こんにちは!
今回は、ギリシャ神話に登場する聖火と家庭の女神ヘスティアを解説します。
早速見ていきましょう!
ヘスティア(ウェスタ、ヴェスタ)
パドヴァニーノ《ヘスティア、ヒュメナイオス、エロス、アフロディテを描いた結婚生活のアレゴリー》1630年
ギリシャ名:ヘスティア、ローマ名:ウェスタ、英語名:ヴェスタ
アトリビュート:ベール
聖火と家庭の女神です。
優しく貞節で、家の建築技術を発明したと言われています。
優しいお姉ちゃん
神々の長女ヘスティアは、兄弟と同じく父クロノスに飲み込まれましたが、ゼウスに吐剤を飲まされたクロノスが吐いたときに最初に出てきました。
つまり、彼女は二重の意味で長女でした。
長女らしく優等生的存在で、常にオリュンポスにいて、神々や人間たちの戦いに加わることはありませんでした。
ゼウスは、オリュンポスの平和を守る姉への感謝を込めて、捧げものがあるたびに最初に供物を譲りました。
ロバ
ある日、男性の生殖力を司るプリアポスは、寝ているヘスティアを襲おうとしました。
しかし、プリアポスのロバが鳴いて起こしてくれたおかげで、間一髪逃れることができました。
以来、ヘスティアのシンボルはロバになりました。
オリンピックの聖火
ギリシャの各都市には、行政の長の建物「プリュタネイオン(現代の市庁舎のような場所)」があり、聖火が灯っていました。
ヘスティアの祭壇で燃える炎は、都市の魂とも言うべき存在で、非常に重要視され、決して絶やしてはならず、別の土地に植民するときには火分けされるものでした。
デルポイは世界の中心であり、デルポイの炎はギリシャ全体の炎だと考えられていたので、聖火を司るヘスティアは、とりわけデルポイで特別視されていました。
オリンピックの火も、もとは「ヘスティアの火」に由来します。
オリュンポス12神イチ目立たない神
セバスティアーノ・リッチ《ウェスタへの生贄》1722-1723年
ヘスティアは、オリュンポスにこもってほとんど姿を見せることがなかったので、神話や芸術作品にはほとんど登場しません。
それはヘスティアが本来、炉を守る神で、常に炉から離れなかったからです。
数少ない作品でもベールをかぶった姿で描かれることが多く、家庭に特化した女神であることがよくわかります。
詩人オウィディウスは、あまりのヘスティアのイメージの少なさに驚きつつも、実は各都市の炎が彼女の象徴だとしています。
ウェスタの巫女
フランシスコ・デ・ゴヤ《ウェスタへの犠牲》1771年
ギリシャ芸術にはあまり登場しないヘスティアですが、ローマ時代はウェスタと呼ばれ、知名度も高まり、その巫女たちはローマで最も重要な女性たちとされていました。
彼女たちは神職に就いてから30年間は処女を守らねばならず、このしきたりを破ると生き埋めの刑に処せられました。
その代わり、ローマにおけるあらゆる権利を与えられていました。
玄関の語源
フランス語では玄関を「ヴェスティビュル」と呼び、その語源はヘスティアのローマ名ウェスタにあると考えられています。
ローマ時代の「ヴェルティビュル」は暖炉のある部屋を指し、決して絶やしてはならない炎の燃える、捧げものに不可欠な空間でした。