こんにちは!
今回は、『鳥獣戯画』の甲巻を解説します。
早速見ていきましょう!
鳥獣戯画 甲巻
水遊び
岩の上から、うさぎが鼻をつまんで飛び込んでいます。
後ろでひっくり返っているのはこのダイブしたうさぎです。
絵巻物では、続きのシーンを近くに描くことによって、ストーリーがわかるようにしています。
鹿に乗るうさぎに、さるが水をかけています。
弓の対決
平安時代、宮中では「賭弓(のりゆみ)」という年中行事が行われていました。
これは、宮中で警備をしていた人たち(近衛、兵衛)が、お正月の18日に、弓の対決を行い、天皇が試合を観戦していました。
うさぎとかえるは、そのマネをしていると考えられています。
うさぎとかえるのサイズ感からいって、的がかなり遠くにあるように見えます。達人かな?
的は、はすの葉でできています。
弓と矢は、竹(笹)からできています。
そして的の近くにいるこのきつね…
なんとしっぽが燃えています…!
弓の対決では、的に弓が当たったことを知らせる「的申し」という役目の人がいたため、このきつねは、自分のしっぽを燃やして、明るくして的が見えるようにしているのでは?といわれています。
このきつねはしっぽの感覚が死んでいるのでしょうか?謎です…。
控えの選手たちは、応援したり、弓や矢の点検をしています。
その後ろで、うさぎが扇子で手招きしています。
誰を呼んでいるのかというと…
宴会
「賭弓」では、弓の対決の後、盛大な宴会が開かれました。
扇子を持ったうさぎが手招きしていたのは、ごちそうを運ぶうさぎとかえるたちです。
遅刻
うさぎの選手が遅刻して、弓をかついで試合会場まで急いでぴょんぴょん跳んでいます。
さるのお坊さんへのプレゼント
当時、お坊さんに馬の引出物を渡すことはよくあることでした。
ここでは、さるのお坊さんに、馬の代わりに鹿とイノシシをプレゼントしています。
石投げ合戦?
一目散に逃げるさるを、うさぎとかえるが追いかけています。
何をしているのかは諸説ありますが、一説では、当時の遊びのひとつ「印地打ち(いんじうち)」という石を投げ合う石投げ合戦のマネでは?といわれています。
かえるが倒れています。
さるが逃げた理由は、このことかもしれません。
祭り
かえるたちの「田楽」(疫病の退散、豊年満作を祈る舞)で大盛り上がり。
さきほどのかえるの事件に、見物客が後ろを振り返っています。
相撲
「鳥獣戯画」で一番有名なシーンですね。
相撲をしているうさぎとかえるが描かれています。
相撲も宮中の行事として、毎年7月に力士を呼んで、試合が行われていました。
かえるがうさぎの耳をかんでいます。
その後、うさぎを投げ飛ばしています。
ゲームの準備
当時流行していた盤双六(ばんすごろく)というゲームをしようと、さるたちがどこかへ運んでいます。
盤双六というのは、バックギャモンというゲームとルールが似ているボードゲームです。
かえるの供養
前の場面でさるがゲームを運んでいたかと思うと、突然、さるのお坊さんが、かえるを供養する場面になります。
このことから、この二つの場面の間には、元々絵があり、何らかの理由で無くなってしまったと考えられています。
左にふくろうがいたり、前のシーンできつねがしっぽに火をともして的を照らしていたことから、この絵巻物に描かれているシーンは夜の場面だと考えることができます。
かえるのためにお経をあげたさるのお坊さんに、お礼の品が続々と届いています。
目の前に積み上げられたお礼の品に、さるのお坊さんは、欲深そうな笑みを浮かべています。
正しい順番がわからない?
甲巻は、23枚の絵がつなぎ合わされています。
なぜバラバラにしたのかというと、絵巻物だと、好きな場面を見たいと思った時に、パッと見ることができなかったため、場面ごとに切り取って、本のようにしていたからです。
問題は、バラバラにしたことで、順番がわからなくなってしまったことです。
鳥獣戯画断簡(MIHO MUSEUM本) 平安時代・12世紀
そこで、使われている紙や墨の違いや、紙に残ったはけのあとを細かく観察したり、元々の『鳥獣戯画』を描き写した「模本」と比べたり、バラバラにしたときに抜けてしまった絵(断簡)が残っているため、それをどこに入れるのかを考えることで、ある程度はわかってきてはいます。
はんこの意味
絵巻物を見ていくと、途中途中この赤い判子が押してあります。
これは、絵巻物をバラバラにすることによって、順番がわからなくなってしまったり、盗まれてしまうのを防ぐために、紙と紙のつなぎ目に「維ぎ目印」という判子を押しています。
絵巻物の修理の時も、一旦バラバラにして、元の順番に戻す時にもこれがあると便利でした。