ヒュラスとニンフたち
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《ヒュラスとニンフたち》1896年
ギリシャ神話に登場する美少年ヒュラスの物語です。
ヘラクレスが愛した美少年
ヒュラスは、非道な王テイオダマースの息子でした。
ヘラクレスがヒュラスの父親を殺した後、ヒュラスはヘラクレスに育てられ、仲間となりました。
彼らはイアソンを伴って、アルゴ船で金羊毛を探す冒険に出ました。
忽然と消えたヒュラス
旅の途中、アルゴ船は新鮮できれいな水を求めて島に上陸しました。
ヒュラスも水差しを持って森へ入って行きました。
まもなく仲間の1人がヒュラスの叫び声を聞き、ヘラクレスに伝えました。
すぐさまへラクレスはあたり一帯を探し回り、何度もヒュラスの名を呼んだが返事はありませんでした。
船の出帆が近づいていましたが、諦めきれない彼はさらに森の奥へ奥へと入り、探せる場所は全て探しましたが、ついにヒュラスを見つけることはできませんでした。
船もとうに彼らを置いて去っていたので、結果的にヘラクレスは遠征隊から外れることになりました。
ではヒュラスには何があったのでしょうか?
ヒュラス
スリムな身体つきのヒュラスは、うつむいて影になっているため顔立ちははっきりしません。
睡蓮の葉と花に包まれた泉のそばに腰を下ろし、左手に水差しを持ち、水を汲もうとしていました。
美しいニンフたち
そこへ7人の美しいニンフたちが現れました。
ニンフの語源は「花嫁」「人形」です。
彼女たちは永遠に年をとらず、若く美しい娘の姿をしていました。
森、野山、洞窟、海、湖沼、雲、川など、豊穣な自然に宿る精霊で、自然の与える大らかな喜びの擬人化ともいえます。
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《「ヒュラスとニンフたち」の2人のニンフの研究》1895-1896年
彼女たちはその属性によってそれぞれ名前があり、この絵に登場しているのは真水のニンフ、ナイアス(ナイアデス)です。
ナイアスたちは普段めったに人間の前に姿を見せません。
しかし、この時ばかりは違いました。
ヒュラスがあまりに美しいので、つい魅入られて水上へ昇ってきました。
彼が欲しい、水底へ連れてゆきたい、と…。
ヒュラスと見つめ合う1人は、すでに両手で彼の手首と肘をしっかり掴んでいます。
後ろ向きの1人は彼の青い着衣の裾を引っ張り、水中に引き込もうとしています。
ヒュラスの隣のニンフは手のひらの真珠を見せ、もう1人は髪の毛をかき上げて誘惑しています。
こうしてヒュラスは水差しをもったまま、頭から池に落ち、その時、思わず悲鳴をあげたのでしょう。
しかしヘラクレスが駆けつけた時、もはや水面には小波ひとつ立ってはおらず、ヒュラスは永遠に彼の前から姿を消してしまいました。
撤去騒動
2018年1月、マンチェスター市立美術館がソニア・ボイスの作品プロジェクトの一環として、「芸術作品の展示方法と解釈方法についての会話を促すため」にこの作品をギャラリーから撤去しました。
それはこの作品が、古めかしいヴィクトリア朝時代の女性観で描かれた絵だ、という理由からでした。
ギャラリーの来場者は、壁に残った空きスペースに、用意されたポストイットに記入して貼るように勧められていました。
しかし思いの外、批判を受け、作品は1週間後には再び同じ場所に展示されました。
その他のヒュラスとニンフたち
ウィリアム・エッティ《水のニンフたちと若いヒュラス》1833年
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《ニンフとヒュラス》1893年
ヘンリエッタ・レイ《ヒュラスとニンフたち》1909年頃